BS朝日で99年制作のドラマ「可愛いだけじゃダメかしら?」(テレビ朝日系)が2020年に再放送した。主演は榎本加奈子。
ちなみに、当時の公称データでは157センチ37キロ。「笑っていいとも!」(フジテレビ系)ではタモリに「細いね、32キロくらい?」などと指摘され「もうちょっとありますよ」と返していた。また「週刊文春」でも「昔から変わっていない」と語っていたが――。ドラマ「家なき子2」(日本テレビ系)で世に出たときに比べたら、当時は明らかに痩せていた。タモリといえば、芸能界きっての体型フェチだし、体重30キロ台20キロ台の「痩せ姫」を見慣れている筆者から見ても、その指摘はかなり正確だったように思う。
ともかく、彼女はその体型でこの作品以外にも「おそるべしっ!!! 音無可憐さん」(テレビ朝日系)「P.A. プライベートアクトレス」(日本テレビ系)などに主演。多くのグラビアやCMもこなしていた。同じ世代には他に、宝生舞やともさかりえもいて、スレンダー芸能人が花盛りだったものだ。
ただ、こういう存在はいつの時代にもいる。その際、キーワードとなるのが「30キロ台」の体重だ。浅丘ルリ子(156センチ35キロ)にあべ静江(158センチ38キロ)松本伊代(156センチ38キロ)。
近年では、桐谷美玲や河北麻友子のように、160センチ以上の身長で体重が30キロ台という人たちも出現。桐谷は先日、第一子を出産したことでも「あの体型で⁉」と話題になった。
しかし、芸能人の体重は90年代あたりから、あまり公表されなくなっていく。プロフィールの体型データでは身長とスリーサイズ、あるいは身長だけが記載されることが増え、体重の具体的な数字を知る機会は減ってしまった。
それでも、テレビやネットで本人が体重を公開することがちょくちょくある。最近では、元AKB48の島崎遙香がYouTubeに自身のダイエット解説動画を投稿。そこでデビュー前から現在までの体重変化も明かした。AKBに入ったときと数年前に激痩せが騒がれたときは、ともに38キロ(公称身長は159センチ)だったという。
また、元モーニング娘。の尾形春水もYouTubeで過去の体重を告白。
テレビで公表したのは田中みな実で、数年前の失恋を振り返り「あのとき34キロくらいになった」と発言(身長153センチ)。
他にも、STU48の榊美優がツイッターで42キロから36キロ(身長151センチ)までダイエットした過去をつぶやいた。
以上はすべて今年に入ってからの出来事だが、ここでもキーワードは「30キロ台」だ。というか、こうしたかたちで体重公開をする芸能人の過半数が、その時点で30キロ台、もしくは以前に30キロ台だったというケースなのである。
AKB系では、高橋みなみ(148.5センチ37キロ)に板野友美(154センチ37キロ)石田晴香(153センチ36キロ)。坂道系でも、身長163センチの橋本奈々未が一時期、30キロ台だったという。それ以外だと、小倉優子(162センチ38キロ)に水原希子(168センチ36キロ)中島美嘉(160センチ35キロ)蒼井優(160センチ36キロ)。さらには、広末涼子のように「仕事をやめたくてわざと15キロ太り、52キロになった」と語ったことで、一時は37キロ(身長161センチ)だったことがわかったパターンもある。また、工藤静香は「痩せてたときより10キロ太った」と明かしたことがあり、それでも50キロ以上には見えないことから、一時は30キロ台(身長161センチ)だったのだなと推測できたりした。
■過剰なGo To ダイエットは自己責任で行うもの
この30キロ台ブーム(?)はいったい、どういうことなのか。もちろん、体重公開にいたった経緯は人それぞれで、太れない体質の話だったり、役作りの話だったり、無理して痩せたら体調を崩したという話だったりもする。
というのも、女性芸能人の場合、体重が40キロ台というのはさほど珍しいことではない。いわば「普通の細さ」であって、公開するほどでもないと考える人も多いはずだ。まして50キロ台以上となると、恥ずかしくて公開できない人もいるだろう。逆に20キロ台だと、低年齢低身長じゃない限り、病気扱いされかねない。こちらは「特別すぎる細さ」だ。
つまり、30キロ台というのは、女性にとって憧れや羨望、あるいは嫉妬や心配といったさまざまな感情をかきたてるものなのである。もちろん、病人扱いしたい人もいるだろうが、30キロ台でも元気な大人はけっこういるので、そこまで決めつけることはできない。
一方、男性にとってはどうかというと、好奇心の対象、人によっては女性らしいきゃしゃな魅力のアピールポイントとなる。筆者の高校時代、160センチ超で30キロ台という桐谷美玲体型の美少女がいて「一度、持ち上げてみたい」などと言う男子がいたものだ。
また、横綱の曙が相原勇と交際していた頃、彼女の体重が38キロ(身長156センチ)だということを雑誌で嬉しそうに語っていた。
というように、30キロ台というのは「特別な細さ」の記号であり、スレンダー芸能人にとってはその証明にもなる。それゆえ、無意識にせよ公開してみたくもなるのだろうし、メディアもとりあげ、世間も注目するわけだ。
また、たとえ具体的な体重がわからなくても、それを思わせる細さというものがある。それが以前より痩せてそうなった場合は、ファンをざわつかせることに。最近でいえば、IZ*ONEの本田仁美やNiziUのミイヒがそうだ。
なお、島崎遙香や尾形春水の動画からは、ダイエットでの試行錯誤を通して自分に合った心身の状態を模索する過程がよく伝わってくる。田中みな実のインタビューなどもそうだが、30キロ台を経験した人の発言は、食や体型をめぐる葛藤をしている人にとって、いろいろと参考にできるのではないか。
実際、30キロ台は「特別な細さ」なので、体質的に向いていない人にとっては目指すのも維持するのも難しい。それでも、そうなりたい人はリスクを想定しておく必要があるだろう。株などの投資と同じで、ダイエットは自己責任で行なうものなのだから。
文:宝泉薫