発売1ヵ月で約1万3000台と、月販売台数の4倍以上のペースで売れまくっているHondaのコンパクトSUV「WR-V」。
コンパクトとはいえサイズはVEZELとほぼ同じ
Honda SUV三兄弟の末弟であるWR-V。末っ子といっても、ボディーサイズは全長4325×全幅1790×全高1650mm、ホイールベース2650mmと、次男のVEZELとあまり変わらなかったりします。
VEZELとの違いは駆動系と装備面。WR-Vがガソリンエンジン&FFのみであるのに対し、VEZELはe:HEV(ハイブリッド)と4WDを用意しています。また装備面でもVEZELの方が豪華。ここで差別化を与えるというわけです。
さて、VEZELのライバルになりそうなのがトヨタ「ヤリスクロス」のガソリンモデル。価格は190万7000円~278万2000円と、ほぼ同じです。ですが寸法は、全長4185×全幅1765×全高1590mm、ホイールベース2560㎜と、WR-Vより1回り小さい印象。さらに言えば、WR-Vのボディーサイズは約100万円高い日産「キックスe-POWER」(全長4290×全幅1760×全高1605mm、ホイールベース2620mm)よりも大きかったりします。
スタイリングはクロカン風で、スマートな印象を与えるVEZELと差別化。それは数字にも表れていて、全長ではVEZELのほうが5mmほど長く、全高WR-Vのほうが70mm高かったりします。
そしてWR-Vの最低地上高は195mmで、VEZEL(ガソリン車)の170~185mmと比べると、やや高い設定になっています。結果、クロカン風のマッチョなスタイリングと相まって「ギア感」を強めているといえます。
「ギア」感を一層強めているのがフロントマスク。Hondaとしては珍しく大きな開口部にゴツゴツしたテクスチャーで実にイマドキです。
気になるバックドアの開閉ですが、それほど後ろに空間がなくてもドアは開きそう。ただVEZELよりは空間が必要になりそうです。
荷室は驚きの458Lでライバルを圧倒。ただし、コスト削減かプライバシートレイは「ただの板」で、取り外した時の置き場所はありません。そしてアクセサリーソケットなどもありません。後席を倒したところ、フルフラットにはならず。
リアシートはチープ感はなくて収納はある
後席はヤリスクロスと比べて広々の印象。さらにエアコン送風口も用意されているほか、12Vアクセサリーソケットも用意されています。USB充電端子はないですが、アクセサリーソケットに充電アダプターを取り付ければよいでしょう。センタートンネルは低めでシート間の移動は比較的ラク。サイドシルは低めなのでお年寄りの乗り降りは比較的ラクといえるでしょう。
アームレストを引き出すと、ちょっと前下がりに感じるかも。でも横から見るとキッチリと地面に対して並行なので、シートが結構寝た形状ゆえにそう感じるのでしょう。アームレストにドリンクホルダーがある都合、飲み物を置くと腕を置く場所はないかも。
運転席は視界良好で運転もしやすい
運転席はモノトーン基調。ファブリックシートに樹脂パーツを多用というのは、価格的に仕方のないところですが、それほどチープな印象を与えません。むしろアウトドアでガンガン使い倒しても、引け目を感じないので良いかなと思います。
そして、フロントマスクを彷彿させるエアコン送風口など、エクステリアとインテリアの世界観が統一されています。
ステアリングホイールは本革巻。アダプティブクルーズコントロールはハンドル支援付きですが、渋滞追従機能はつきません。メーターはフルLCDではなく指針式で、1世代前のHonda車のよう。でも機能面で不満はありません。
驚いたのはパドルシフトが用意されているという点。これはガソリン仕様のFITにはなく、やはり手元でエンジンブレーキの調整ができるのは実に便利です。
センターコンソールにシフトレバーとハンドブレーキを配置。レバー式のHonda車は久々の気分です。
ペダルは吊り下げ式。左足のフットレストは広くて安定感があります。
iOSにもAndroidにも対応! スマホとの連携機能も充実
USBはType-Aを2系統。そのうち運転席側は純正カーナビ/ディスプレイオーディオとリンクしています。Type-Aであるところに不満を覚えますが、世間はまだまだType-Aの需要が根強いのでしょう。
ディーラーオプションの8インチディスプレイオーディオはスマホ対応。どうやらワイヤレスCarPlayには対応していないようでした。
ハイレゾ再生の可否についてカタログには書いていなかったのでチェックしようと、ソニーのストリーミングWALKMANとの接続を試みましたが、Android AUTOが入っていないという趣旨のエラーが出て不可能。ストリーミングWALKMANの説明書を見たらできるような事を書いてあったのですが、ほかの車種でもできなかったことがあったので、諦めることにしましょう。
そのほかの収納としては、助手席のグローブボックスとアームレスト部のみ。ドリンクホルダーはドアポケットのみです。
パワーはないがそれ以外は不満のない走り
エンジンは1.5L 直列4気筒のi-VTEC。FITやVEZELのガソリン仕様車に搭載されているものと同一です。最高出力は118馬力、最大トルクは14.5kg-mが公称値。
イグニッションボタンを押下すると、景気よくエンジンが始動。コールドスタート時は景気よく振動も音もしますが、温まると比較的静かに。ヤリスクロスのハイブリッド車よりも静かな印象を受けます。そこは3気筒と4気筒の差なのでしょう。
FITのガソリン車と同じエンジンですので、強烈な加速は望めません。エンジンの回転数を上げれば、車内は騒音と振動の大合唱ですし、ステップアップシフトとはいえCVTらしいラバーフィール(加速感が実感できない)を感じます。
ですが、普通に走らせているぶんには必要にして十分なパフォーマンスですから問題ナシ。静穏性や力強い加速、燃費を求めるならVEZEL e:HEVがあるわけで、装備面だけでなく走行面でもすみ分けができているわけです。ちなみに普通に走らせる分には、ヤリスクロスより静かです。
驚いたのはネガティブに思う部分が少ないところ。
機能面で驚いたのは、前走車が発信したら注意を促したりするHonda SENSINGを搭載しているところ。「この価格帯で搭載できるなんて……」と感動します。
気になる燃費ですが、都心部の街乗りでリッター7~10kmといったところ。写真は最も低い時に合わせていますが、高速道路に乗ればもう少し上がってきます。
運転しながら「ちょっとアウトドアに行きたくなる」気分にさせてくれるのが不思議。FFでも普通のキャンプ場なら問題はないでしょうし、最低地上高もあるので、多少のラフロードだって平気。
遊び道具をクルマに詰め込んで、パートナーや家族と出かけたくなる、そんなカジュアルさに満ちています。「これで良い」よりも「これが良い」、そんな気持ちになる魅力的な1台でした。
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