予約が殺到して、ほとんど不可能だと言われている店があれば、世界各国の食道楽たちと席を奪い合い、必ず勝利した。そう語るのは、「世界のミシュラン三ツ星レストランをほぼほぼ食べ尽くした男の過剰なグルメ紀行」の著者、藤山純二郎氏。
■シェフたちの師匠が創る絶品の魚料理とは?
次に忘れられないのは、魚料理「舌平目のフェルナン・ポワン風」。
フェルナン・ポワンとは人名だが、この人を知っている方は、かなりのフレンチ通だ。
先のジョエル・ロブション氏が「フレンチの神様」なら、フェルナン・ポワン氏は「現代フランス料理の始祖」であり、「現代フランス料理の生みの親」である。
言い換えれば、フランス料理に名を残している多くの三ツ星シェフたちの「師匠」、すなわち「先生」である。
「シェフのシェフ」と言っても過言ではない。
弟子の三ツ星シェフにはポール・ボキューズ氏、故・ジャン・トロワグロ(1926~83)氏、1966年開業の銀座ソニービル地下にあった「マキシム・ド・パリ・銀座」の初代シェフでもあったピエール・トロワグロ(1928~)氏、故・アラン・シャペル(1937~90)氏、南仏のカンヌ近郊の「ロアジス」のルイ・ウーティエ(1930~)氏、アヌシー湖畔の「オーベルジュ・デュ・ペール・ビーズ」の故・フランソワ・ビーズ(1928~84)氏、パリにあった「ヴィヴァロワ」のクロード・ペロー(1931~)氏がいる。
「フェルナン・ポワン風」と名付けているのは、有名な三ツ星シェフ、ポール・ボキューズ氏が自分の師匠のフェルナン・ポワン先生に敬意を表した料理、つまり、古典中の古典料理だということである。
■海底の栄養分を貪欲に食い集めた「至宝」を頂く贅沢
さて、「シェフのシェフ」フェルナン・ポワン氏風の「舌平目」って、いったいどんな味なのだろうか。
これはたいへんなクラシックな料理なので、作り方をちょっと説明する。
まず、舌平目を白ワインと出汁(だし)で加熱したら、平目を取り出す。
そこに最初の平目の煮汁、生クリーム、大量のバターを溶かし、オーブンで焼く。わかりやすく言えば、いわゆる、グラタンにするわけだ。そして、最後にバジリコ風味のクリームをかける。
これが、「舌平目のフェルナン・ポワン風」だ。
もう、この段階で、グラタンの出来上がりの匂いがしてくるだろう。
その「舌平目のフェルナン・ポワン風」が運ばれて来た。明らかに、見るだけで、食欲がそそられる。さっそく、ナイフとフォークを取った。
そして、表面にグラタンの皮の焦げ目のついた肉厚の舌平目におもむろにナイフを入れ、皿に切り分けながら、取り出し、フォークで塊をすくった。
口に入れた瞬間の味の素晴らしさ。生クリームやバターの味。
「これが、伝説のシェフの味だ! ついに食べたぞ」
こんなに質の高いプリプリした舌平目は食べたことがなかった。
これまでに、こんなに美味な魚料理は食べたことがなかった僕は、これ以上ない幸福感に包まれ、いつまでも食べ続けたいと本気で思った。
フランス、リヨン郊外12キロの「ポール・ボキューズ」には、もうひとつ、「すずきのパイ包み焼き」という名物料理があるが、これは基本的に2人前からしかオーダーできないが、この「舌平目のフェルナン・ポワン風」は1人前から注文できるので、ひとり旅にはおすすめである。
なお、藤山は大食いで、「ポール・ボキューズ」で2人前からの「すずきのパイ包み焼き」もひとりで食べたこともあるので、ひとりで食べることも不可能ではないことも明記しておこう。
(五皿目へ続く)
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