ポルシェ/718 ボクスター スタイルエディション(991万円~)

 憧れていたという純白のポルシェ「911 カレラ カブリオレ」を試乗したモデル兼タレントの新 唯(あらた・ゆい)さん。では、ほかのポルシェはいかがでしょう? ということで、今回はポルシェのもう1台のオープンカー「718 ボクスター」をチェックしてみましょう。


 982型718 ボクスターが登場したのは2015年12月のこと。クローズドボディである718 ケイマンの上位機種という位置づけになります。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
ポルシェ/718 ボクスター スタイルエディション

718 ボクスターの特別仕様がスタイルエディション

 今回お借りしたのは2022年11月から受注を開始した718 ボクスター スタイルエディションという特別仕様車。往年の964型「911 カレラRS」に採用されていたカラー「ルビーストーンレッド」を現代的に解釈したという「ルビースターネオ」が目にも鮮やかな1台です。


 エクステリアはさらに、ポルシェカラークレストをあしらった20インチの718 スパイダーホイールや、ブラックのスポーツテールパイプ、ハイグロスシルバーの「PORSCHE」ロゴ(リア)などでドレスアップ。


 これを街で走らせると視線をビンビン感じ、「伝説のルビーストーンレッドのクルマに俺は乗っている」と、自分のクルマでもないのに悦に浸った同行スタッフ。唯さんは白いクルマがお好きで、このド派手な色を拒絶されるかと思いきや「いい色だと思います」ということで、まずは一安心。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
全幅1801×全高1281mm
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
全幅1801×全長4379×全高1281mm(ルーフを閉じた状態)
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
ルーフを開けた状態
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
センターマフラーのリア

 まずはエクステリアから。「911より少し小さいように見えます」と唯さんが語るように、ボディーサイズは全幅1801×全長4379×全高1281mmと、911と比べて全幅で約50mm、全長にいたっては200mm以上コンパクト。200mm短縮された分、後席はなく2人乗りのクルマになります。もっとも、911とて後席に座るのは結構大変ですが……。車体重量は1400kg台で、こちらは約175kg軽量です。ちなみに唯さんが所有されているND型ロードスターは、718 ボクスターより一回りコンパクトで、かつ車体重量も1000kgソコソコといったところ。

ライトウェイトスポーツ好きの唯さん的に引っかかるかは気になるところ。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
今回お借りした車両はPDK(オートマ)仕様

 911同様、エンジンのご尊顔を拝することはできないのですが、パワートレインは最高出力300PSの1988㏄水平対向4気筒ターボエンジンに、6速MTまたはPDKの組合せ。今回はPDKモデルをご用意しました。「MT設定があるのはイイですね。今の911もMT設定は少ないんですよね」。ちなみに現行の992型911でMT設定があるのは「911 カレラ GTSクーペ」だけのようです(GT3などのスペシャリティーは除く)。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
ラゲッジスペースをチェックする唯さん
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
フロントのラゲッジスペースはかなり高さがある
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
ラゲッジスペースの様子

 エクステリアついでに実用面をチェックしてみましょう。リアにエンジンを搭載するので、フロントを見てみましょう。「ボストンバッグ2つくらいは入りそうですね」というように、ボストンバッグを2個積むことができそうな容量があります。


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リアのラゲッジドアを開けた様子
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
リアのラゲッジは意外と広い

 911同様にリアにエンジンを搭載する都合、リアのラゲッジスペースはないのかなと思いきや、これがあるから驚き! しかも意外と荷物は入るようで「前後を合わせたらNDロードスターより荷物が載りそう」と、しげしげと観察されていました。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
ラゲッジスペースの開閉ボタン

 ラゲッジスペースの開閉ですが、運転席の下にあるボタンで行ないます。正しくは「行ないました」。

というのも、ボディー側のどこを触ったら開くのかわからずでして……。それはオーナーにならないと教えてくれないのかもしれませんね。その点では実にセキュアなクルマです。


質実剛健感のあるインテリア

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ドライバーズシートに着座した唯さん
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718 ボクスターの運転席
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ドライバーズシートの様子
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!

 インテリアは911よりもコクピット感を強めたもの。「全然違うんですね」と仰るように、ラグジーさよりも質実剛健といった雰囲気が漂います。唯さんは白いレザーシートに憧れがあるそうで「このシート、とてもイイですね」とニッコリ。それでは細部から見ていきましょう。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
ステアリングホイール
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右手親指側にあるモードセレクター
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
変更するとメーター内に表示される
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スクランブルブースト状態

 まずはハンドル周りから見ていきましょう。ステアリングはSUVなどに慣れている方からすると小径で、操作するとクイックな印象を受けます。ポルシェらしく右手親指にはモードセレクターのスイッチが用意され、インディビジュアル、ノーマル、スポーツ、スポーツプラスの4段階にセット可能。メーターパネル右側にカタカナで表示されます。中央のボタンはスポーツレスポンスボタンで、最大20秒間フルパワーになります。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
メーターパネル表示
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
ナビも表示する

 メーターパネルは911が5連であるのに対して3連。

速度計と回転計は指針式で、右側がインフォメーション。ナビも表示できるのですが、位置的にちょっと見づらいかなというのは911も同様です。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
クルーズコントロールレバー

 クルーズコントロールはフォルクスワーゲングループらしく左手レバー式。日本車に慣れた身からすると、最初は動かし方すらよくわからなかったりします。前走車の速度を検知するアダプティブタイプなのですが、車線監視機能はないようです。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
アクセルペダルまわり
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車両の始動スイッチとライト切替スイッチ
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
パーキングブレーキは一見わかりづらい場所にある

 ポルシェらしくアクセルペダルはオルガン式。ですがアルミペダルではないようです。フットレストの幅は狭くて、足の大きな人だと半分程度しか置けないかも。始動スイッチとヘッドライトのモード切替は運転席右手側。始動スイッチを右に置くのは、ポルシェとHondaくらいでしょうか。今は左側が主流のように思います。


パーキングブレーキは自動で作動し、自動で解除される

 驚いたのは電磁式パーキングブレーキのスイッチで、なんと右太もも近くに配置! このクルマはPに入れれば自動的にパーキングブレーキがかかり、Dモードでアクセルを踏めば自動解除されるので、滅多に使うことはないかもしれませんが、それでもこの位置は……。MT設定も電磁パーキングブレーキらしいので、坂道発進はどうするんだろう? とドキドキしてしまいました。

ちなみに、オートブレーキホールド機能を使うと坂道発進もラクラクです!


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
シフトレバー周り
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
灰皿!
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
アームレストを開けた様子
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
USBはType-A

 センターコンソールまわりを見ると、大型のPDKレバーが目をひきます。911をはじめ、ほかのポルシェは小型化されているので、逆に新鮮です。ルーフ開閉のスイッチはかなり大きく、その下にあるフタをあけると、なんと灰皿が出てきたではありませんか! シガーライターもあるというオマケ付き。アームレストはかなり底が浅く、スマホを入れるのがせいぜいといったところ。USBはType-Aです。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
高級車の証といえるダッシュボードの時計
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
エアコンの操作まわり
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
メディアスロット
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
助手席の足元に小さな小物入れがある

 エアコンの操作系ですが、PDKレバーがPポジションにあるとかなり使いづらいですね。その上にはマルチメディア系のボタンが用意されていますが、近年ここまで小さいボタンも珍しいなとも。フタがあったので開けてみるとSDカードスロットとSIMカードスロットが。CDのスロットもあり、なつかしさを覚えました。助手席にはネットタイプの小物入れがありました。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
インフォテインメント画面
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
メニュー画面
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ナビ画面
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
バックモニター画面

 インフォテインメントのディスプレイはエアコンダクトの下にあるためか、かなり位置は低い印象で、画面の小ささも併せて平成初期のナビを思い出してしまいました。バックモニターはキチンと用意されているので、車庫入れはラクラク。

さらに障害物があれば、ソナー音とともに画面に場所を教えてくれます。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
ウインドディフレクター
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
ウインドディフレクターは取り外し可能
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
シート裏には何もない

 オープンカーゆえ、ヘッドレストの後ろにはウインドディフレクターが用意されています。こちらは取り外し可能で、ルーフを閉じた際、または後方視界が見えづらいという時には取り外すと良いでしょう、と言いたいのですが、ルーフを閉じた状態で室内で取り外すのは結構困難だったりします。シートの裏はスグにエンジンとの隔壁があり、荷室スペースはありません。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
ルーフを開閉している様子
718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!
よく見るとBoxstarのエンボス加工がなされている

 オープンカーですので、ルーフの開閉をチェックしましょう。開閉スピードはわずか10秒で、 しかも前モデルにあった手動のロック機構も電動化されていました。ということで、走り出しましょう!


意外とスパルタンな走りのボクスター

718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!

 911 カレラ カブリオレはイマドキ珍しい硬派な1台で、運転中はともかく助手席に座ると路面状況によっては言葉を失ったものです。718 ボクスターは兄貴に負けず劣らず、いや、さらに上を行く硬派ぶり。「スタイル・エディション」というナンパな名に騙されてはいけません。911をプリミティブというなら、718 ボクスターはスパルタン。「ヤンチャな弟」という言葉すら生易しい、手に負えないほどの悪ガキなのです。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!

 夜の首都高やワインディング、そして峠道では話が一変。ヤンチャな弟は水を得た魚のごとく、ドライバーに最高の歓びを与えてくれます。

正直申し上げて、911より楽しいのです! それは全長が200mm短いことによる取り回しのよさや、ミッドシップゆえの高い旋回性が寄与しているのかもしれませんが、端的に言えばゴーカートフィールな楽しさです。さらに唯さんが「これは間違いなくポルシェですね」と仰るように、剛体でありながら精密さを感じさせるフィール。動き始めれば「俺、ポルシェに乗っているんだ」という気持ちにさせてくれるのです。


 718 ボクスターは、虚飾を配し走りを追求していったという点において、911を上回る魅力があるクルマ。硬い足も、やかましいエンジン音も、ワインディングや首都高でスポーティーな走りを始めた途端、最高の味付けとなり、刺激的で至福のひと時が味わえるのです。過去、色々なクルマで首都高を周回しましたが、718 ボクスターほどエキサイティングな気持ちになったクルマはない、と断言させていただきます。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!

 スパルタンでストイックがゆえ、ドライバーの操作ミスに対して、クルマはあまりリカバリーしてこないのも事実。その点においては911の方が寛容ともいえそう。逆にいえば「正しい操作をドライバーに教えてくれる先生」で、911に夢見る人は、まず718に触れ、慣れるというのがいいのかも。なるほど、ポルシェはそういうすみ分けをされているのかと。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!

 憧れということもあり、ポルシェを買うなら911一択だと仰いながらも「ポルシェであることに変わりはないのですけれど、911とは違う魅力のあるクルマだと感じました」という唯さん。「ホントに楽しいクルマでした。ポルシェって楽しいですね」と、サラリとおそろしい事をおっしゃいます。そして「これで1000万円と言われちゃうと、頑張って911という気になっちゃいますね」と、金銭感覚が崩壊しつつあるようなことも。


 ちなみに、911 カレラ カブリオレとの車両価格の差は500万円以上で、さらにオプションやら何やらをつけるとその差は広がっていきます。


 最後に。718系のことを「プアマンズ・ポルシェ」とか「911の入門機」と言う方がいますが、とんでもない! プアマンズといいながらも1000万円をはるかに超える(オプションを入れたら1500万は軽く超える)高額なクルマですし、何より911を上回る操る楽しさに溢れた魅力機であることを再度お伝えします。


 試乗前と試乗後で大きく718のイメージが変わりました。「この人、ホントにクルマで走るのが好きなんだな」という目で、オーナーとクルマを見るようになったことを告白します。


718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!

■関連サイト


モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

718 ボクスターは、最も走りにストイックなポルシェだった!

 10月5日栃木県生まれ。ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技を勉強中。また2022年はSUPER GTに参戦するModulo NAKAJIMA RACINGのレースクイーン「2022 Moduloスマイル」として、グリッドに華を添えた。


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