1995年に主演した映画『Love Letter』が興行大ヒット。近年は女優として大活躍し続けていた中山美穂さん。
◆無口で人見知り…なのに歌は可愛かった
中山美穂の妹・忍がデビューしたとき、ある雑誌の編集部で若手の記者が「無口で取材しづらい」とこぼしていた。しかし、ベテランの記者いわく「お姉ちゃんはもっとしゃべらなかったよ」。実際、デビュー当時の美穂に泣かされた(?)ことのある身としては、得心させられたし、ドラマ『毎度おさわがせします』であれだけの芝居を見せた子が、じつは無口で人見知りというのは、新鮮なギャップとして今も印象的だ。
そんな性格は生育環境によるところが大なのだろう。幼い頃に両親が離婚し、働く母の代わりに妹たちの面倒を見たりしなくてはならず……。世に出たとき、まだ14歳とは思えない大人びた色気をすでに感じさせたのも、人生経験の賜物と言えるかもしれない。
そういえば、レコード大賞の最優秀新人賞を受賞した翌日(すなわち、デビュー翌年の元日)受賞者が一堂に会する番組があり、新人賞の5人(いずれも女性)が父親と組んでゲームを行った。美穂だけは、五木ひろしが代役を務め、他の4人との対比がちょっと残酷で、そのぶん愛しくも思えたものだ。
そう、男には多かれ少なかれ「不幸萌え」というものがあり、それが彼女の芸能活動にはプラスに働くことになる。小泉今日子や内田有紀といった、同じく離婚家庭で育った娘が所属するバーニングプロが、事務所ごと傘下に取り込む形で彼女を引き抜き、全面的に後押しするようになったということも伝えられていて、これにより、そのポジションはますます磐石となった。
◆喉の調子を崩し、声の伸びや音程に支障を来たした過去
歌手としては当初、デビュードラマのイメージに引きずられていた感もあったが、映画主題歌『ビー・バップ・ハイスクール』で本人もスタッフも力が抜け、竹内まりや作品の化粧品CMソング『色・ホワイトブレンド』で高い評価を得る。
さらに『クローズ・アップ』から『JINGI・愛してもらいます』『ツいてるねノッてるね』『WAKUWAKUさせて』『派手!!!』『50/50』『CATCH ME』と続いた7作品では、可愛さを残しつつもノリのよさに徹した独自のサウンドを展開。そのうち、小室哲哉作品の『50/50』は、90年代のアイドル・華原朋美が生まれて初めて買ったレコードでもある。ふたりが接近する呼び水のひとつになったという意味で、後世にも影響を与えた1曲というわけだ。
◆中山美穂の激カワレコードジャケットとともに
シングルとしては初のバラード『You’re My Only Shinin’ Star』を歌い上げたあと、喉の調子を崩し、声の伸びや音程に支障が生じたのが惜しまれるものの、80年代後半では一、二を争うアイドルシンガーといっても間違いない。


文:BEST T!MES編集部