ルノーのコンパクトSUV「キャプチャー」がマイナーチェンジ。エクステリアを刷新するとともに、パワートレインをE-TECH(フルハイブリッド、エンジンでもモーターでも駆動するシステム)と、マイルドハイブリッド(モーターはエンジンのアシストのみ)の2つのラインナップに改めた。
E-TECHとマイルドハイブリッドの違いを中心に、新しくなったキャプチャーの詳報をお届けする。
ルノー・キャプチャーの概要と市場での位置づけ

キャプチャーが誕生したのは2013年のこと。2019年に2代目にチェンジし、これまでに200万台以上を生産・販売している。欧州では人気が高く、2014年と2020年に欧州コンパクトSUV販売台数No.1を記録した。



ボディーサイズは全長4240×全幅1795×全高1590mm。コンパクトSUVの中では少し大柄という印象を受ける。全幅が1800mmを超えないので、駐車場選びもラクだろう。



新しいエクステリアは、どこかライバルを彷彿させるもの。担当者に話を聞くとデザイン責任者が2020年にプジョーから移籍したジル・ヴィダル氏に変わったとのこと。そう言われると、どこか面影がある。
ハイブリッドシステムの構成と仕様


パワートレインは1.3L 直4ターボ+モーターのマイルドハイブリッドと、1.6L 直4自然吸気にモーターのE-TECH(フルハイブリッド)の2種類。最高出力はマイルドハイブリッドが158馬力(エンジン)+5馬力(モーター)、E-TECHが94馬力(エンジン)+49馬力(モーター)+20馬力(モーター)となる。
ユニットそのものはマイナーチェンジ前と変わらないものの、制御系に手が加えられているとのこと。




グレード構成は3種類。
居住性と利便性を高めたインテリア機能





車内で目を惹くのが10.4インチの縦型タッチディスプレイ。従来は横型の小さな画面だったので、これはかなり大きな変化だ。ナビゲーションはスマートフォンのマップ機能を用いるが、Appleはもちろん、Androidもワイヤレス接続できるようになった。

感心したのは、クルマとしての使い勝手の良さが考えられているという点。昨今、大型ディスプレイですべてコントロールしようとする方向に進んでいるが、ルノーはエアコン操作に関しては物理スイッチを残している。
メーカーからしたら、タッチディスプレイで制御した方が先進的に見えるし、何よりコスト低減につながる。だが温度変更をする度に、いちいち画面を呼び出して……というのは、使えばわかるが、かなり煩雑だ。


そして、センターコンソールを半二階建て構造にしているのも好印象だ。やや寝そべって座るスポーツカーならともかく、SUVやコンパクトカーのような、比較的姿勢を起こして着座する車種の場合、二階建て構造は見た目こそよいものの、下段側のアクセスが猛烈に悪い。そこにUSB Type-Aコネクターを配置しようものなら、デザイナーや開発責任者は、本当に普段からクルマを運転しているのか? と思うほどだ。
だが、ルノーは上側にUSB Type-Cを2系統配置し、ユーザビリティを高めている。見てくれも大事だが、使い勝手はもっと大事だ。









インテリアもオシャレになった。エスプリ アルピーヌグレードは、アルピーヌのロゴ入りのバイオスキン&ファブリックのコンビシート(運転席は電動)のほか、トリコロールのオーナメント、アルミペダル、そしてブルーグレーのダッシュボードインサートが設けられている。




エスプリ アルピーヌとの価格差が20万円のテクノ仕様は、グレーを基調としたインテリアでシートはファブリックで電動シートではない。20万円という価格差は絶妙な値付けであると感じた。



キャプチャーの美質である使い勝手の良さはそのまま活かされている。後席は前後16cm移動可能で、最も下げた状態なら22cmのニースペースが得られる。感心したのは、後席にUSB Type-Cソケットのほか、エアコン送風口を設けている点。コンパクトSUVで後席にもエアコン送風口を設けるのは珍しい。




ラゲッジスペースは、マイルドハイブリッドなら536リットルとクラストップ。E-TECHなら440リットルと、必要にして十分すぎる容量を確保している。
走行性能とハイブリッドシステムの評価

ルノーは、走りの楽しさをドライバーに訴求する。それはキャプチャーでも同じだ。だがロールが減りながらも、しなやかさはそのままという印象で、楽しさが一層増したよう。荷物が多く積載できる使い勝手のよいクルマ「Super Utility Vehicle」ではなく、走りが楽しめる「Sport Utility Vehicle」を求めるなら、キャプチャーは良い選択肢だ。

大型画面のApple CarPlayも快適そのもの。感心したのは、メーターパネル内に交差点指示がキチンと表示されることだ。メーカー純正ナビに慣れていると当然の機能ではあるが、Apple CarPlayで表示するのは案外少ない。

マイルドハイブリッドには、パドルスイッチが設けられスポーツ濃度を高めている。そして、エスプリ アルピーヌはステアリングステッチがトリコロールに彩られていた。こういう演出がフランスらしい。







ステアリング右手側、「OK」ボタンの下に、見慣れないマークのスイッチがある。これは走行モード切替で、ECO、コンフォート、スポーツ、そして個別設定とサイクリックで切り替わる。従来はセンターコンソール側にスイッチがあったので、個人的には使いやすくなったように感じた。
【結論】ストップ&ゴーが多い場所ではE-TECH
郊外の幹線道路やワインディングならマイルドハイブリッド
さて、E-TECHとマイルドハイブリッド、選ぶならどちらかがベストか。乗り比べたが正直言って難しい。E-TECHの方が静粛であり、また出足の良さもある。なにより燃費がよいという。だが上り坂の加速では頭打ちの感はあるし、高負荷時にアクセルを話してもエンジンが動いている時があるなど生理的に違和感を覚える時があった。
マイルドハイブリッドはというと、一拍おいてから加速する印象。だが頭打ちの感は少なく、右足とエンジンが一体化する生理的心地よさがある。また、マイルドハイブリッドの方が車重、とくにエンジン部が軽いためか、ハンドリングがより軽快でクイック。
実用性のE-TECH、走りのマイルドハイブリッドというのは簡単だけれど、いざ選べと言われたら相当難しいのが正直なところだ。
都内のようなストップ&ゴーが多い場所では、E-TECHの方が快適だし燃費もよい。高速巡行もE-TECHの方が良い数字が出るだろう。マイルドハイブリッドが活きるのは郊外の幹線道路やワインディングだろうか。
■関連サイト