乃木坂46出身のアイドルタレント・堀未央奈の体重公開がネットをざわつかせた。



 9月下旬、自身のSNSでファンからの「身長体重、教えてください! 目標にしたいです」という声に回答。

「39.3」という数字が表示された体重計の画像に「162センチです」というコメントを添え、投稿した。



 また「わたしは胃下垂で」と太りにくい体質を説明したうえで「筋肉もっとあるときは45キロだよん」と、その状態より5キロ以上痩せていることを告白。「みんなは身長にあったBMIを調べてダイエットとかしすぎないでね」というアドバイスも付け加えた。



 では、以前より痩せたことを本人がどう思っているかというと――。「なんでそんなにスタイルがいいんですか?」という声に対し、こんなコメントをしている。



「食事、程よい筋トレ、日々の生活の意識を見直したらずっと45kgくらいだったのがいい感じに痩せて脂肪が減りました」



 つまり「39.3キロ」という数字もまんざらではなかったようだ。



 この体重公開は、ネットニュースにも取り上げられた。それくらい、アイドルの体型はファンの関心事なのだ。



 2018年には、当時AKB48だった宮脇咲良が注目を浴びた。42.8キロを示した体重計の写真をSNSにあげ「プロフィール公開で体重46キロになってたけど、総選挙に向けてここまでダイエット頑張ったよ」とコメント。さらに「朝ごはんだけしっかり食べるダイエット、ありかも…(選挙前の期間は緊張であんまり食べられなかったのもあるけど)」と痩せた経緯を綴った。



 ちなみに、身長は163センチなので、こちらもなかなかストイックな自分磨きだ。

そのおかげもあってか、選抜総選挙では前年度からひとつ上の3位に飛躍。直後に誕生した日韓合同アイドルグループ「IZ*ONE」のメンバーにも選ばれ、活動の幅を広げた。



 ほかにも、高橋みなみや板野友美、田野優花、島崎遥香といった面々の体重公開が話題に。AKB系や坂道系はもとより、ハロー!プロジェクト系やそれ以外のアイドルたちにも体重を公開する人が時々いる。



 その多くが、30~40キロ台の範囲なのは、それくらいがアイドルにふさわしい、あるいはアイドルならではの体重とされているからだろう。ただ、なかには、発育途上の小中学生でまだ20キロ台の子がいて、ファンを驚かせたりもする。逆に、50キロ台、60キロ台のアイドルが公開するのは、太ったことを自虐ネタにしようとか、これからダイエットをするにあたって、といったパターンだ。





■華原朋美がアイドル時代は43キロだったと告白



 これとは別に、過去を振り返るなかで公開されることもある。尾形春水や榊美優、あるいは広末涼子などのケースがそうだ。また最近、テレビでふたりの元アイドルが自身の体重変化に言及。奇しくも同じ11月11日のことだった。



 まず「ダウンタウンDXDX」(日本テレビ系)で華原朋美がアイドル時代は43キロだったと明かし、現在は70キロまで幸せ太り(?)したと告白。

その直後「アウト×デラックス」(フジテレビ系)で加護亜依が辻希美と「W(ダブルユー)」を組んでいた頃、63キロまで太ったと語った。それが未成年喫煙による謹慎期間には37キロまで減ったという。



 何十年も前の体重を今さら知らされてもという感もなくはないものの、当時の姿に重ね合わせるといろいろ興味深い。具体的な数字はやはり、関心を高めるのだ。なぜかといえば、女性芸能人、特にアイドルの体重はエンタメ情報のひとつだからだろう。



 それゆえ、昔はプロフィールにも明記されていた。スリーサイズもまたしかり。いわゆるタレント名鑑的な本にも、生年月日や出身地とともに必ず掲載されていたものだ。



 筆者はもっぱら、瘦せ型のほうに興味があるので、浅丘ルリ子の35キロとか、松本伊代の38キロ・バスト72センチといった数字に萌えた。浅丘などはテレビや雑誌でも「いちばん太っていたときで40キロ」というパワーフレーズを自ら繰り返していたし、メディアでは高見山や小錦のような巨漢力士の重さを強調するために「浅丘ルリ子○人分」のような単位としても使われていたほどである。



 一方、ぽっちゃり型のあるある的なエピソードも微笑ましい。ウエストを細めに公表しすぎていたため、その数字を信じたスタイリストが用意した衣裳が入らず、撮影現場で困った、などというものだ。



 しかし、平成に変わったあたりから、公表される体型データは身長だけになっていった。そこにはさまざまな事情がありそうだが、そのひとつが、外見より中身が大事という誤解だ。体重やスリーサイズは、外見を表す指標のひとつなので、要らないというわけだ。



 ただ、芸能人の場合、外見が大事なのはいうまでもない。にもかかわらず、そこに関連した情報を出さないのは、ファンの愉しみを奪い、芸能の面白さを減らすことになる。



 その背景には、ポリコレの悪しき影響もあるのだろう。ポリコレは「政治的正しさ」と訳されるが、芸能的にはまったくもって正しくない。いや、政治的にもかなり間違っていて、世の中を息苦しくつまらなくしている。



 そもそも、体型データを隠そうとすること自体、逆にとらわれ過大視している証拠なのではないか。その人間を形成するほんのひとつの要素にすぎないのに、体重やスリーサイズだけで魅力が決まると思い込んでいるのだろう。





■くみっきーこと舟山久美子は「ポップティーン」のモデル時代、37キロ(身長155センチ)



 もっとも、痩せ型の芸能人の体重公開には、一般人の瘦せ願望を煽ると懸念する向きもある。それを否定するつもりはないし、実例も見てきた。

特に印象的だったのが、くみっきーこと舟山久美子による影響だ。



「ポップティーン」のモデル時代、37キロ(身長155センチ)までダイエットして、誌面でも大きく取り上げられた。カジュアルなファッション誌の人気者という身近さからか、彼女に憧れて痩せようとした女の子はかなりいたように思う。



 ただ、それも自己責任だ。芸能人が体重を公開するのも、一般人が憧れて痩せようとするのも自由というほかない。もともと、善悪の問題ではないのである。



 かと思えば、体重公開絡みでその当事者が激痩せしたこともある。2010年、ももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)がメジャーデビューする際、その条件として「(身長-100)×0.8」以下の体重をクリアすることを設定。デビュー2ヶ月前の公開体重測定において、高城れにだけがそれを0.8キロ上回ってしまったのだ。



 他のメンバーからは、



「大丈夫、絶対クリアしてくれます。6人でデビューします」



 などと励まされ、実際、6人でのデビューが実現。ただ、高城は頑張りすぎたのか、数ヶ月後には激痩せを心配されるほどになった。



 それでも、この一件はグループの認知度を高めたし、高城もその後、激痩せ状態ではなくなり、今も元気に活動している。ももクロ自体、息の長い活躍を続けていることを考えると、この体重エンタメ化作戦は成功だったといえる。



 冒頭で触れた堀未央奈にしても、AKB系や坂道系の出身タレントが増え続けるなか、ネットニュースになるほどの注目を浴びられたわけだ。また、乃木坂がルックス偏差値の高さでブランド視されるのも、こうした自分磨きをひとりひとりが怠っていないからだろうとうなずけるものもあった。



 そういえば、乃木坂は一昨年「みんなの献血」キャンペーンに起用され、堀や齋藤飛鳥、山下美月といった5人がイメージキャラクターを務めた。その際、全員が献血未経験であることが話題になったが、ネットでは「体重制限に引っかかるメンバーもいるのでは」という声も聞かれたものだ。たしかに、30キロ台では献血ができない。ある意味、2年前の疑問の答え合わせができた気分だ。



 とまあ、体重とは単なる数字ではない。芸能界を生き抜くうえで「武器」にもなるし、体型データがあまり公開されなくなった現代では、その効果も大きい。そのかわり、炎上したり、その数字にとらわれて病んでしまったりというリスクもあるが、それでもなお、武器にする勇敢さはなかなか好もしいものでもある。



 そんなせっかくの武器をほとんどの人が捨ててしまうのはもったいないし、体型データの公開が当たり前な時代の再来も期待したいものだ。



 もちろん、歌や芝居といった仕事一本で生き抜いてやるという生き方もアリだろう。ただ、プライベートも体重も、自分のすべてを売りにして、という生き方もまた、芸能人らしさなのである。





文:宝泉薫(作家・芸能評論家)

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