Zマウントレンズはこの2月まで1桁シェアで低迷。マウント別の販売ランキングでも5位か6位のパッとしない存在だった。しかしこの3月、にわかに覚醒。
さらにこの5月、Zマウントレンズのシェアは13.8%まで拡大、一気に2位までランキングを上昇させた。6月も13.3%で2位を保っており、それまでの低迷状態から一皮むけた。ジャンプアップした要因は今回も新レンズの発売だ。NIKKOR Z DX 12-28mm f/3.5-5.6 PZ VRを5月に、NIKKOR Z DX 24mm f/1.7を6月に投入。いずれも立ち上がりはまずまずだ。8月に発売するNIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VRにも、すでに予約が入り始めており、Zマウントレンズがにぎやかになってきた。交換レンズのラインアップが広がると、安心感が高まりカメラボディーの販売も上向く。
Zマウントのシェア拡大で、もう一つ忘れてはならない存在がサードパーティーだ。昨年9月にタムロンが70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD ニコン用を発売し、Zマウントレンズに参入。シグマも30mm F1.4 DC DN ニコンZ用などでこの4月に参入した。Zマウントレンズに占める両社のシェアは、合計しても2桁に届かないが、今後徐々にサードパーティ製レンズは増えていくだろう。一方ソニーの規格、Eマウントレンズのメーカーシェアを見ると、この6月のトップは40.2%のタムロンだった。当のソニーは35.1%で2位。見方によっては「庇を貸して母屋を取られた」状態といえなくもない。しかし、Eマウントレンズの選択肢が増えることは、ソニーのカメラにとって決してマイナスではない。ユーザーも歓迎だ。真逆の戦略をとっているのがキヤノン。
カメラメーカーにとって、レンズマウントはユーザー囲い込みの強力な武器だ。しかしメーカーの論理だけではユーザーはついてこない。遠い過去、VHSとベータマックスの規格競争で敗れ、メモリースティックでのユーザー囲い込みに失敗したソニーが、レンズでは規格を外部に積極提供。Eマウントレンズ連合を形成しようとしている点は興味深い。ニコンもマウント規格の外部提供に舵を切った。残るはデジカメのトップシェアメーカー、キヤノンだ。彼らの決断を静かに見守りたい。(BCN・道越一郎)
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