サッカーのカタールW杯で全試合配信を行い注目を集めたネットテレビのABEMA。W杯観戦をきっかけに、ネットテレビの視聴者を一気に増やした。12月6日の日本対クロアチア戦では、同時視聴数が2300万件超え。日本の動画ライブ配信の最高視聴数記録を樹立した。一時視聴制限を行う場面もあったものの、サーバーが落ちることはなかった。膨大なアクセスを見事にさばききり、技術力の高さを見せつけた。元日本代表の本田圭佑氏が放つユニークな解説や、複数のカメラ映像を同時に楽しめるマルチアングル機能も相まって、一部ではテレビ中継よりABEMAを選ぶという声も上がるほどだった。
ネットテレビの最大の特徴は、インターネットにつながっていれば、どんな機器でも視聴できることだ。スマートフォンやタブレット、PCは言うに及ばず、プラットフォーム次第ではスマートウォッチでも視聴可能。もちろん、テレビでもネット対応モデルなら、放送波と同じようにネットテレビも楽しむことができる。テレビ市場でも、この3年でネット対応モデルの販売台数構成比がグングン拡大。11月現在で79.4%とほぼ8割のテレビでネットが楽しめるようになった。しかし、このネット対応、メーカーごとに濃淡がある。
テレビメーカー主要5社について、ネット対応モデルの販売台数構成比を集計したところ、この11月で構成比が最も高かったのがTVS REGZAの93.0%だった。昨年11月時点では75.3%で3位だったが、この1年で17.7ポイントも構成比を拡大させた。11月に同社が販売したほとんどすべての製品がネット対応モデルだったことになる。次いで高かったのがソニーで91.1%、以下、パナソニックが81.6%、Hisense70.2%、シャープの59.6%と続く。主要メーカーで構成比を大きく伸ばしたのはTVS REGZAだけだった。
ネット接続テレビのメーカー別動向を、もう一つ、別の切り口で見てみよう。
一方、テレビ全体のメーカーシェアはどうか。テレビのシェアといえば、長らくシャープがトップの座に君臨していた。しかし今年は状況がかなり変化している。月次のメーカーシェア推移を見ると、シャープがトップを取る場面はあるものの、昨年11月からこの11月までで4回にとどまっている。代わってトップシェア常連になりつつあるのがTVS REGZAだ。実に9回もトップシェアを獲得。特に6月以降は連続でトップを走り続けている。
同社のテレビは、東芝時代から「オタク御用達」といわれるほど細かな機能にこだわったことで知られていた。ネット接続も比較的低価格モデルから実装しており、反応も速く使い勝手もいいと定評がある。同社のテレビは、こだわりが過ぎて「分かる人にしか分からない」と揶揄されていた時期もあった。しかし、テレビでネット動画を楽しむことが当たり前の時代を迎え、そのこだわりが活き始めている。今やしっかりとしたネット対応は、テレビ市場でシェア獲得の前提条件になりつつある。各社のさらなる進化に期待したい。(BCN・道越一郎)
【関連記事】
シャープとTVS REGZAが年間首位争い、液晶テレビ市場で大接戦
無線LANルーターに何台の機器を接続している?
もう画質向上は消費者に刺さらない、有機ELテレビは復調しつつあるけれど
徐々に縮小する薄型TV市場、しかし大画面化は進行中
ネット動画は地上波よりも上の時代、報道機能は誰が担う?