キングジムといえばデジタルメモ「ポメラ」やスマートボールペン「インフォ」など、近年はユニークなデジタル文具を開発するメーカーとして名を馳せている。そのキングジムが発売した新製品の電子ペーパー搭載のデジタルノート「フリーノ(FRN10)」をレビューする。


●軽くてコンパクト。筆記には専用デジタルペンを使用
 フリーノは6.8インチの16階調グレースケール表示に対応するE-Ink社のデジタルペーパーを搭載している。解像度は1440×1080ドット。タッチパネルは静電容量方式。筆記には電磁誘導方式の専用デジタルペンを使う。ツールバーのアイコン選択やページ送りなどは指でも操作できる。

 本体は175×132mmで、B6サイズのダイアリーよりも一回りほど小さめ。厚さが約10mmあるので、初めて手にした際には電子ペーパーを採用するデジタルノートとしては少し厚みがあるように感じた。
 Android OSを基幹ソフトウェアとして、Wi-Fi機能も積んでいると聞いてサイズ感に合点がいった。デジタルペンを含む質量は約240g。片手で軽快にハンドリングできるし、女性がバッグに入れて持ち運ぶのにも無理のないサイズだと思う。
 細くて軽い専用デジタルペンは充電不要。
使い込むと芯がすり減ってくるので、専用の替え芯が用意されている。筆記に使わない時は本体にクリップしたり、マグネットで吸着できるとよかった。同時発売される「フリーノ専用カバー」にはペンを収納できるホルダーがある。
 フリーノの価格はオープンで、実勢価格は3万円台後半になると予想される。デジタル文具としてはやや高価なように感じるかもしれないが、デジタルペーパーのパネルはコストが高いことを考えると値付けは頑張っていると思う。専用カバーもオープン価格だが想定売価は3000円前後。
カラバリはブラック/ブラウン/グレーの3色から選べる。
 内蔵バッテリーによる連続駆動は、1日約15分間ノートを記入した場合、フル充電から約10日間使えるスタミナを確保した。実際には1日15分以上使うことは頻繁にあるだろうし、反対にWi-Fi機能は使う時以外はオフにするなどこまめに省エネを気遣えば多少前後するはずだ。
 電子ペーパーが消費する電力は液晶ディスプレイよりも圧倒的に低いので、ヘビーに使い込んでもフル充電から1日単位でバッテリーを持たせることができる。デジタル文具としての魅力が感じられるポイントだ。
●紙のような書き心地。
文字や簡単なイラストがきれいに書ける
 電子ペーパーを採用するデジタルノートには他社からも先行発売されている製品がある。筆者はデジタルノートにとって何より大事なのは「書き心地」だと考える。フリーノは専用のデジタルペンで文字を書くと紙にペンで書いているような筆記抵抗が得られる。鉛筆よりも少し滑らかな、さらっとした書き味だ。
 文字や線の輪郭がガタつくこともなく、ペン先の遅延も感じられない。書き心地はとてもスムーズで良いと思う。
書いた文字や線を消す時にはツールから消しゴムを選んで該当箇所を細かく消すか、エリアを選択して一気に消すこともできる。
 ペン先の種類は鉛筆/ペン/筆の3種類から選べる。それぞれにペン先の太さを2~15まで1段刻みで変えたり、グレースケールの濃淡に変化を付けたりできる。電子ペーパーは“塗りつぶし”の表現力にはあまり長けていないが、筆先を上手に調節して使えば簡単なイラストのラフスケッチにもフリーノが使えそうだ。
 正円や四角形、グラフ罫線などを綺麗に描画するツールもある。ソフトウェアキーボードで文字をタイピングすることも可能だが、こちらはあくまで補助的な機能だと思う。

 ノートのページは作成時にタテ・ヨコのレイアウトが選べる。テンプレートは無地に横罫、方眼など12種類のプリセットが用意されている。またはユーザーが自分で1440×1080ドットの画像データをPhotoshopなどのソフトで作成して、JPEG/PNGデータを背景画像として読み込ませれば最大4件までカスタムフォーマットを保存して繰り返し使える。●ファイルはPDFでDropboxに保存も可能。カレンダーとしても使える
 作成した手書きのドキュメントは32GBの内蔵メモリーに最大約8万7000ページ分が保存できる。さらに外付けストレージとして最大32GBのmicroSDHCカード、最大2GBのmicroSDカードも記憶媒体に使える。
 だがやはり書いたメモは定期的にバックアップしておきたい。フリーノはUSBケーブルでPCにつないで内蔵メモリーにアクセスすると、PDF/PNG形式で保存したノートのファイルにアクセスしてバックアップが取れる。対応するOSはWindows 10、macOS 10.15(Catalina)以降だ。
 ファイルのバックアップ先にはmicroSDカードも指定できる。あるいはWi-Fi機能を使ってDropboxのクラウドストレージにもアクセスできる。アカウントからアクセスすると、フリーノで作ったファイルがDropboxの中の「アプリ」フォルダに保存される。ただ、最も手間がかからないのはやはりmicroSDカードへのバックアップだろう。
 デジタルペーパーはバックライトを持っていないため、暗い場所で使おうとすると画面が見えづらい。そこでフリーノは明るさや色味調整ができるフロントライトを搭載している。この機能がとても良いと思う。暗いイベント会場や展示会でフリーノを使ってメモを取るときに大変便利だからだ。
 フリーノは新規にメモを書き起こすだけでなく、内蔵メモリーにPC経由、またはDropboxやmicroSDカード経由でTXT形式、PDF形式のファイルが読み込める。PDF形式のファイルについては読み込んでからメモを書き足せるので、企画書や提案書に校正メモを書き足したり、署名を入れたりする用途にも使えそうだ。
 カレンダー機能もよく考えられている。電子ペーパーに手書きでスケジュールが書き込めると言っても、ただテンプレートの余白を工夫するだけでは限界がある。フリーノの場合は予定のある日付を選択すると入力画面に切り替わり、1日分の情報をたっぷりと書き込める。
 カレンダー表示の画面には日次のヘッドラインだけが並ぶので効率が良い。もちろん紙のスケジュール帳の方が使いやすいところもあるが、デジタルノートのカレンダーとして、フリーノはその特徴を十分に活かしきったインターフェースを練り上げた。
●デジタルペーパーの課題を上手にクリア。シリーズ化にも期待
 フリーノは他社が先行発売した電子ペーパーのトレンドをキャッチアップした上で、弱点や課題として残るポイントもうまくつぶした完成度の高いデジタルノートだ。あとは現在のサイズ感ではやはり大きな文字を書き殴ってしまうとすぐに改ページが必要になるため、「メモ」としての使用感を超えてこない手応えがあった。より本格的にノートとして使うのであれば、やはり最低でもA5判以上のサイズ展開がほしい。その上で価格を手頃な範囲に押さえ込めたら勝機は十分にありそうだ。ぜひシリーズ展開にもチャレンジしてほしい。(フリーライター・山本敦)
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