●池袋の家電市場を見てきた「池袋東口カメラ館」
1992年6月に「池袋東口駅前店」としてオープンした池袋東口カメラ館は、東京・池袋駅の東口にあった同じカメラ系家電量販店の「さくらや」と激しく争っていた。同年9月に「ビックカメラ 池袋本店」がオープンし、94年に本店前にビックパソコン館(旧ビックピーカン)を設立した時点で勝負はついた。本店を挟むようにカメラとPCの専門性の高い店舗が双璧をなした結果、2010年にさくらやは倒産した。
もちろん、前年の09年にヤマダ電機(当時)が三越池袋店跡地に「LABI1 日本総本店 池袋」をオープンしたことも大きい。それ以降、池袋における家電市場の戦いはビックカメラとヤマダデンキで争われることになり、現在に至る。今回、池袋東口カメラ館のリソースを池袋本店に集約することで、品質の高いサービスを提供していくという。
●社長就任3カ月で三つの改革を実行
7年前に証券会社からビックカメラグループのコジマの社長に就任した木村氏は、着任から3年間でコジマの約80店舗を閉鎖するという大ナタを振るった。当時について先のインタビューで木村社長は、「敵に塩を送るようなことをして、競合他社を一時的に喜ばせたかもしれない。しかし、止血をしたことで筋肉質になり、体力がついた。いったん縮んで収益性を強くしてから攻めに転じた」と語っている。
今回も、9月のビックカメラの社長就任と同時に、組織再編で自ら指揮を執った。
次に着手した改革は10月下旬。これまで無料だったネット通販「ビックカメラ.com」の配送料を、購入金額が2000円未満の場合は有料に見直した。「たとえ2000円以下のEC売り上げが競合他社に奪われたとしても、有料化することでECの利益が改善するメリットの方が大きい」と語るように、コジマの改革時と同じ手法でまずは止血する。
そして、今回の池袋東口カメラ館閉店の決断だ。コジマでの3年どころか、まだ就任3カ月の電光石火で組織、ECの物流費、店舗の三つの改革を実行した。「新型コロナ以前から不採算だった店舗などはスクラップ&ビルドに取り組みたい」と改革の手を緩めない木村社長だが、「ビックカメラは専門性と先進性、コジマは現状の生活を応援するスタイル」として、二つのブランドの違いを今後も際立たせていく。
新型コロナでインバウンド需要が消失したり、テレワークによる都市部への人の流入が減ったりするなど、都市部に店舗の多いビックカメラを取り巻くビジネス環境は一変してしまったが、木村社長によるコジマ流の改革で、復活までの道のりは意外に短いのかもしれない。(BCN・細田 立圭志)
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