●競合であると同時に同志 まずは市場規模の拡大が最優先
参加者の共通の認識としてあったのは、経済産業省が掲げている「キャッシュレス・ビジョン」だ。もともと「2027年にキャッシュレス決済比率40%」を掲げていたが、現在はこの目標を2年前倒し。25年の実現に目標を定めてさらにドライブをかけようとしている。
そのためには「エンドユーザーの拡大」と一緒に、利用する場となる「加盟店開拓」の両輪を回転させていかなければならない。
19年が「キャッシュレス元年」といわれる起爆剤になったのは、18年12月に実施されたPayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」だったという認識は一致したところだった。ライバル事業者からは「コード決済に触れるユーザーが急増したので、その流れを切らないようにキャンペーンを打ち出した」というコメントもあり、競合であると同時に市場を広げるための同志であるという意識の高さがうかがえた。
資金力が大きくない事業者もその思いは変わらない。「同じ大きさの魚でも、小さな池よりも大きな池にいる魚の方が成長する可能性があるため価値があるとみなされる」と同意する。一社だけで頑張ってもなかなか普及しない中、資本力の大きいキャリア系スマホ決済事業者の参入は「時短につながった」として歓迎する。
●予想を超える普及スピード 各社は自社の強みを模索中
キャリア系のスマホ決済事業者は、以前から非接触決済などでキャッシュレス化に取り組んでいた歴史があるが、なかなか普及しなかった。いつかはスマホの機能に取り込まれることを想定はしていたが、アプリとしてのバーコード決済(コード決済)が広まったのはここ1年のことだ。
また、非接触決済は今となっては使いやすさで注目されているが、当初苦労したのが加盟店側のシステム導入コストの高さだったという。これに対してコード決済は導入コストが低いため、導入するスピードや展開が早かったという。
さらにスマホ決済事業者各社で共通しているのが、次々とあの手この手で繰り出されるキャンペーン施策が象徴するように、とにかく“スピード感”を重視しているということだ。
「各社のキャンペーンを横目で見つつ、われわれとしてどういう世界観を描けばいいのかを社内で十分に議論を重ねてきた」との発言もあり、自社サービスの強みをどこに置くのかということも重要なファクターとなっているようだ。
●真の普及に向けて官民一体で試行錯誤
ユーザー拡大の施策として、地方や郊外、離島、スタジアムなどリアルの場を活用するイベントも増えてきた。「子どもや年配の方も不便がないようにする点は配慮した」と、一部の若い人だけが使って得するサービスではユニバーサルサービスとして広がっていかないという意識は強い。
還元率や上限の設定、カテゴリーカット、期間限定など、各社がキャンペーンに試行錯誤している中で「まだこれが正解というものは見出せていない」という意見があった。使ってもらうユーザーを広げるためのアイデアを反映した企画は、今後も各社からいろいろと出されそうだ。
日本のキャッシュレスは海外の普及状況と比べたらまだ緒に就いたばかり。官民が一体となってキャッシュレス化を進める狙いは三つある。まずは生産性や業務効率の改善、二つが20年の東京オリンピック・パラリンピックや25年の大阪万博を見据えたインバウンド(訪日外国人旅行客)の対応、最後がキャッシュレス化によるデータの利活用だ。、
とりわけ最後の目的には、GAFAなどグローバルプラットフォーマーがAIやIoTの最新ITを駆使しながらデータを利活用したビジネスを拡大させている中、インフラとしてのキャッシュレス化が遅れるようでは、日本の国際競争力が低下してしまうという大きなテーマも関わっている。
参加者一覧(五十音順):Origami PRコミュニケーション部 古見幸生 PRコミュニケーションディレクター、KDDI(au) ライフデザイン事業本部・新規ビジネス推進本部・金融決済ビジネス推進部 長野敦史 部長、LINE Pay 営業統括本部 Direct sales事業部 大清水康徳 事業部長、、NTTドコモ パートナー推進室 田原務 担当部長、PayPay 事業推進室 柳瀬将良 室長、メルペイ 杉水流智之 Head of Enterprise Sales、楽天ペイメント 楽天ペイ事業本部・加盟店営業第一部 土田智之 エリア営業開発第三グループマネージャー。特別参加:経済産業省 商務・サービスグループ 小暮千賀明係長。司会進行:BCN+R編集長 細田立圭志、BCN+R記者 大蔵大輔、写真:BCN 松嶋優子
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