●画面が回転する「Amazon Echo Show 10」
Amazon Echo Show 10はアマゾンのAIアシスタント「Alexa」を搭載するスマートディスプレイだ。価格は2万9980円。10.1インチのタッチ操作に対応する画面が、ユーザーの呼びかけた方向にすばやく反応して向きを変える「モーション機能」を搭載する。
ディスプレイは2.1チャンネル構成のスピーカーシステムを内蔵する円筒形の本体から、伸びるアームの先端に固定されている。ウェイクワードを話しかけると本体が中心線を軸に最大350度まで水平に回転してユーザーの側に画面を向ける。
電気自動車の部品としても使われるブラシレスモーターを回転部分に搭載するため、動きはとても静かで滑らかだ。ディスプレイの上下角度調整は手動。ウェイクワードを話しかけた後もしばらくの間、ディスプレイの上部に搭載する高精細カメラでユーザーの動きを追いながら画面をユーザーに向ける。
モーターの動作が無音に近いほど静かなので、モーション機能を使うことへの抵抗感がなく使える。マイクやカメラを使うモーショントラッキングの精度については誤差を微調整できるし、改善すべき点はアマゾンにフィードバックされる。これからユーザーの声が多く集まるほど使い勝手はさらに良くなるだろう。
●ホームロボット化したAlexa搭載アシスタント
Amazon Echo Show 10を使ってみて、筆者が回転するディスプレイを便利に感じたことが二つある。
ユーザーの動きに合わせて、カメラが捉える映像の中央に人物が位置するようにオートフレーミング機能も搭載する。モーション機能やカメラを使いたくない場合はそれぞれを設定からオフにもできる。対応するコミュニケーションアプリがZoomやMicrosoft Teamsにも広がればビジネスシーンでも活躍するスマートデバイスになりそうだ。
もう一つは「動く」姿に愛嬌があるためか、使い続けるほどAIアシスタントに話しかける抵抗感が薄れてくることだ。筆者も長くAmazon Echo Show 10を使っていたらホームロボットのように見えてきて、可愛く感じられてきた。
Amazon Echo Show 10はディスプレイが回転することを前提にして、置き場所に十分なスペースを確保しなければならないデバイスだ。近くにコワレモノや液体の入ったペットボトル等をなるべく置かないように注意したい。ディスプレイ部が何かにぶつかると内蔵するセンサーが検知して回転を自動的に止める機能があるのだが、ある程度重いものでないと押しのけてしまう。キッチンカウンターなどに置いて使う場合は特に気をつけたい。
10.1インチのディスプレイはAmazonプライム・ビデオで映画やアニメをじっくりと見る用途にふさわしいサイズ感だが、「動く」スマートディスプレイの利便性を宅内の様々な場所に置いて実感できるように、もう少しサイズの小さなモデルも製品化を期待したい。
スマホのAlexaアプリを使えば、ユーザーは家の外から本機のカメラにアクセスして家の中を見守ることもできる。家族全員が留守にしている間には有効な機能だが、そうでない時には家族の間柄でもプライバシーを気遣いながら扱うべきだろう。誰かが家にいる時間帯にはレンズの前にある物理シャッターを閉じてしまえば、カメラの機能が無効になる。出かける時に都度シャッターを開けるなどの工夫により活用したい。●Google Nest Hubはスリープテックデバイスとしても機能
グーグルは5月に第2世代のGoogle Nest Hubを発売した。Googleアシスタントを搭載する7インチのタッチ対応スマートディスプレイだ。価格は1万1000円となっている。
本機は2019年に発売された初代モデルから外観は大きく変えていない。スマートスピーカーとして「音」の再生能力は低音を約50%強化したことにより、バランスの良いパワフルなサウンドを獲得した。初代のモデルと聴き比べてみると明らかに低音の重心が下がり、中高域の音像にも立体的な厚みが増した。YouTubeやNetflixの動画を視聴する際にもいっそう心地よいサウンドが楽しめる。
目玉になるのは60GHz周波数帯の電波を使って、本体に触れることなくハンドジェスチャーでリモコン操作ができるMotion Sense機能だ。音声とディスプレイに直接触れるタッチ操作のほかに、音楽・動画コンテンツの再生と一時停止、タイマーやアラームの操作など簡易なオペレーションがハンドジェスチャーにより操作できるようになったグーグル初の据え置き型スマートデバイスだ。なお、同じMotion Senseは2019年にグーグルが発売したスマートフォンのPixel 4シリーズにも採用されている。
第2世代のGoogle Nest HubにはこのMotion Senseを活用する「睡眠センサー」と名付けられた、ユーザーの睡眠状態を計測する新機能もある。Motion Senseは暗い場所でも人が呼吸する時の動きを検知して眠っている状態を正確に把握する。本体に内蔵するマイクで“いびき”をかいていた時間を測定、環境光と温度センサーにより周囲の明るさや温度が睡眠にどのような影響を与えているかなどのデータも記録できる。
グラフ化されて残る「睡眠の質」をチェックすると生活習慣を変えるべきポイントなどが浮かび上がる。ウェアラブルデバイスを体に身に着けなくても、枕元に置くだけで正確にスリープトラッキングができるデバイスは、蒸し暑い日本の夏の間にもフィットしそうだ。初代機を使っている方も睡眠センサーを加えた第2世代のGoogle Nest Hubを買い足す理由があると思う。
あえて本機に注文を付けるとすれば、初代のモデルからデザインがほとんど変わっていないことが少し残念に感じる。ベッドサイドに置いて睡眠センサーを使うことを主目的とするのであれば、筐体のサイズがもう少しコンパクトになっても良さそうだ。グーグルも睡眠センサー機能に寄せされるユーザーの反響を見ながらデザイン変更や新たなラインアップの追加を検討するのではないだろうか。
●二つの製品は「スマートディスプレイ」を越えてきた
今回新しいAmazon Echo Show 10とGoogle Nest Hubを使ってみると、両社が明らかにスマートディスプレイの「先の進化」を見据えながら新製品の開発に取り組んだことがわかる。Amazon Echo Show 10はデバイスに「動き」を持たせることで、ユーザーとの物理的な合間だけでなく、心の距離までも縮めることに成功していると筆者は感じた。
将来は人型や動物型、あるいは車輪を付けてロボット掃除機のようにユーザーのいる場所へ自ら動いてコミュニケーションを交わせるようになるかもしれない。その時にユーザーが「最適」と感じる距離感を今後どのように詰めてくるのか注目したい。
Google Nest Hubはユーザー健康サポートという新たな機能を上手に取り込みつつある。手に持って使うスマホ、体に身に着けるウェアラブルデバイスよりも「部屋に置きっぱなし」にできるスマートデバイスの方がユーザーの生体データを静かに取得して、健康を見守るサポーターとして適任かもしれない。
同社のPixelシリーズのスマホは先日のソフトウェアアップデートにより、内蔵カメラを使って心拍数や呼吸数の測定ができるようになった。Google Nest Hubでも同じようなことができるようになれば、体調管理の枠を越えて、ストレスや不安を和らげるためのカウンセリングをGoogleアシスタントによる音声インターフェースを活用しながら提供する可能性もある。Google Nest Hubシリーズがわが家に1台の「ホームドクター」のようなスマートデバイスになるのかもしれない。これから大きな変貌を遂げようとしている各社のスマートディスプレイから引き続き目が離せない。(フリーライター・山本敦)
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