◆900馬力以上! モンスター級EV
◆ロータス初のSUV「エレトレ」
9月1日、ロータスの初のSUV、そして初のEVとなる「エレトレ(ELETRE)」が、日本で正式発売となりました。販売されるのは2グレードで、2332万円の「エレトレS」と、2585万円の「エレトレR」。日本仕様の納車は2024年1月ごろからスタートとのアナウンスもありました。
ロータス「エレトレ(ELETRE)」

この「エレトレ」は、ロータスが現在進行する「ビジョン80(VISION 80)」計画の重要なキーとなるモデルです。「ビジョン80」は、ロータスがブランド創業80年目となる2028年に向けての計画で、英国の小さなブランドから、世界的な知名度を誇るブランドへの成長が狙いとなります。そして、その実現のために、販売するモデルをすべて電気自動車に置き換えると宣言しました。
2021年に発表されたスーパースポーツ「エミーラ(EMIRA)」がロータス最後のエンジン車であり、そして新しい「エレトレ」が最初の電気自動車となります。ちなみに、「エレトレ」はブランド初のEVというだけでなく、ブランド初の4WD車、そしてブランド初のSUVにもなります。この後、ロータスは電気自動車のセダン、ミドルサイズのSUV、そしてスポーツカーをリリースすることを予告しています。


そんなロータスのEVの第1弾となる「エレトレ」の内容は、驚くほど先進性に満ち溢れていたのです。
まず、クルマの土台となるプラットフォームは、「EPA(エレクトリック・プレミアム・アーキテクチャー)」と呼ばれるもの。ロータスが独自開発したもので、今後登場する新しいロータスEVにも使われることが予定されています。車軸の間の床下にバッテリーを並べ、軽量化と高剛性を実現します。搭載するリチウムイオンバッテリーの容量は112kWh。モーターは、前後の車軸それぞれに搭載する2モーター方式です。
また、「エレトレ」のパフォーマンスも驚くべきもの。ベーシックな「エレトレ」とミドルの「エレトレS」の最高出力は450kW(603馬力)で最大トルクは710Nm。上位の「エレトレR」では最高出力675kW(905馬力)に最大トルク985Nmものスペックを誇ります。0-100km/h加速は、「エレトレ」と「エレトレS」で4.5秒、「エレトレR」では2.95秒を記録。SUVとしては破格のパフォーマンスを備えています。


一充電当たりの航続距離は「エレトレ」と「エレトレS」で600km(WLTPモード)、「エレトレR」で490km(WLTPモード)。また、充電では急速充電に最大350kW、普通充電に最大22kWもの高出力に対応。日本国内に普及するチャデモ急速充電器は50kWが主流です。「エレトレ」は、その7倍もの出力での急速充電ができるというのです。ですから、112kWhもの大きなバッテリーを積んでいても、強力な充電器さえあれば急速充電なら20分で80%の充電を、普通充電では6時間のフル充電を可能とします。
EVという部分だけでも、「エレトレ」は、非常に先進的な内容なのです。
◆尖ったデザインに多数のセンサーやカメラ
◆インテリアは環境に配慮した部材を使用
また、ロータスのブランドのコアとなる価値は「For The Driver(ドライバーのためのクルマ)」というもの。「ハンドリング・バイ・ロータス」という文言が有名なように、優れたハンドリングと走りの楽しさがロータスの魅力です。それを実現するシャシー関連も「エレトレ」は、非常に凝った内容となっていました。



前後のサスペンションにはデュアルチャンバー式エアスプリングと電子制御ダンピングシステム(CDC)、それにアクティブ・リア・ホイール・ステアリング・システム、ブレーキ式のトルクベクタリング、インテリジェント・アクティブ・ロール・コントロール(IARC)が組み合わされており、それを6D統合シャシー制御(ICC)が、アクティブ・エアロダイナミクスと合わせて統合制御します。
つまり、バネと車高、ダンパー、スタビライザー、トルクベクタリング、後輪操舵、可変エアロが一括で制御されているのです。また、統合制御を活用し、航続距離優先からスポーツ走行、オフロード走行、サーキット走行などの、状況にあわせたドライブモードも用意されています。



エクステリア・デザインにも走りを重視するロータスらしさを見ることができます。全体的なフォルムは、ノーズの短いキャビンフォワードのSUVクーペといったもの。ポイントは、非常に優れた空力性能を備えていることにあります。直近のほかのロータス車と同様に「空気によって創られた」を謳う理念から開発されています。ドラッグ係数(空気抵抗)はわずか0.26Cd(最大値は1.0)。フロントのグリルは、三角形の弁を備えた開口部があり、冷却と空力のバランスを調整します。
「エレトレ」の外観で目を引くのが、ルーフの最前部にある楕円のスリットです。ここには、ポップアップ式のLIDARセンサーが収納されています。同様に左右のホイールアーチの上など、なんと4個の展開式LIDARセンサーを備えているのです。ほかにも6個のレーダー、7個のHDカメラ、12個の超音波センサーなど、合計34ものセンサーを装備。これら充実のセンサーと、2個のNVIDIA Orin-Xチップ(1秒間に500兆回の演算が可能)、無線通信アップデート機能を使い、最新の運転支援機能を実現します。

市場の規制が許せば、いわゆる自動運転と呼ばれる「レベル4」の自律走行も可能とするというから、驚くほかありません。
室内を覗けば、洗練された無駄のないデザインから「エレトレ」の先進性を感じることができるでしょう。ドライバーの前のメーター部は、左右に細長いスタイリッシュなデザインが採用されています。フロントウインドウに情報を表示するヘッドアップ・ディスプレイには、前方の景色にグラフィックを重ねあわせる半拡張現実(セミAR)機能が備えられています。
室内レイアウトは5人乗車を標準としますが、オプションで4人乗車を選ぶことも可能です。また、2種類のプレミアムオーディオや、10段階に透過する光の量を調整できるパノラミックガラスルーフも用意されています。
インテリアの内装材として採用された「リ・ファイバー(Re-Fiber)」もトピックのひとつ。ファッション業界の廃棄物から作られたテキスタイルで、コットンの柔らかさ、シルクの光沢、ヘンプの滑らかさ、優れた通気性など、持続可能性なラグジュアリーという価値観を提案するものです。



◆これまでのロータスとは異なった価値観と顧客層のSUV
EVとしての性能だけでなく、優れた運動性能、最新の運転支援システム、洗練されたインテリアなど、細部をチェックするほどに「エレトレ」の魅力が見えてきました。ただし、「エレトレ」はこれまでロータス車とは異なる、ワンランク上の価格帯のモデルです。

クルマの内容も、これまでの「サーキットに特化したスポーツカー」というロータスの個性とは、異なるものとなっています。当然、顧客層も、これまでとは違ったものになります。
新しい製品を武器に、新たな市場に挑戦するロータスに注目しましょう。
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