「高血圧の人が塩分を1日5・7g減らせば、最大血圧が4・4㎜Hg下がる」というデータがある。東海大学医学部名誉教授の大櫛陽一氏が、高血圧と食事の関係について、驚きの見解を語る。
■「減塩」が万能薬なわけではない
Q 高血圧改善の食の基本はやはり「減塩」なのでしょうか?
A 高血圧の人では効果が報告されています
たとえば秋田県は塩分摂取量が多くて脳出血も多い、と昔はいわれてきました。しかし塩分が多い食事というのは動物性食品や新鮮な野菜などの少ない、ご飯と干物、漬物に味噌汁という食事なのです。
塩分が多い食事というのは、全身をめぐる血管にとっては栄養状態が貧しいものだったということです。ですから塩分を減らすということは、おかずを多く食べなければいけないということになります。
塩分が少ないと、ご飯をあまり多くは食べられませんね。ご飯が進むおかずは、だいたい塩分が多いのです。
では、動物性食品を多く食べていて、かつ塩分が多いとどうなるか。これは個人差があり、腎機能の弱い人や、塩分感受性の強い人は、塩分が多いとそれによって血圧が上がります。このように「高血圧の人が塩分を1日5・7g減らせば、最大血圧が4・4㎜Hg下がる」というデータがあります。
ただし、全員にあてはまることではありません。普通の人は塩分を多く摂取しても腎臓から排出されていきます。
■血圧上昇の元凶は糖質かもしれない
Q 糖質と血圧にはどのような関係がありますか?
A 糖質は肥満の主原因で、血圧を上げます
日本人はカロリーの約60%を炭水化物から摂取しています。そして問題は、それが余ってしまうことにあります。
クルマ社会や交通機関の発達により、日常生活で歩く距離が昔よりも減ったこと、座って行う仕事が多くなったこと、家事でも電化製品が増えて身体を動かす機会が減ったことで、どうしてもグルコースが余り、肥満になりやすい。と同時に、血圧が上がってしまう人もかなり多いのです。実際、血糖値が50㎎/㎗低下すると収縮期血圧は10㎜Hg低下するというデータが出ています。
以上のように、高血圧と糖質との関係は、「糖質が多くなることで肥満を引き起こし、それが血圧を上げてしまう」というものですが、実はもう1つのメカニズムがあり、そこには水分が関係してきます。
血液中に塩分が多いと、それを薄めるために水分が入ります。この現象と同じように、血液中に糖分が多くなっても、それを薄めるために水分が入ってきます。その結果として血管内の内容物が増えて、血圧は上がることになります。こちらはすべての人に共通してあてはまるメカニズムです。
また糖尿病の人の場合、ほとんどは降圧剤が処方されていますが、不要です。
文:大櫛陽一
〈『長生きしたければ高血圧のウソに気づきなさい』より構成〉