暦の上では春なのに、まだまだ寒さが続く今日この頃。そして、まだまだ恋しいのがおでん。
スーパーで売られている袋のおでんにも大分お世話になった。
さて、おでんで関西といえばやはり、だしにこだわる店が支持されている、と思いきや、とあるおでん専門の店主曰く、「昔はおでんではなく関東炊きと言った」と、カツオベースのシンプルなだしで、関東さながらの力強い味付けをしている店も多いそう。
関東炊きという言葉からも、おでんは恐らく東から西へ伝播したものと思われるが、だしまでも関東テイストを貫いてくれているとは、関西に身を寄せる関東人からすればありがたい。
もちろん、素材の持ち味を生かすべく、上品な関西だしで供すおでんの味にも慣れた。
特にロールキャベツやトマトなど、野菜系タネものの旨さは、関西だしでまざまざと思い知らされた気がする。
結局、関東風でも、関西風でも、美味しければなんでもよいのだが、関東では定番のタネものでも、関西では見かけないことに気づいたのが、ちくわぶだ。

中力粉に水と塩少々を練って作るちくわぶは、関東でも決して玉子や大根のような主役級ではない。
但し、脇役は脇役でも、郷愁をそそる名脇役。なければ、どことなく寂しい気にさせられるのだ。
関西に住み始めた当初、おでん屋に入ってはちくわぶを探し求めたが、とんと見つからず。そのうち探す気さえ失せていたのに、2024年に入って2軒もちくわぶを扱う店を発見!
一軒は残念ながら取材拒否店なのでふせるとして、もう一軒は大阪・高槻市の『盤石』だ。
おでん専門店ではないけれど、通年おでんに力を入れる名酒場。
なんでも、「客の要望で入れてみた」と店主の米山徹さんは事も無げに話す。
客の要望に応える店が太っ腹なら、要望を伝える客もまたすごい。ずっと探すことしかできなかった自分自身にとっては、まさにコロンブスの卵的発想だ。
ともあれ、数年ぶりに関西で出合ったちくわぶ。やはり郷愁の味。
でも、ふくよかにだしを吸い、モソヌチャッとした独特の歯ごたえに、案外関西人でもハマってる人いたりして!?
『盤石』
住所/大阪府高槻市高槻町15-12
※こちらの記事は、関西の食のwebマガジン「あまから手帖Online」がお届けしています。

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