いま、首都圏を中心に闇バイトが実行犯となった強盗事件が相次いでいる。ここでは直近の強盗事件を、その首謀者「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」にちなみ、「トクリュウ型強盗」と表現する。
■女性や高齢者がターゲット。在宅でもお構いなし
まず、トクリュウ型強盗の特徴について、従来型との違いを踏まえて解説してもらった。
「これまでの侵入盗は、空き巣が中心でした。捕まるリスクを合理的に考えて、お金のありそうな家を事前に調べ、居住者のいない時間帯を狙っていました。それが昨今のトクリュウ型強盗では、実行犯にバールを持たせ、強引に家に入らせます。音が出ても、在宅でもお構いなしです。そして居住者を暴行し金がある場所を聞き出しているようです」
今回の強盗は「指示役自身のリスクが少ない。ですのでとにかくお金をとってこいと強引に犯行に及ばせます」。実行犯が捕まったとしても、匿名のメッセンジャーを使って闇バイトを動かしている指示役は足がつきにくい。個人情報という弱みを握られた実行犯も言われるがままに動いてしまう。
山田氏は直近の事件報道から、被害にあった事例をデータベース化した。そこから傾向が見えてくるという。
「私が調べた戸建て住宅の事例では、被害にあったのはすべて高齢者や女性が住んでいる家でした。力の弱い方を明確にターゲットにしています。逆に20~30代男性がいるような家は被害にあっていませんでしたね。時間帯も、深夜から早朝に集中していました。従来型の侵入盗と違って、留守ではなく在宅の時間帯を狙ってきます。居住者を暴行し、金品のありかを聞き出すためでしょう。立地に関しては、奥まった場所や、周囲に住宅のない閑静な場所にある家が被害にあっていました。さらに侵入場所を調べますと、玄関からではなく、勝手口や出窓から、という事例が多くなっていました」
あくまで報道映像からの推測という前提で、被害にあっている家の窓ガラスはどれも網入りガラスか普通ガラスで、防犯ガラスは確認できなかったという。ちなみに、網入りガラスは普通ガラスと同等に割れやすいので注意が必要とのこと。
■開口部強化+「アラームディフェンス」で音に気づけ
ここからどのように家を守ればよいか解説してもらった。
一つが「ゾーンディフェンス」。家の奥に侵入者を近づけない、来訪者が入るアクセスゾーンから奥の見通しを確保し、侵入があった際に周囲の人にも気づいてもらえる状態に保つ、というもの。ただ、これは今回のトクリュウ型強盗には効果が薄い。周囲と孤立した家が狙われており、例え周りに気づかれたとしても、指示役に脅されている闇バイトたちは逃げるという選択肢を選びにくいからだ。
もう一つは「ソフトディフェンス」。カギを全てかけ、シャッターを閉めることを習慣にする、といった基本のきである。また今回の強盗では、訪問販売等を装った下見で狙いを定めた可能性があり、インターホンや防犯カメラによる画像記録も狙らわれない効果が期待できるようだ。
3つ目の「ハードディフェンス」。これは本来、開口部を強化して時間を稼ぎ、近隣や通行者の見守りを引き出すというものだが、「今回の強盗対策ではこの“開口部強化”により壊すのに時間がかかり、壊し続ける音で自分が気づき110番通報ができる」と話す。
そして、今回のような強盗対策に新たに加えたいのが「アラームディフェンス」。「ガラス破壊や窓の開閉で大音量のアラーム音が出て、その音に自分が気づき、部屋に鍵をかけ110番通報する。
なお、開口部強化では防犯性能のお墨付きがついた「CP部品」を山田氏は推奨する。
「これは、所定の防犯試験で5分以上侵入を防げる、と認定された防犯性能の高い部品のことです。CP部品を使うことで時間を稼ぎ、侵入者に音を出させ続けることができます」
先ほど解説してもらったように、侵入してくるのは正面玄関からではなく、勝手口や出窓から。窓ガラスの強化やアラームの設置は必須だ。
「フィルムを貼ることで、ガラスが割れにくくなり、時間を稼ぐことができます。フィルム自体は通販やホームセンターでも買えますが、防犯性能を考えると、専門店で施工してもらって、CPマークを貼り付けてもらうのがベストです。マークがあれば、それ自体が強盗犯を遠ざける効果もあります」
■よくある「押し付け止め補助錠」は頼りない
次に補助錠も用意したい。これにより、強盗犯は2箇所を突破しなければならなくなる。写真のようなタイプのものはすでに使っている家庭も多いかもしれないが、これはあまり防犯効果が期待できないという。
「実際にやっていただくとわかりますが、押し付けて摩擦で止めるタイプは、力づくで動かすと開けられてしまうのですよ。サッシも傷つきます。代わりに突起タイプの補助錠をオススメします。
■家に入られたら「とにかくこもる」
それでも強盗に家に入られてしまったらどうすればいいのだろうか。立ち向かって追い返すという選択肢もあり得るのだろうか。
「それはやめてください。相手は体力のある若者で、複数人で凶器を持ってやってきます。空手の有段者という方でない限りとても太刀打ちできないと思います。まず狙われないように、侵入者と鉢合わせしないような準備をしっかりとしていきましょう。それでも家に入られてしまったら、寝室などに逃げ、カギをかけて、とにかくこもること。通報して警察が来るのをじっと待ちましょう」
最後に、離れて住んでいる実家の高齢の両親が心配、という読者も多いだろう。まさしく狙われやすい家でもある。被害にあわないために、何と言っておくべか。
「3つ絞ってお話します。まず、訪問販売はじめ不審な訪問者は家に入れないように伝えてください。
取材・文:BEST T!MES編集部