記者の配偶者の勤務先は2年ほど前、全社員に新たに社用スマートフォン(Android搭載スマートフォン)を貸与し、その端末にパスワードロックをかけた給与明細や源泉徴収票のPDFを配信する「給与明細電子化」を実施したが、原則、その端末で開封パスワードを入力しないと表示されない仕組みのため、約5インチの小さな画面では見づらく、自分のPCなどに転送してからPDFを開封するのも面倒なので、毎月、定期的に給与明細を確認する習慣はなくなった。
紙の給与明細と比較した「デジタル給与明細」の最大のデメリットは、本人の同意なしに一切見られないこと。もし本人が拒否すれば、家族は毎月の手取り収入や年収が全く分からない。こうなると、例えば住宅ローンの事前審査のため、前年・前々年の配偶者の年収を入力・記載する必要がある場合、「課税証明書(非課税証明書)」をその年の1月1日時点で居住していた市区町村の窓口に出向いて、有料で発行するしか把握する手段はない。
従来の紙もデジタル(オンライン)も一長一短があるが、「給与明細を受け取るためだけに出勤する」非効率をなくすには、給与振込先に指定している金融機関のインターネットバンキングや残高確認アプリなどを活用し、「毎月入金額だけ分かれば十分」と割り切ればいい。さらに、銀行口座と自動連携可能なオンライン家計簿サービスに登録していれば、入金されるとスマホに通知が届き、わざわざ銀行アプリにログインしなくとも入金額が簡単に分かる。
国は、マイナンバーカードと運転免許証の一体化に向けて検討に着手したという。しかし、マイナンバーに関連し、最も優先して追加するべき機能は、「給与明細」ではないだろうか。なお、前述の課税証明書に記載される課税所得や市県民税(所得割・均等割)の金額は、本人分に限ると、オンラインサービス「マイナポータル」の「あなたの情報」から、既にいつでも無料で確認でき、PDF/CSV/XML形式でダウンロードできるようになっている。
いずれにしても、感染症対策として推奨される在宅勤務・時差通勤と紙の給与明細の相性は悪く、その非効率をなくすため、何らかの方式で給与明細の電子化が進むと思われるが、弊害として「年収隠し」が多発すると予想する。すると、世帯年収を問う各種アンケート調査は無意味となり、女性も男性も自ら稼ぎ、足らなければ資産運用などで殖やすことが重要になる。キャッシュレス決済の普及やリモートワークなど働き方改革の進展は、表面的な変化にはとどまらない。
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