いよいよ22年卒の就活シーズンが始まる。3月に就職情報解禁、6月には面接解禁。

今秋の「内定」に向けて新卒学生にとっては、自らのファースト・キャリアとなる「新社会人」の舞台に向けて試練の時となる。もちろん就活生の子をもつ親にとってもコロナ禍のさなかで「不安」は大きいかもしれない。
 しかし、本当に不安になるべきことは、もっと本質的なところで「すでに」起きている。具体的には「東大卒」の学歴も通用しないルールで、いま「就活」は動いているのだ。高校生以上の子をもつ親御さんには必読です!



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◼︎東大ブランドでも平気で落ちるのが現在の「就活」



 将来何をやりたいか、何になりたいか。そう希望を膨らませた青年が社会人としての職業を得るための「出口戦略」は、従来は「学歴」で決まることが多かった。 



 すなわち、東大・京大・一橋・東工大・早稲田・慶応・上智を頂点とする「学校歴」の階層構造が存在し、どこの「大学に入学したか」による選別で社会人の第一歩(ファースト・キャリア)が決まった。 



 一流企業と呼ばれる大企業には有名大学の「属性」が物を言った。とくに現在、大学生の子どもをもつ「人口の多い」50代以上の世代の親にとって、「偏差値」という言葉が持つ、居心地の悪さと息苦しさは、そのまま自分の将来を予想できる指標となっていたことも確かであろう。それが人生の幸福への必要十分条件ではないとわかっていても。



 だからこそ我が子に「いい大学へ!」という思いは、親が子どもだった頃よりもさらに拍車がかかり、お受験の過熱デッドヒートをもたらし、「東大合格」が希望の職業——一流企業への「パスポート」のイメージへと慣習的に直結しているのかもしれない。



 しかし、いま、その「学歴」の方程式は崩れている。



 もちろん、就活の結果として学歴が高い大学生の就活の成功率はいまもまだ高いと認めたうえで、しかし、東大をはじめ、有名大学の就活生でさえも「お祈りメール(不採用通知)」ばかりで内定がなかなか取れない現状にあるという。



 すなわち一流企業への入社へのハードルが「異状」なほど高くなっているのだ。編集部は現在「就活」が、時代状況とともにどのように変化しているのか、取材を行った。



【就活戦線異常あり】ホワイトアカデミーの校長が語る東大生でも内定ゼロの現実! なぜ、いま子どもの就活に親の「協力」が必要なのか



「東大卒の看板と希望会社への就職は、いまや関係ありません」



 そう話すのは、兄弟ともに東大卒の経歴をもち、大手コンサルタント会社で人材戦略のエキスパートとして活躍した竹内健登氏だ。
 竹内氏は、現在、自らの就活の失敗と就職留年した経験をもとに企業人材戦略の道を歩み、就活コンサルタントとして就活塾「ホワイトアカデミー」を主宰している。





◼︎せっかく20年育てて東大にも入れたのに、なぜそんな会社に!



「私も弟も東大へ進学しましたが、ともに就活に失敗しました。両親は、中高一貫の私立に進学させ、しかも東大まで進学させたので、当然、一流企業から内定はもらえるはずだと思っていました。当時、私自身もそう考えていました。しかし、現実はそのような結果にならなかったのです。総合商社、都市銀行、大手メーカーなど名だたる一流企業を立て続けに受け、ことごとく落ちました」(竹内氏)



 竹内氏によれば、自身の就活失敗の理由は大きく二つだと振り返る。



 ① 企業から何が評価されるのか知らなかった
 ② 企業から評価される力を得る機会が、与えられていなかった



 就活に対するこの二つの「情報」への無知と誤解が、就活失敗の最大の要因だという。
 言い換えれば、就職活動とは、大学受験のように、単に学力があるだけで合格できないということである。ゆえに、一流大学に在籍していることが、そのまま一流企業合格にはならないということである。



「企業と学校との大きな違いは、企業は将来の会社の価値(利益)を生む人材を育てるという意味において新卒採用は将来への『投資』だということ。一方、学校では、一流大学に通う学生は、知識を学ぶ上では消費者であり、まだ『何者でもない人』です。企業にとって『採用(=学生にとっての就活)』とは、必要な人材を採用する『真剣勝負のミッション』なのです。そのため、その企業で『必要』とする評価基準とは何であるのか、学生側も真剣に希望する職種や当該企業の求める人材について知らないと太刀打ちできません。いま、本当に一流企業からの内定を取るのは難しいと思います」(竹内氏)
 
 竹内氏によれば、現在の就活の「手続き」、その用意すべくES(エントリー・シート)は一流企業ほど採用に慎重、真剣なため、就活生にとっては「気の遠くなるような」量を書かせ、さらに筆記試験、1~3次面接、ときには「圧迫面接(故意に難しい質問や、『なぜ』を問う前提質問)」を行うという。また就業機会としてのインターンシップ(企業体験)もこなせばならないなどの「経験」も必要となるケースもあり、現実的に大学生は、4年のうち2年生から「就活」を準備しなければならないほどになっている。
 本当に一部の優秀な学生は、3年生の秋には内定が出るほどの「青田買い」もあるとも言われる。卒業年次の内定ゼロの学生との二極化はたしかに進んでしまうだろう。



「親御さんが就活された当時より、はるかに、現在の大学生の就活は厳しくなっています。現在、就活生の7人のうち1人は『就活うつ』に患うとも言われています。ですから、この状況を乗り越えるには親御さんの力が必要となります。なぜなら、多くのご両親は会社組織で働いており、人材がどう評価されるのかについて、常識的な知見をすでに知っておられるはずですし、人事において何が評価されるのかについて身をもって経験されているからです」(竹内氏)



 では、この就活の厳しさの正体——現在の学生と親の世代では、いったい何が変わっているのかを見ていこう





◼︎就職戦線異状あり——親世代と現役世代の「就活」の違い





 就職戦線異状なし——「新人類世代」と呼ばれた50代以上の親にとって同名の映画のタイトルを思い出したのではないだろうか。

バブル期の超売り手市場の学生の就活をめぐるドラマは、そのハッピーエンドに「のどかさ」を覚えるほどだ。しかし、現在は、もはやそんな余裕を大学生に与えない厳しい環境にあると言えるのだ。



 つまり就職戦線異状あり。



 現在の就活環境は、人口減少にともなう需要縮小(少子高齢)社会にあること。さらに、物・サービスの生産性が低くなる一方、株価高を続ける「資産」格差が顕在化されるなかで、2000年代以降に産まれた「デジタルネイティブ(ゆとり・さとり)世代」は、IT情報通信の効率化の恩恵を享受すると同時に、事務系の仕事はAIに、単純労働は、外国人労働者に代替されるため、そもそも「働く」居場所、その椅子自体も減少している。



 しかし、当時の1990年~2000年に新卒だった就職氷河期世代(現在40代)の大卒求人倍率0.99(2000年)に比べ、コロナ禍が直撃した昨年度の1.53と一見、「売り手市場」に見えるこの状況をどう解釈すればよいのか。現在の就活の厳しさの真実とは何であるのか。



「いま50代以上の親御さん世代と現役世代のお子さんの就活の本質的違いは、学歴や志望業界にかかわらず、一流企業への競争が激化しているということです。さらに一流企業に入社できる母数自体(=採用枠)もはるかに少なくなっているのです。これが著しく違います」(竹内氏)



 竹内氏によれば、就活の競争激化の要因には3つあるという。



 【就活競争激化の要因】 
  ① 就活の自由競争化
  ② 大学生の激増
  ③ 「求める人材」のレベル上昇



「親御さん世代の就活は、学歴(属性)での選別とゼミなどのコネなどで応募者が限定的でありました。しかし、お子さんの世代は原則、自由化、すなわち新卒就活サイトから自由に応募できるようになりました。

これは文系だけでなく理系も同様で、今や教授からの推薦はどんどん減っており、新卒サイトからの公募形式を採用する企業(トヨタ自動車株式会社など)が増えてしまいました。結果、一流企業と呼ばれる人気企業には応募者が殺到します。例えば、過去、高倍率(人気)企業50社のトップであった明治(食品・水産業)は4つの採用枠をめぐり、約1万1000人、倍率は2750倍(『就職四季報』2016年版)を記録したこともあります。また大学・短大の進学率も、約6割(58.6%「学校基本調査」文科省2020年12月25日」)です。20%近く増えました。採用枠少なさに比して就活生が多いということは、一流であるほど企業の倍率が上がり、それに伴って内定する人材のレベルも上がるということです。そうなると就職活動は、人生の一大プロジェクトと、結果的になってしまうのです」(竹内氏)



 人生のファースト・キャリアとなる就活はもはや、大学受験どころではない状況になっているのは確かなようだ。





◼︎「子育ての総仕上げ」としての就活——不安から安心へ



 では、大学生を子にもつ親として、子供の就活とどう向き合えば良いのだろうか。「失われた30年」を現在進行形で生きる大学生は将来「自由に生きる」選択肢すらもはや守れない可能性も懸念される。



 例えば、現在40代の就職氷河期世代への政府・厚労省による「活躍支援プラン」などの政策は、中高年(40歳~64歳)の社会的「引きこもり」が61万人(内閣府全国調査、2019年)を超えたことなども背景に立ち上げられている。



「親御さん世代の就活の経験知識と現在直面するお子さんの就活とでは、初期条件が変わっています。繰り返しますが、就活における競争のとんでもない激化です。

お子さんの就活へのいたずらなアドバイスは時として『毒』にもなります。しかし、私は、お子さんの就活について親御さんが今こそ親身にサポートするのが一番だと考えています。お子さんを育て、接し、ともに同じ屋根の下で生きてきた時間も含め、親御さんはもっともお子さんの価値観を一番理解しているからです。そこで、私は親御さんに最後の子育ての総仕上げとしてお子さんの就活をともに乗り越えていくことを提案しています」(竹内氏)



 就活相談に来る竹内氏を訪れる親のなかにはは、「子供の就活を甘く見ていた」「今の就活がこんなに厳しいとは思わなかった」と述べる方が多いという。そして自らの会社人としてのファースト・キャリアの重要性を、親の立場から再認識する方も多いという。



 では、就活生を子にもつ親として、子供の就活の不安に対してどのような具体的な対策を講ずればよいのか。
 次回は、親は、この厳しい時代に就活をする子に対して、具体的にいつ、何をどう準備すればよいのか。安心をもちながら「親子で取り組む就活の進め方」をお送りします。
(第2回目に「つづく」)



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