『ブラック・ジャック』ピノコ役でミュージカル初挑戦

現在上演中のミュージカル『ブラック・ジャック』でピノコ役を演じている矢吹奈子にインタビュー。ミュージカル初挑戦の心境や女優業に対する思いなどを聞いた。

手塚治虫作品の中でも根強い人気を誇る『ブラック・ジャック』をミュージカル化。
主人公のブラック・ジャック(間黒男/以降、B・J)を坂本昌行が演じ、双子の姉の腹の中で18年間生き続けていた畸形嚢腫でB・Jに摘出され人工の身体を得た女の子・ピノコを矢吹奈子が演じている。

――IZ*ONEとしても活躍された後、2023年4月にHKT48を卒業されてから2年以上経ち、数々の作品に出演されていますが、女優業に対する思いや役との向き合い方など何か変わってきたことはありますか?

それまではメンバーとずっと一緒という状況だったので、作品によって環境が毎回変わることに最初は慣れなかったのですが、最近は新しい作品に入る時に、役のことを考えて他のキャストさんとの接し方も変えられるようになってきました。この役はみんなと仲いい役だから自分から話しかけようとか。それは周りのキャストさんがそういう風にされているのを見て学んだことで、毎回いろんな学びがあり、いいなと思ったものは取り入れるようにしています。

――これまでドラマを中心に出演されていましたが、今回『ブラック・ジャック』でミュージカルに初挑戦。オーディションでピノコ役をつかんだそうですが、オーディションに挑戦した思いをお聞かせください。

アイドルの活動していた時から歌もダンスもすごく好きで、お芝居をやりたくて卒業しましたが、卒業後もファンの方から「歌が好きだから聴けたらうれしい」みたいに言っていただいて、私自身もコロナ禍にオンラインでミュージカルの配信を見たり、その後、実際にミュージカルを見に行く機会もあって、自分もやってみたいと思いました。

――歌とダンスという武器を生かせる、ご自身が輝ける場所になりそうですね。

そうなるように頑張りたいです!

――これまでもミュージカルのオーディションを受けたことがあるそうですが、『ブラック・ジャック』出演が決まった時のお気持ちをお聞かせください。

初めてのミュージカルなので不安な気持ちもありましたが、すごくうれしかったです。

――ピノコを演じる際にはどういうことを意識していますか?

演出の栗山(民也)さんから「ピノコはブラック・ジャック先生がつなげてくれて形成された子なので、完成形になってはいけない。歌もダンスも音に合わせるのではなく少しずらして、音程もたまに外れてしまうという風にやってほしい」と言われて、それは今までやってこなかったことなので難しかったです。
何も考えないと音に合わせて動いてしまって。いろんなことを考えながら演じるのが最初は大変でしたが、だんだん慣れてきました。

――本当は完璧にできるのに未完成な感じを見せるということに葛藤はなかったですか?

それは全然ないです。ピノコとしてはきっと外れているのがかわいらしさに見えますし。この作品ではピノコの成長も描かれているので、それも表現できたら。最後にブラック・ジャック先生と歌うところは外さないで頑張りたいです!

――久しぶりの歌とダンスはいかがですか?

稽古というのが久しぶりで懐かしい感じがしてしますが、お芝居も歌も全部が楽しいです。周りのスタッフさんからも「楽しそうにやっているね」と言っていただいて、「確かに楽しんでやっているな」と感じています。

――12月から来年1月に上演される福田雄一さん演出のミュージカル『サムシング・ロッテン!』への出演も決まっていますが、やはりミュージカルで頑張っていきたいという思いが強いのでしょうか。

そうですね。こちらもどんな感じになるのかなという不安はありますが、歌とダンスもできるということで頑張っていけたらと思っています。

「ミュージカルはアイドルのステージとは全然違う」と実感

――映像とは違う、生の舞台で作り上げていく楽しさややりがいについてはどのように感じていますか?

映像は間違ったらやり直せますが、ミュージカルは舞台なので、舞台上に立ったら全部見られていて、間違ったり噛んだりしたことも生かさないといけないというのはドキドキです。だからこそ毎回新鮮な気持ちで立たなければいけないですし、それがやりがいでもあるのかなと感じています。


――アイドルとして数々の生のステージに出演されていた経験も生きていますか?

歌やダンスの基礎的なところは生きていると思いますが、ミュージカルはアイドルのステージとは全然違うなと感じています。アイドルはみんなで作り上げた曲を見せるという感じで、もちろんミュージカルも作り上げたものを見せるという部分もありますが、その時の相手の言い方などでこっちも変わったり、毎回少しずつ違う舞台になるので。歌もただリズムに合わせて曲として伝えるのではなく、セリフだと思って歌うので、そこも全然違います。

――数々のミュージカルで主演を務めている座長の坂本昌行さんから学びや刺激がありましたら教えてください。

稽古の時に早めに行ったつもりなのに、もういらっしゃっていて、稽古が始まる前も、終わってからも、すごく熱心にいろいろ確認されていて、予習復習がすごいなと思いましたし、集中力もすごいなと思いました。その姿を見て、私もより背筋が伸びたというか、いい意味で緊張感を持ってしっかりやるぞと気合が入りました。

――坂本さんからアドバイスなどはありましたか?

ブラック・ジャックとピノコの関係はかわいらしいので、そこがうまく表現できるように会話のラリーのタイミングをそろえましょうというお話がありました。私がブラック・ジャック先生にツッコむところがあって、「こういう風に言ったらもっと面白いかもしれないね」みたいなことを言ってくださって、すごく勉強になりました。

――初ミュージカルの『ブラック・ジャック』でだいぶ鍛えられそうですが、完走した時にどうなっていたいと期待していますか?

後悔なく、やり切ったと思いたいです。私は舞台を見に行った時もカーテンコールでうるうるする人なので、自分の時はどうなってしまうんだろうと。達成感あふれる千秋楽を迎えられたらいいなと思います。

――今後の抱負もお聞かせください。


今年はミュージカルに初挑戦し、もう1つ控えているので、まずはこの2つをしっかり完走し、ミュージカルも自分の強みになったらいいなと。そうなれるように頑張ります。そして、これからもどんどん新しい挑戦をしていきたいです。ラジオドラマも久しぶりにやらせてもらって楽しかったので、いろんなお芝居に挑戦したいですし、いろんな役にも挑戦していけたらと思います。

■矢吹奈子
2001年6月18日生まれ、東京都出身。2013年8月、HKT48第3期生オーディションに合格し、翌年4月よりチームHとして活動を開始。2018年に韓国で開催されたオーディション番組『PRODUCE48』に参加し、IZ*ONEのメンバーに選ばれデビュー。専任活動を開始し、2021年4月に2年6カ月の活動期間を終了。その後HKT48として2年5カ月ぶりに活動再開。2023年4月に行われた卒業コンサートでHKT48を卒業。グループ卒業後は2作連続で連続ドラマのヒロインを務めるなど、現在は女優業を中心にバラエティ番組等でも活躍している。

■ミュージカル『ブラック・ジャック』
東京公演は2025年6月28日~7月13日にIMM THEATERにて上演。
その後、7月18日に新潟公演、7月21日に名古屋公演、7月23日に浜松公演、7月26日に札幌公演、7月31日~8月2日に兵庫公演が予定されている。

ヘアメイク:舩戸美咲
編集部おすすめ