●「防災」から「減災」「事前防災」へ
減災とは、災害による被害をできるだけ小さくするための取り組みです。よく知られる「防災」とは異なり、「災害による被害を未然に防ぐ、ゼロにする」というゼロリスクの観点ではなく、地震、津波、台風、洪水といったさまざまな自然災害は人間の力では抑えられず、必ず被害が発生するものと捉え、「万が一、災害が起きたときにその被害を最小限に抑える」ことを目指します。
09年に内閣府が作成・公開した「減災の手引き:減災の取り組みで個人ができる7つの備え」(内閣府=https://www.bousai.go.jp/kyoiku/keigen/gensai/pdf/tebiki_web2009.pdf)では、具体的な取り組みとして、以下の7項目を挙げています。
・「自助・共助」の心がけ
・災害危険度の把握(ハザードマップなどの確認)
・自宅を地震に強い家に
・家具の固定
・非常用持ち出し袋の準備や水・食料などの備蓄
・家族で防災会議を行う
・地域とのつながりを大切にする
「地震に強い家」は、耐震性能として数値化されているので客観的に把握できます。「家具の固定」や「非常用持ち出し袋」は家電量販店やホームセンターなどを訪れて必要な防災用品・防災グッズなどを購入し、実際に自宅に設置すれば完了します。
一方、個人ではなかなか達成が難しい項目は「家族での防災会議」や「地域とのつながり」でしょうか。この手引きが策定された時期とは異なり、今はスマートフォン(スマホ)やタブレット端末から、メッセージアプリやSNS、主要キャリアが設置する「災害用伝言板」などにアクセスして簡単に安否確認ができるので、日ごろからスマホを1~2回程度フル充電できるモバイルバッテリーを持ち歩くと、万が一の被災時に大いに助けになるでしょう。
ただ、充電済みのモバイルバッテリーを携帯していても、避難時にスマホ本体を誤って落として故障してしまったら正常に動作しないので元も子もありません。余裕があれば、避難用袋にメインのスマホと同じアプリをインストールした予備のスマホを入れておくことをおすすめします。
この場合、あくまでも予備なので古い機種で構いません。通信機能もあった方が良いので、月額1000円程度の出費を前提に、ドコモの6月提供開始の新料金プラン「ドコモ mini」(月4GB/最安月額880円~)やLINEMO(月3GB/月額990円)、楽天モバイル(3GB/最安月額968円)のいずれかを契約するか、原則0円で必要に応じてトッピングを購入(180日間以上有料トッピングの購入がない場合は利用停止)するKDDIのオンラインブランド「povo2.0」などを契約しておき、メインの回線が使えない場合のサブ回線としてキープしておくとよいでしょう。
たとえ月額1000円程度でも、こうしたプラスアルファの通信費用は無駄という見方もあるでしょうが、万が一のリスクに備える必要経費です。そしてこの意識こそが「減災」の考え方です。
「減災」とほぼ同じ意味をもつ「事前防災」という用語もあります。災害が起きる前に被害を最小限に抑えるための対策を講じること、事前に命を守るための備えを準備しておくことを指し、「事前防災」を心がける人が増えれば、万が一の被災時に被害が最小限に収まるはずです。
毎年9月1日は「防災の日」、9月は「防災月間」です。自然災害が激甚化し、今まで以上に「減災」や「事前防災」の重要度が高まりつつあります。今年からは「減災」または「事前防災」を念頭に、お住まいの市町村のウェブサイトで各種ハザードマップ(洪水・地震・津波・土砂災害など)の確認や非常用持ち出し袋の中身の確認・更新をおすすめします。
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