リッチさんは、ニューヨークでは人気のタトゥーアーティストでした(これが、彼が全身にタトゥーをしている理由です)。かつては大きな家に住み、ロックスターのような生活をしていたそうです。
アメリカのタトゥー文化は日本とは比べものにならないほど、大きな市場を持っています。ニューヨーク市在住のタトゥーアーティストの平均年収を調べてみたところ、約800万円だそうです。人気アーティストにもなるとさらに稼いでいるはずなので、余裕のある生活をしていたのも想像ができます(引用元:https://www.paysa.com/salaries/tattoo-artist--new-york,-ny--tl)。
そんなリッチさんが、シャーマニズムに興味を持つ前にハマっていたのは「ヨガ」だそう。ヨガを始めるほとんどの人は、まず「身体的な効果」を期待してクラスに通います。実際に、柔軟性は上がりますし、お腹もスッキリして全身にしなやかな筋肉がつき始めます。
そして、身体的な効果を感じる頃には、呼吸への意識が変わったりマインド(頭の中)の整理が始まったりと、「精神的な効果」も実感するようになります。
リッチさんもヨガに目覚め、多くの先生の下で勉強し始めたところ、ヨガとシャーマニズムを教える先生に出会います。そこから人生が大きく動き出し、南米に「アヤワスカ」(※アマゾン川流域に自生するキントラノオ科のつる植物を煮出して作る)を勉強しに行く事になったそうです。
■南米に存在するヤワナワ族との出会い「ナショナルジオグラフィック」によると、南米には「外部との接触を一切持たない部族」が未だ84部族も存在し、外部との接触を持つ部族も含めると400もの部族がアマゾン熱帯雨林に存在するそうです。
部族によっては、外部との接触をうまく活かしながら生活をしている部族もおり、ヤワナワ部族もそのひとつです。2,000人ものメンバーを持ちブラジルのアクレ州からペルー、ボリビアまで拠点を広げています。彼らは市内で音楽活動を繰り広げたり、世界中から訪れる人々に治療を目的とした儀式を行ったりします。
リッチさんは7年前にペルーを訪れて以来、毎年ヤワナワ族の下で「プラントメディスン」(植物を使った治療法・儀式)を学び続けているそうです。
■ジャングル生活によって現代社会の毒素を浄化ジャングルで育っていないアウトサイダー(外部者)は、まず自身の体を自然の中で生きていた原始時代の波長へと戻す訓練を受けます。厳しい食事制限をしたり、ジャングルの中で一人隔離された状態で瞑想を続けたり…と、徹底的に自然と一体化する事で、都市の生活で蓄積された体中に残っている毒素や精神的なトラウマを解放していきます。
やがてジャングルと波長が合うと、自然界とコミュニケーションを取れるようになり、植物達と会話ができるようになるそう。そういう状態になると次は、個に学びを与え、浄化を助けてくれる植物=マスタープラントの勉強を徐々に始めていきます。
また、顔や体に施されるペイントは部族によって全く意味が異なり、戦いの前や儀式など用途に合わせて変わるそうですが、ペイントをする事で魔法の力を体に与えると信じられています。
■魂を浄化する“アヤワスカ”はうつ病の治療にも高い効果一般的に知られている代表的なマスタープラントは、
・アヤワスカ ・サンペドロ ・コカ ・タバコですが、アマゾンの熱帯雨林にはこれだけではなく、数多くのマスタープラントが存在するとのこと。
アヤワスカはペルーの国家文化遺産です。飲用すると嘔吐を伴う強烈な幻覚作用をもたらし、魂を浄化すると言われています。
前回の記事でもお話しましたが、シャーマニズムの世界では惹かれる事を“コーリング”と呼びます。アヤワスカの儀式を受けたリッチさんはその後、プラントメディスンのコーリングを強く感じましたが、最初はそれ以上深入りしたくはなかったそうです。
“ニューヨークで作り上げた心地良い生活やリズムを失いたくなかった”
ただ、そう思ったリッチさんも、シャーマニズムによる癒しの力を実感するうちに、さらにのめり込んでしまったそうです。自然や部族の人の助けで、今まで感じた事のない人生の喜びや愛を得たと教えてくれました。“シャーマニズムに出会う前は短気な男だった”と語るリッチさんですが、今ではとても穏やかな顔をしています。失うと思った物は、全て自分の中にあり続けていた事に気づいたそう。
■シャーマニズムによってもう一度心の声に向き合うことができる私たちは、生きていくうえでとても多くの困難に直面します。幼少期に起こる家庭内でのトラウマや思春期に始まる競争社会との壁、対人関係の悩みや悲しい失恋などなど。
書き出したらキリのない困難に何度も何度もぶつかっていると、いつしか感情や心の声を聞かなくなってしまいます。すると、こういう場面ではこう対処をしよう、とか、こういう流れになったら潮時だから身を引こう、などと次第に物事をパターン化していき、頭の中でオートマチックに完結させてしまいます。
それに対して、先住民達が継承し続けてきたシャーマニズムとは、今まで蓄積されていた「痛みや悲しみ」を浄化することで、もう一度心の声を聞き、しっかりと自分自身と向き合う機会を作るという事なのではないでしょうか。
“心の声を聞いてあげるというのは、とても勇気が必要な事だ。自分らしくあるという事は拒絶される恐怖も伴うけれど、本当に自分を愛していれば、たとえ怖くても『自分らしくいる』という道を選ぶことができると思う。”
いかがでしたか?
幻覚作用を伴うマスタープラントはとてもエクストリームな例えですが、心底、自分を変えたいと思うのならばどこかで極端な変化をとることが必要なのかもしれません。例えば、思い切って見た目をガラッと変えてみるとか…。皆さんもそれぞれに合うその “キッカケ” を探してみてはいかがでしょうか。
近日、アヤワスカの儀式を受ける機会を得られそうなので、またその効果もシェアしていきたいと思います。
それでは、また近いうちお会いしましょう。
「ナマステ!」