小3になる息子が俺の財布から1万円を抜いていたことが、先日発覚した。
その週は何軒もの医者をハシゴし(中年あるある)、数千円の診察料と薬代を支払った記憶があった。
![ポケモンカード欲しさに親の財布から1万円盗んだ小3の息子 どうやって俺は子供と向き合ったか?【村橋ゴロー】](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FBestTimes%252F9f%252FBestTimes_02771407%252FBestTimes_02771407_2.jpg,quality=70,type=jpg)
まだ3歳だった彼は「ぼく、大きくなったらパパとけっこんするー」とよく言ってくれていた。結婚の意味もわからず「大好きな人とするもの」と捉えていた彼は、よくそう言ってくれいた。そんなかわいい息子が、俺の金をパクるなんて。
俺もそうだった。俺も親の財布からよー金を抜いていた。おふくろのがま口、おやじの長財布、そしてウチは商売をしていたので現金のたんまり入ったレジ。そこかしこにゲンナマがあり、小3ぐらいから高校生になるまで、よーパクった。罪悪感はあるにはあったが、それよりも「何とかしなきゃ」という思いのほうが強かったと記憶している。欲しいものはあるが親は買ってくれない。
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ひるがえって、我が愛しの息子である。
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いや、そんな理解を示している場合じゃないんだよ、俺氏。あんたの息子が、あんたの財布から金を抜いたんだ。それ相当の説教をしないと、愛しい息子が足を踏み外してしまうよ。そうだ、俺は親だったんだ。慌てて今回のことを息子に諭そうと、文言を頭に浮かべた。何て叱りゃいいんだ? 感情的に怒るのではなく、いかに説教すれば彼の心に響くのか。さめざめと泣いて反省してくれるのか……わからん、そんなん知らん!習ったことない! とりあえず「親の金を盗む り方」とググってみた。こっち(親)だって必死なのだ。えらいもんでスマホは回答例を示してくれたが、ピンとこない。AIのくれた答えをパクるのをやめ、息子と向き合った。
「あのな、お父さんやお母さんの財布からお金を盗むってことは、一番しちゃいけないんだ。お父さん、ほんとキツイ思いしてお金を稼いでるんだ。それを盗らないでくれ」
俺は51にして、時給1200円のバイトで食っている。某宅配チェーンに籍を置き、雨風の日もバイクを運転し、客に食べ物をを届けている。客に罵られたり、台風の日には死ぬ思いもする。それに耐えながらなけなしの金を稼いでいる。だから盗らないでくれ。本音だ。そして、続けた。
「あのな、正直言うと、お父さんもお前と同じくらいの年のころ、親の財布からお金を盗んだことがあるんだ。だからお前の気持ちも、お父さんわかるんだ」
え? ほんと? という表情を浮かべ、話に興味を覚えたのが見て取れた。「共感」という話法だ。続ける。
「でもな、それを2回3回とやっちゃダメなんだ。一回はしょうがない。だからもう盗むのはやめてくれ」
高校生になってもオヤの金をくすねまくってたヤツの、どの口が言ってるの? という話だが、でもそれが親の仕事だ。俺がクズだったからお前もクズに育ってもNO問題! というわけにはいかないのだ。
「何かほしいものがあったら、ひとりで悩まないで俺に相談してくれ。すぐ買ってあげられないかもしれないけど、何とかするから。だから俺に相談してくれ」
そう、何かほしいものがあっても稼ぐ術を持たない子どもは、その小さな胸を痛めて悩むのだ。その結果「やむにやまれず」「補充」するのではなく、俺に相談してほしい。これは瞬時に口から出た本音だった。
子どもは天使じゃない。生まれたときはもちろん天使だったが、汚くも素晴らしい世界に触れ、少しずつ人間になっていく。天使として生まれた息子は9年間の生のなか、悪事を覚えた。そんな季節を迎えただけなのだ。その成長の季節が夏なら冷たい飲み物を手渡すし、寒い冬ならマフラーをその首にそっとかけてあげる。俺は大した人間じゃないから、そんなことしかしてあげられないけど、愛してることだけはわかっていておくれ。どんな悪事をしようとも、そりゃ最初は思いっきり叱るけど、最後は守ってあげるから。死んでもお前の見方だから。
併せて、通わせているくもんを、ここ3ヶ月ほど無断欠席していることが発覚した。行きたくないから、行かないのだろう。彼はどうしたいのか? そして俺はどうすればいいのか? 彼はいろいろと、揺れる季節を迎えている。
それは、やっと思春期の、オトナへの入口にたどり着いただけなのだ。これからは、もっともっと大きな敵と戦わなければいけない、それが「対エロ」だ。男の子にやってくる、身も心も侵食されてしまうエロとの戦い。そんな季節を彼が迎えたとき、xvideosがいまだ右手の友達な俺はどう、しれっと真っ当なことを言えばいいのか……子育て、怖っっっわ!!
文:村橋ゴロー