テレビなど送信側とTWSなど受信側の双方での対応が必要だが、Auracastの応用範囲は広い。テレビのAuracast対応は有効だろう。サムスンやLGの一部の製品ではすでに対応している。深夜に家族で映画を楽しむ場合など、それぞれのTWSが使えるのでとても便利だ。
現在、対応のTWSはいくつかある。有名どころでは、ソニーの「WF-1000XM5」やEarFunの「Air Pro 4」が対応。ハーマンの「JBL Tour Pro 3」、シャオミの「Redmi Buds 6」なども対応している。一般的な利用法としては、まずスマホでTWSの設定を行う。どの機器と接続するかなどを選ぶわけだ。その後はTWSとテレビなどが直接つながる。スマホはあくまでもTWSの設定用。実際の音声を聞く際には必要ない。また、送信側の機器も販売されている。例えばスマホならサムスンの「Galaxy S24/Ultra/+」などがある。この場合は、スマホに直接複数のAuracastに対応TWSがつながる。
米調査会社のABI Researchによれば、今年、Auracastを使用する施設は世界で8万件程度になるという。現状ではまだまだ少ないが、2030年には約240万件にも拡大すると推計している。そんな意味で今年はAuracast元年と位置付けられているようだ。普及に勢いがつけば、それ以上のスピードで拡大していく可能性も高い。プロ向け音響機器を手掛けるヒビノでも、こうした状況に目を付け、Auracastを活用した業務用システム「AuraBroadcaster」を新たに開発した。早ければ、この9月にも発売する予定だという。手のひらに収まる超小型のポータブル送受信機「HA-P100」、耳掛け式の骨伝導レシーバー「HA-B100」、デスクトップに設置する送信機「HA-T100」からなる。
製品の開発に携わった、ヒビノのヒビノマーケティングDiv. 技術部部長 兼 新規事業推進室の山田宏 室長は「自分のTWSを使って、さまざまな機器につなげられる、というのがAuracast最大の特徴。これを生かすためには多くの機器で対応してもらいたい。現在Auracast非対応のTWSでも、場合によっては、ファームウェアの書き換えだけで対応できるようになるかもしれない」と話す。山田室長によると「スタジアムで実況や解説の音声を共有するような場面での活用も視野に入れている。
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