気持ちは分かるけど、お前それはどうなんだという事案が勃発し、新年早々ネット界隈に華を添えていたのが表題の物件です。
ことの経緯は、我らが総理大臣・菅義偉さんと会食を共にした落合陽一さんについて、古市憲寿さんがテレビでいじり気味に触れたところ、落合陽一さんが激怒。
さらには、それについて詳細を報じた東京スポーツに対して落合陽一さんが記事削除を直談判するため東スポ編集部に闖入するというビートたけし状態となり、騒然となりました。そんな落合陽一さんの行動ポイント消費に対して東スポ側も男気を見せて記事を削除。「いや、記事削除すんなよ」と思いながらもプロレスを愛する東スポの心意気にはネットにも感動の声が広がります。
もともと、落合陽一さんと古市憲寿さんは対談などしてその内容の意味不明さゆえに炎上までしており、両者が刊行した本のパブ記事にしては社会問題を切るスタンスや深みがアレすぎて失笑された経緯があります。これは古市さんがどうというよりは、落合さんの語る微妙にアカン内容に古市さんが付き合っていたようにも読み解ける感じもするのですが、一見仲の良さそうだった二人の間に何があったのでしょうか。
【参考】
またも“不祥事”、古市憲寿と落合陽一の対談が大炎上(週刊新潮 2019年1月31日掲載)
落合陽一さんのツイートで読み解けるのは「学位もないのに社会学者を名乗る古市さんのような人物がまとわりついてくるのは迷惑」という意味であって、そもそもそこまで深い関係でもなかったよ、ということなのでしょうか。
【参考】
twitter「落合陽一 Yoichi OCHIAI 午前3:13・2021年1月8日」配信
twitter「落合陽一 Yoichi OCHIAI 午後2:21・2021年1月8日」配信
一方の古市さんのほうはTwitterで荒れる落合陽一さんを完全にシカトするように無風の状態で、完全に取り合わない姿勢となっています。確かに佐村河内感のある落合陽一さんについていま下手に触っても良いことひとつもないですからね。炎上対策の基本、相手やネット民に燃料を与えないという古市さんの年季の入った頭脳プレー、感動しました。燃やさせておけばいいんですよあんなの、というのは賢いっちゃ賢い。
というのも、テレビで喋った古市さんの内容は以下のもので、落合さんからすれば「馬鹿にされた」と感じたのかもしれませんが、政治家とのかかわりを示唆する報道へのコメントとしてはむしろ穏当なほうで、別に違和感は何も感じません。
「政治家の代表とデジタルに詳しい人が対面でご飯しているんだなって、すごい笑っちゃったんですけど。それぐらい、それまでの慣習を変えるのがむつかしいのかなって思っちゃった」
ま、テレビとしては無難なコメントの類ですね。しかも、意見論評の域を超えていない。これを、落合陽一さんは「自分への揶揄」だと思ってしまって怒った。確かに、あてこすりにも見えるけど、事実に対する論評なのであれば社会通念上受け入れざるを得ない内容だろうと思います。
一方で、そんな発言をした落合陽一さんは、怒ったんだろうけど「社会学者という肩書の『クソ大学院生』」「犬」などと、確実に古市さん本人と同定できる内容で中傷しちゃっているんですよね。古市さんに対して「学位もないのに社会学者を名乗るな」という批判は正当なところもあるかもしれないけど、それはあくまでアカデミックな世界での話ですからね。
それをいい始めたら、落合陽一さんも開成中高卒なのに1浪して筑波大学で、博士課程も東京大学暦本研ですよねと指摘したい人たちが沢山出てきてしまいます。私個人は筑波大学はとてもいい大学だと思いますし、落合さんが筑波大学の学長補佐もされていた(2019年まで)わけですから、評価されているんでしょう。しかしそれは、古市さんだって政府系の懇談会のメンバーでもあり、古市さんに声をかけた人に泥を塗る行為でもあるわけです。アカデミックの世界では古市さんの未来にはもはや先がないので、頑張って文藝の世界で名を刻んでメディアの中で生き残ろうと懸命に小説も書いて芥川賞候補になったりしておるわけですよ。
どちらにせよ、総理大臣と飯を喰ったことは動静に出てしまいます。そのような政治的なトピックスで絡められないようにするには、総理含め大臣級とはネットでしかコンタクトを取らないとか、仮にアポイントの要望があっても秘書官経由に留めて直接の面談を避けて自分のキャラクターに政治性がつかないようにする、ということぐらいは心掛けたほうが良かったのではないかと思います。
そうでないならば、当然報じられた総理との面談をイジられるのは覚悟せざるを得ず、そして、それをテレビで触れられて激怒したり、それを報じた東京スポーツの記事を消させるアクションに出れば、逆に問題は拡散してしまいます。私も東スポの記事が削除されたことで、Twitter上で騒ぎになって初めてこの事件を知りました。ありがとう記者倶楽部。ありがとう東京スポーツ。「もっと器用に立ち回れば良かったのに」というつもりはありませんが、そのために落合陽一さんは芸能事務所の契約でテレビやネット媒体に出演しているわけですから、一言、事務所に相談しておけば良かったのにと感じるわけですよ。
この手の話は、30代論客がメディアに消費されずにどう生き残るかというポジション争いの側面もあるので「仲良く喧嘩していただきたい」と思いつつも、一方で双方脇が甘い人たちでもあるので大けがのないように慎むべきところは謹んで、うまく生き抜いていっていただきたいと願っています。
文:山本一郎