みなさん、こんにちは! 昨年ラリージャパン参戦のために5連休を勝ち取った、会社員兼週末レースクイーンの赤城ありさです!


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スーパー耐久やFORMULA DRIFTJAPANでレースクイーンをやりつつ、ラリードライバーデビューも果たした赤城ありさです

 ラリージャパンのあと、ラリチャレ(TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジ)や、レースクイーン大賞、東京オートサロンなどでなかなか原稿に着手できず、遅くなってしまってすいません! ということで、ラリージャパンをメカニック視点で振り返りたいと思います。ちょっと長くなってしまいましたが、最後までお付き合いいただけますと幸いです。


世界選手権の舞台で新米女子メカニックが奮戦

 FIA世界ラリー選手権(WRC)の日本ラウンドである第13戦「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」が、昨年に引き続き愛知県・岐阜県を舞台に開催されました。「公道最速」のキャッチコピーに胸を躍らせ、世界中から集まった来場者の数はなんと53万人超えとのこと!


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赤城ありさ
公道最速を求め、世界中から集まった観客に見守られ走るGRヤリス

 今回、私が所属しているWellpine Motorsport(ウェルパインモータースポーツ)からは、2台がラリージャパンに出場しました。参戦マシンのトヨタ・GRヤリスはWRC仕様に進化しましたが、ドライバー村田康介選手、コ・ドライバー梅本まどか選手のクルーに変更はありません。


 さらに今回はカスタマーサービスとして、入江慧士選手/蔭山恵選手組のトヨタ・ヴィッツも参加しますので、ウェルパインモータースポーツは2台体制なのです。


 そして私の役割は……GRヤリスのメカニックになりました!


 ラリードライバーを目指すうえで、すべてのポジションの経験は必要……ということで、精一杯がんばりました!


 ラリージャパンに帯同が決まってからというもの、長野在住の和田チーフメカニックの元へコツコツ通い、使用ツールの名前や使用方法、タイヤ着脱などの基本技術を学んできました。その練習の成果を果たして発揮できるのでしょうか?


 時系列であの熱いラリーウィークを振り返っていきます!


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赤城ありさ
今回のチームメンバーとマシン

最長で1週間以上にもなるラリーウィーク

 現場入りが一番早いチームスタッフは11月11日(土)入りですが、私は11月15日(水)の公式車検日に豊田スタジアム入りです。ラリージャパンの会期が11月16~19日ですので、準備の長さがわかります。


 サービスパーク到着するやいなや、GRヤリスの車検に同行します。車両のことはお力になれないため、ドライバーとコ・ドライバーの装備品確認を担当しました。


 ポケモンみたいに「いけ! 赤城!」と言われ、両手いっぱいに装備品を抱えて検査場に向かいます。検査場では、身につける装備品のすべてをFIAの競技規則に合致しているかチェックされます。インナーウェアの枚数やラベルなど細部まで、車検委員の方々が時間をかけて丁寧に検査していきます。


 私が以前出場した「TGRラリーチャレンジ」の装備品チェックは、最低限必要の装備が揃っているか確認することが目的だったため、そのギャップに驚きました。緊張しながら「何事もなく終わってくれ……」という祈りも虚しく、アクシデントが起こりました。


 村田選手/梅本選手組は無事合格をいただいたのですが、入江選手のレーシングスーツのプリントが規定に合致しているという証明書が見当たらず、提示ができなかったのです! そんな検査項目があるとは……さすがは世界戦です。感心している間もなく、赤城は猛ダッシュで別の車検項目を担当しているメカさんに助けを求めました。


 結局すぐには用意することができず、その日は引き上げることに。明日の再車検時までに用意できなければアウトなのだとか。入江選手によると、離れた駐車場の車両内に証明書を置き忘れてきてしまったとのこと。


 ちなみにこのミスはほかのチームでも結構あったらしく、「各種規則書をしっかり読んで! 紙に出力もしてね!」と、辞書みたいに分厚い規則書を何冊もドサッと置く松井監督の言葉を思い出すのでした。


 松井監督、よく言ってましたよネ。大事なコトは誰も教えてくれない──。自分でわかっていかなきゃならない──て。


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大切なことは自分でわかっていくしかない──。車検場は写真撮影NGでしたので、いつぞやの我らがチーム監督をご覧ください

 車両の検査項目については、比較的円滑に進みました。最初に車検をしたGRヤリスはなんと車検落ちしてしまったのですが、軽微な不備の指摘で済んだため、ヴィッツが車検入りする前にその情報共有を行ない、ヴィッツは指摘箇所ゼロで済みました。

臨機応変な対応力、チームの皆さまに脱帽です!


 そして私たちの2台の車検にかかった時間は5時間オーバー。車検はトヨタスタジアムの地下駐車場で行なわれたのですが、地上に出てくる頃にはすっかり日が暮れていました。一日中こちらで業務をする車検員さんのことを思うと、本当に頭が下がります。


 その後、GRヤリスの再車検の準備と入江選手の証明書を駐車場まで取りに行って、今日の作業は終了です。お疲れ様でした。


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メカニックミーティングの様子

11月16日はシェイクダウンからのラリースタート!

 11月16日(木)はシェイクダウンからのいよいよラリーDAY1スタートとなります。朝6時にはトヨタスタジアムのサービスパークに到着です。8~11時の間に再車検をパスしなければならないため、ミスは許されません。昨日の車検をパスできなかったGRヤリスを和田チーフメカが入念にチェックし、再車検会場に持っていきます。レーシングスーツの証明書も一緒に!


 車両が戻ってきてから、車検委員さんが「OK」のシールをロールケージに貼りつけにきてくれました。これで、車検クリアです!!私は喜びのあまり小躍りしながら「OKシール」をスマホで連写します! メカさんたちもみんな集まってきて、「やったー!」「終わったなー!」「飲みに行こう!」と喜びを分かち合いました。色々ことがあったけど、本当に、無事に終わって良かったです。


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車検員さんが貼ってくれたOKシール

 ではまた来年。

俺たちのラリージャパン2023【END】


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赤城ありさ
メカニックの皆さんと。来年も頑張ります!

 そんな感動の最中、「まだ始まってもねーから!」と松井監督からツッコミが入ります。そうです、俺たちのラリージャパンは、まだまだ始まったばかり。しかしながら、メカニックにとってラリージャパン一番の鬼門は「車検」なのです。車検をパスしなければ、競技に出場することすらかなわないのです。


 至極当然ですが、「走れることは当たり前ではない」ことを学びました。


 これまでCJRT(クスコジュニアラリーチーム)で高崎くす子ちゃん号を散々乗り回してきましたが、それは当たり前のことではなくて、たくさんの人の労力が伴ってできていたことなのだと改めて気付かされました。競技車両を安全かつ、車検に合格できるまでに仕上げてくださったチームの皆さま、スポンサーの皆さまには感謝の念に堪えません。本当にありがとうございます。


車検もクリアし、無事に競技に参加できた

 その後、GRヤリスはシェイクダウンを走り、豊田スタジアム内のSS1を終えて、無事にオーバーナイトパルクフェルメ(夜間に競技車両を保管する場所)に入りました。結構な見所だったと思うのですが、車検が終わった安心感から、現場2日目にしてドッと疲労感に襲われて、あまり覚えてません……。


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トヨタスタジアムでのSS1の様子

11月17日は体調不良で朝のサービスはお休みに

 結局、車検が終わった後の疲労感は体調不良レベルまで進行してしまったため、11月17日(金)DAY2朝のサービスはお休みさせていただきました。体調管理も仕事のうちです。猛省し、悔しい気持ちをバネにしてその後のサービスに取り組みました。


 今回のラリージャパンのサービスタイム(クルマを整備できる時間)はA~Fまであります。つまるところ、サービスパークでのメカニックのお仕事はラリーウィーク中6回あります。また、朝のサービスは15分、昼のサービスは40分、夜のサービスは45分と作業時間が決まっています。


 私は朝のサービスA(15分)は不在だったため、昼のサービスB(40分)から参加しました。ブレーキジャダー(ブレーキを踏むと振動が起こる現象)が起こったため、ブレーキチェックをして、車高も変更。天気が悪かったので、タイヤはハードからウェットに交換しました。


 このとき私にできることはなかったので、ほかのメカさんの邪魔にならないよう、車体清掃や窓拭きに注力しました。雑巾と紙ウエスを駆使して、ピカピカになるまで拭きあげます。特にスポンサーロゴ周辺やウィンドウ類は心を込めて磨きあげました(ASCII.jpのロゴも!)。


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サービスBの様子

 クルーの皆さんを見送り、昼のサービスと夜のサービスの間はサービステント内を掃除したり、チームの皆さんの昼食の買い出しに出かけたりしました。買い出し担当の特権は、好きな昼食を買えることです。


 大貧民の赤城は、普段あまり手が出せない明治「R-1」(ちょっとお高めの乳酸菌飲料)や栄養ドリンク、カップ麺を、松井監督の顔色を窺いながらカゴにそっと入れていきます。

もちろんみんなの分も入れましたよ!


 そしてサービステント内には立ち寄ってくださるスポンサーさまや関係者の皆さまのために、お茶やお菓子、軽食を常にストックしているため、そちらの補充も欠かせません。そのため、1日1回の買い出しがかなりの量になるので、3人がかりで手分けして運びます。これが結構な重労働でした。


 買ってきたものは、お店の陳列棚と見間違うくらいにサービスパークのホスピタリティテントに丁寧に陳列していきます。ラベルは正面! 種類ごとに分けて美しく並べるのです。ほかの現場(レースなど)ではここまで用意されているのを見たことがないので、長期戦となるラリー特有の文化なのでしょうか? ホスピタリティ精神に溢れているなと思いました。


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一仕事終えて、楽しいランチタイム! ASCII.jpのスピーディー末岡さんと

エア抜き工具をエアゲージと間違う痛恨のミス!

 サービスCではブレーキエア抜きをしました。ここで赤城、とんでもない勘違いをしてしまします。和田チーフメカから「エア抜きするけど使う工具わかる?」と抜き打ちテストが入ります。「エア抜きですね! 任せてください!」と、私は工具箱からエアゲージを取り出してドヤ顔。キマッた!と思ったのですが、これがメカさんたちにめちゃくちゃ笑われてしまいました……。


 エア抜きとは、ブレーキ配管の気泡を除去して、ブレーキのタッチや効きを改善させる作業です。エアゲージはタイヤの空気圧を調整するもので、まったくの別物でした。

さらにブレーキのエア抜きには、ブレーキフルードブリーダータンクを使用します。また1つ賢くなりました(涙)。


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落ち込んでいる暇はない。ブレーキフルードブリーダーをスマホで調べる赤城

泥の塊を落とすのもコツがいる

 競技は悪天候によりSS4がキャンセルになり、車両の到着も渋滞によりかなり遅れました。帰ってきた車両は泥まみれ。雑巾で懸命にボディーを拭きますが、幾度となく泥を被ったせいか、泥がぼこぼこの塊になっていて全然取れません。


 するとひょこひょこ松井監督がやってきて、「そんなふうに擦ったら傷が付いちゃうでしょー!」と雑巾をバケツを奪われました。右手に雑巾、左手にバケツを持って、雑巾をじゃぶじゃぶ水に浸します。


 「こーやって雑巾を絞らずに拭くんだよ」と監督自らボディーを拭き始めました。なるほど、泥が水に溶けてどんどん落ちていきます。泥を落としたあとは、グランドシート(メカニックテントの下に敷いているシート)にたっぷり滴り落ちた泥水を拭き取ります。メカさんが車両の下に潜り込んで作業をするときに、泥水があってはならないという気遣いです。監督への尊敬度が、爆上がりしました。


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泥まみれの車両を拭くと新品の雑巾も一瞬で真っ黒に

短いサービスでもやることが多い

 サービスCは作業量が多かったです。エンジンオイル、リアデフオイル、トランスファーオイル、ミッションオイルをすべて交換。ドライバーの村田選手からの要望があり、残り15分でフロントブレーキパッドをさらに効きの強いものに交換もしました。タイヤは監督が新たに用意したドライのソフトタイヤに交換しました。


 私は今回も左側を担当し、ウマ(Rigid Rack。一時的に車両を上げておくツール)を入れたり、ハブガタを見てタイヤの前後を外しました。ちょっとずつ周りも見れるようになってきて、作業も楽しくなってきました。


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ハブガタの確認の様子

 そんなサービス後の豊田スタジアムのSSでは、ソフトタイヤがバッチリ合って、好タイム。とても良い気分でDAY2を終えました。


11月18日はギャラリーも多くて緊張度合いMAX

 11月18日(土)DAY3は朝4時30分にホテルロビー集合でサービスパークに向かいます。


朝イチのサービスDは15分。深夜に降雨があったため、タイトな時間の中、車高やアライメントを変更しました。さらにタイヤを前後ウェットに交換、スペアにドライ用ハードタイヤを2本積み込んで、との指示が。


 ついに私の出番がやってきました。タイヤ交換の左側を任され、電動インパクトレンチでタイヤを外す作業に入ります。赤城メカ、満を持して挑みます!


 しかし、初手でインパクトが空転し、ホイールナットがうまく緩められません。練習した時よりもガチガチに固い! たくさんのギャラリーが見ている中で、頭が真っ白になります。「大丈夫! 落ち着いて!」と、メカさんに声をかけられ、はっとします。


 電動インパクトレンチをがっちりと握り直し、再度トライして何とかすべてを外し終えました。ウェットタイヤを交換し取り付け、トルクレンチで増し締めして、作業終了です。悔しさと恥ずかしさで、胸がいっぱいになりました。


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タイヤ交換に苦戦する赤城

 後日、このことを和田チーフメカに話すと、ホイールナットの固さは練習の時と変わらないと言うから驚きました。


 「あの場の空気に飲まれて、力を発揮できなかっただけだよ。ギャラリーも見てる、時間の制約もある。ラリーメカを初めてやるってのは、そういうものだから」


 腑に落ちるとともに、次は絶対うまくやりたい! という気持ちになりました。


サービスパーク以外で整備をすることもある

 ラリーサービスは、サービスパーク以外でも車両の整備をすることがあります。代表的な例としてリモートサービス(移動区間にある簡単な整備エリア)などが挙げられますが、今回ラリージャパンでは初めて「タイヤフィッティングゾーン」というエリアが導入されました。


 リモートサービスとは異なり、使用できる工具がウマとジャッキ、ラリーに車載された工具のみと制限されています。さらに、整備が許される時間は15分のみ。また、タイヤフィッティングゾーン内で作業ができるのも、クルー自身2名とメカニックの2名に絞られます。


 この日のタイヤフィッティングゾーンは岡崎総合公園のリグループ後に設けられました。ちなみ村田選手/梅本選手と同じクラスで、DAY2にトップを走っていた勝田範彦選手は前日DAY2夜のスーパーSSでリタイヤ。次にクラス首位となった新井敏弘選手もデイリタイアとなり、なんと着実に走り続けた村田選手/梅本選手はSS10終了の時点でクラス首位に浮上しました。


 タイヤフィッティングゾーン前のリグループエリアに入ってきたGRヤリスにむけて、「おめでとう!」「いや、まだ早いぞ!」という会話が飛び交います。そんな和気あいあいとした雰囲気の中、クルーはチームが用意した食事をとります。


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ランチを梅本まどか選手に届け、ひと時の談笑を楽しむ

 気がつけばもうリグループアウト→タイヤフィッティングゾーンです。慣れない多くの国内チームは、勝手が分からずてんてこまい。駐車場を柵で囲ったスペースがタイヤフィッティングゾーンとなったのですが、車両を停める場所があらかじめ定められておらず、来場者順で慌ただしく整備が始まります。


 持ち込める工具も限られているため、私たちのGRヤリスはフロントタイヤの交換だけして、さくっと作業は終了しました。私は柵の外から見守るだけでしたが、車両に損傷も見当たらず一安心しました。


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車両整備を終え、問題なしと安堵する

 ちなみにワークス勢は15分のタイヤフィッティングゾーンで、タイヤ交換だけでなくオイル交換、さらに足周りのセッティング変更などもしていました。ワークスドライバーたちも自らテキパキ作業。ワークスドライバーはメカとしても優秀なのです。ワークスマシンは車載工具やスペアパーツも厳選されているんだなぁと感心しました。


 午後のループは特にトラブルもなくDAY3が終了しました。ただ、DAY1にデイリタイアしたTOYOTA GAZOO Racingの眞貝選手がすごいタイムで追い上げてきているので、ちょっと心配です。


11月19日、ついに最終日! 覚えたすべてをぶつける!

そして、ついに最終日の11月19日(日)、DAY4がスタートしました。朝イチはサービスパークで行なう、このラリー最後のサービスです。昨晩遅くに雨が降ったということで、タイヤをウェットに交換し、空気圧の調整をしました。


 今度こそエアゲージの出番です。目盛りがピッタリ合うまで空気圧を微調整します。空気を足したり引いたり、ピッタリ合わせるのは簡単なようで意外に難しかったです。その後は15分の時間を目一杯使って車両清掃をしました。


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連日の作業と寒さで手が痺れてきて、繊細な微調整が難しい

 最後のサービスだと思うと、込み上げてくるものがありました。無事帰ってこられるよう祈りを込めて、ボディー・窓・ホイール、すべてを丁寧に磨き上げます。行ってらっしゃい!


フロントのエアロがなくなってしまった!

 朝のサービスを終えると、岐阜県の中津川公園のタイヤフィッティングゾーンの準備です。会場の中津川公園は、トヨタスタジアムのサービスパークから移動に1時間以上もかかるため、急いで準備して出発しました。


 今回のタイヤフィッティングゾーンでは、事前に車両の作業場所を知ることができていたので、かなりスムーズに進みました。作業内容はタイヤの摩耗具合の確認のみです。作業自体は問題なく終わったのですが、改めてGRヤリスのフロントを見ると、何だかすっきりしたような……。


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タイヤフィッティングゾーンでの作業は2回目、円滑に行なわれた

 何ということでしょう! リップスポイラーがまるまるなくなっていました! 俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。村田選手が「落っことしてきちゃいました……」と苦笑いしていました。


 そしてこの時、SS19で眞貝選手に逆転され、クラス2位となったことを知りました。悔しい……。松井監督を見ると「そんなの昨日のタイム差見てりゃ、こーなることは当然分かってただろ! それより自社パーツのフロントリップが……」と泣いてました。え、そこ!?


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タイヤフィッテングゾーンにインする。よく見るとリップスポイラーがない

世界の舞台で表彰台に上がれるという幸せ

 トヨタスタジアムに戻ると、すでにサービス機材の片付け作業が始まっていました。工具や使用機材を綺麗に整理して、サービストラックに積み込むことも、メカニックの仕事です。撤収作業はチームを応援してくれているファンの皆さんも手伝ってくださり、ファンの方に愛されているチームだなと実感しました。


 作業をしながら、車両の帰りを今か今かと待ちます。そして、GRヤリスはクラス2位で帰ってきてくれました! すごい! 完走という目標をはるかに上回る素晴らしい結果に、チーム全体が沸きました。村田選手、梅本選手、お疲れ様です! 無事に帰ってきてくれて、本当にありがとうございました。


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無事完走し、トヨタスタジアムのポディウムに向かうGRヤリス

 表彰式があるということで、ここで初めてチームの皆さんとトヨタスタジアムに足を踏み入れました。ポディウムがすごく大きくて、車3台が同時に登れるようになっており驚きました。トヨタワークスが表彰台独占という結果で、その演出のために打ち上げられた金の紙吹雪できらきらと輝いています。


 上を見上げると、暗い夜空に金が散りばめられていて、星が降ってくるようでした。この景色はこの先ずっと忘れることはないと思います。


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金の紙吹雪

 そして、司会のピエール北川さんのご配慮により、私たち国内車両クラスも表彰台の上でチーム全員揃って写真撮影をすることができました(本来ならそんな予定はなかったようです)。


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チームのみんなでポディウムに登壇。恥ずかしくて後ろに隠れてしまった

 レースクイーンでもドライバーでもない、メカニック半人前の私が登っていいんでしょうかと思いつつ、僭越ながらチームの皆さんと一緒に登壇させていただきました。ここにこれたのは、監督、クルー、メカニック、スタッフ、スポンサーの皆様が力を合わせた結果です。


今年も何足もワラジを履いて挑戦します!

 ラリーは1人ではできません。今回はメカニックというポジションでラリーに参戦させていただきましたが、ドライバーの時とは違った視点で競技を見ることができたし、新しい発見もたくさんありました。


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ラリーはチームスポーツ。1人では何もできないことを実感した

 正直やる前は、WRCのメカニックだなんて、素人の私がいても迷惑になるだけだからやりくないなと尻込みしていました。でも実際にやってみて、マシンを整備することだけがメカニックの仕事ではないとわかりました。


 知識に乏しい私にもできる作業があったり、タンクの水を汲む、サービスエリア内の清掃、ごみ収集、使用工具の配置などなど……細かい仕事がたくさんありました。知識の有無に関わらず、自身ができることを模索して実行するのは、会社員の下積み時代に通ずるものがあるなと思いました。


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20リットルタンクを3個運ぶ。地味だが何往復もすると結構きつい

 とはいえ、私1人では何もできなかったため、ご指導くださったメカニックの皆さん、監督には感謝の気持ちでいっぱいです。


 これを読んでくださってる皆さんに、モータースポーツ、そしてラリーに少しでも興味を持っていただけたらうれしいです。観戦するもよし! 参加するもよし! 人、マシン、天候……、複合的要因が勝負を左右する、誰も予想できない展開に、引き込まれること間違いなしです。


 以上でラリージャパンのレポートは終了ですが、2024年も会社員兼レースクイーン兼ドライバー兼コドライバー兼メカニックと、いろいろチャレンジしていきますので、私・赤城ありさをよろしくお願いいたします!


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今回うまくできなかった点を反省し、リベンジを誓う

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