国民は騙されたのか、それとも政府が見て見ぬふりをしてきたのか――。
“日本初”を謳いながらオープンした巨大テーマパーク「ジャングリア」が、今、国家規模のスキャンダルに発展しようとしている。
◾️「唯一無二」は大ウソ? 誇大広告のオンパレードに消費者庁は沈黙
開業前から「世界最高の体験」「日本初のアトラクション」と豪語していたジャングリア。その実態は、故障続きのアトラクションと数時間待ちの地獄絵図。消費者の期待と現実の落差は尋常ではない。
しかも、景品表示法が禁じる優良誤認・おとり広告・ステマの三重奏が横行していた疑いが濃厚だ。
「『一日中楽しめる!』という広告を信じて来たのに、午後2時で主要アトラクションは全滅。詐欺じゃないですか?」(30代女性)
消費者庁は「不実証広告規制」という強力な権限を持ちながら、なぜここまで放置してきたのか。ステルスマーケティング対策も「10月施行」などと言い訳している場合ではない。SNS上には、報酬付きPR投稿と疑われる“絶賛レビュー”が不自然に拡散されている。
政府よ、本当に「知らなかった」で済むのか?
◾️「チケット代返せ!」…泣き寝入りするしかない消費者
チケット代8,800円。家族で行けば数万円。
にもかかわらず、アトラクションにはほとんど乗れず、炎天下で何時間も待たされる――そんな悲鳴がSNSに溢れている。
しかし現行制度では、被害者が個別に訴訟を起こすのは現実的ではない。
だが希望はある。特定適格消費者団体による「集団的被害回復訴訟」。あの「葛の花事件」では、表示違反を契機に返金が実現した。ジャングリアにも同様の展開があり得る。そして鍵を握るのは――消費者庁の「認定」だ。
◾️システム障害は常態化、返金拒否は規約トリック!?
ジャングリアでは、予約・決済・入場・アトラクション案内すべてが“システム依存”。だが実際には、サーバーダウン、通信障害、QRコード読取エラーが連発。
驚くべきはその対応。
利用規約第9条1項には「システム障害によりサービスが提供できない場合、当社は一切責任を負いません」との一文が。【注】
これは完全にアウトだ。
消費者契約法では、債務不履行に対する損害賠償責任の「全面免除」は無効。
経産省よ、どこを見ていた? DX推進だのガイドラインだのと言っても、現場がこれでは話にならない。
【注】
<利用規約第4条2項には「本パークの各施設、各アトラクション及び各サービスの利用条件、営業時間、営業内容及び休止情報等は予告なく変更する場合があります。」との一文がある。
さらに、第9条1項には「当社は以下のいずれかの事由が生じた場合、ゲストに事前に通知することなく、当社が必要と判断する期間、本パークの全部又は一部の運営を中止、中断、休止、変更、運営時間の変更(短縮等)、入場の制限又は臨時休業を行えるものとします。
安全上、システム上、各施設設備やインフラについて保守を行う場合
天災地変、火災、停電(計画停電を含みます)、交通機関の運休等により本パークの運営が困難になった場合
感染症のまん延、行政庁からの営業の縮小又は中止の要請、その他行政指導、当社の責に帰さない事由により本パークの運営が困難になった場合
その他当社が前各号に準じる事由が生じたと判断した場合」
第9条2項には「当社は、前項に定める各事項によりゲストに損害が発生した場合、当社の責めに帰すべき事由によらない損害については賠償責任を負わないものといたします。」と書かれている。
◾️安全対策は「お任せ」? 雑踏事故の危険性に警察は何をした?
来場者が一日で5千人~1万人を超えることもあるとするジャングリア。なのに雑踏警備は、民間の“バイト警備員”に丸投げか。
もし事故が起きればどうなるか――。誰もが2001年の明石市民花火大会での雑踏死傷事故を思い出す。11人が死亡、警察と主催者が業務上過失致死で起訴された、あの事件だ。
「主催者の自主警備が原則」という政府の言い分は通用しない。むしろ、原則だからこそ警察が計画段階から綿密に介入すべきだ。
明石の教訓を、またも無駄にするのか?

◾️万博は介入、ジャングリアは放置? 政府のダブルスタンダード
大阪・関西万博には、政府が総力を挙げて「安全対策」に取り組んでいる。法律まで作り、専用組織まで設けた。
だがジャングリアは?
・年間数百万人の動員予測
・通信網、交通網への深刻な影響
・SNS上での世論誘導
・未成熟なシステムによる社会的リスク
それでも「民間事業だから関知せず」――これでは政府が言う「安全安心社会」は空文句だ。
国会では、関係省庁の縦割り行政の弊害を徹底追及すべきだ。内閣官房が指揮をとり、横断的な監督体制を構築すべきではないのか?
◾️問われるのは「放置か?共犯か?」
消費者庁、警察庁、経産省、総務省――。ジャングリアの惨状を知りながら、誰も「止めなかった」のはなぜか?
“国民を守る”という名目で巨額の予算と権限を与えられている政府機関が、その責務を果たさなかったとすれば、もはや「放置」では済まされない。「共犯」と呼ばれても仕方ないのではないか?
政府は今こそ、答えなければならない。
なぜ、ここまでの問題を見逃したのか?
そして国民は、今こそ声を上げなければならない。
「責任を取らせろ」「二度と繰り返すな」と。
文:林直人