AV女優兼作家の紗倉まなさんと、元AV女優で文筆家の神野藍さんの対談、第3回。
2人の縁を明かした第1回、愛犬トークで盛り上がった第2回に引き続き、今回の話題は「家族」。
◾️実家には5年帰っていない
神野藍(以下、神野)「私、紗倉さんのお母様がめっちゃしゃべるっていう話にすごいうなずいちゃって」
紗倉まな(以下、紗倉)「あ、神野さんもですか!?」
神野「うちの母親もそうなんですよ。脱線し始めたら止まらなくって」
紗倉「本を読んでる感じだと、冷静沈着なお母様なのかと思ってました」
神野「全然です。パワフルで、永遠思春期みたいな母親です。私の学校行事に来ては私の友達と仲良くなる、みたいな。逆に父親は頑固で、オヤジ、って感じです」
紗倉「『私をほどく』でお兄様の話とかも書かれていたじゃないですか。子どもって、家庭内のバランスを取らざるを得ないというか」
神野「そうですね、自分がどこに味方すればいいのか……っていうところで。私は下だったので、余計にいろいろ見ちゃうというか。こうやると怒られないんだ、こうやると親は困らないんだみたいなことを気にしてしまうタイプの子どもだったのかなと思っていて。うちははたから見れば絵に描いたような仲良い家族だったと思うんですけど、今思い返せばいろいろあったなぁ、って。そういう経緯もあって書いてます」
紗倉「お兄様も優秀で、神野さんもほとんど怒られたことなく。
神野「それだったから余計、AVデビューしたのを話した瞬間に、落差が……」
紗倉「想定外すぎますよね(笑)」
神野「今も、家族とは折り合いがついてなくて……母親とはけっこうついてるんですけど」
紗倉「話し合ったりはしたんですか?」
神野「いや、全然話し合ってなくて。5年帰ってないんです。徐々に徐々に、時間で解決してってるって感じがありますね。私も言いたいことは言ったし、謝らないといけないことも謝ったし、もうどうすることもできないから、あとはボールを投げるじゃないですけど」
紗倉「ちょっと寝かせる期間が必要ですよね。書いたものは、ご家族は読んでいるんですか?」
神野「この本に関しては、母親に言ったんですよ。向こうとしては、応援はしたい、けど受け入れられる話ではない、手放しに応援はできない、ぐらいの気持ちで。今回もAV女優だった頃の話をメインで書いていて、今後どこへ行っても元AV女優っていうのがついて回る、っていうのが、やっぱ母親にとっては苦しい。から、今後筆一本で認められるようになったら、その時は何でもする、って感じなので。私も私でいろいろ考えてるように、母親も母親で立ち止まらず考えてるんだなっていうのがわかって」
紗倉「それは逆を言えば、たとえばこの先、母親の納得するような、って言ったら変かもしれないですけど、別のジャンルの作品を作り出さなきゃいけないな、っていう強迫感があったりするんですか?」
神野「若干やっぱりありますね。心のどこかで、子どもの頃のいい子ちゃんが抜けてないのはもちろんあるので。ふとした瞬間にやるせなさというか、また私こうやって考えてしまうんだ、みたいな。AV女優になった時ぐらい、バーンとはねのけられればいいのに、また考えるようになってしまったなっていうのはあるんですけど。
◾️商店街で追いかけられて…
神野「紗倉さんは、私と全然違いますよね」
紗倉「私はもともと家庭内が……『たまたまその場に集まった人たち』みたいな(笑)。自由人3人集めちゃった、みたいなメンバー構成だったので。母親は、ある種で陽キャだと思うんです。とにかくしゃべるし、どんな時でも勢いと迫力がすごくて、全力ガムシャラみたいな。私はよく商店街とかで追いかけられたりとか……」
(BT編集部「えっ、お母様が追いかけてくるんですか?」)
紗倉「追いかけてくるんです。鉄板焼き屋に二人で行った時に口論になって、私がお店を出ていったら、大声で名前を呼ばれて『金払わなきゃいけないから待ちなさい!』って叫ばれてやばいと思ったら、すぐに精算した母親がものすごい勢いで追いかけてきて。団地まで全速力で逃げて(笑)。帰る場所は一緒なのに何してんだよって話ですけど……。そんなパワフルな母親、と、なんでその人がこの人を選んだの? っていうような父親で。父親はめちゃくちゃ天才肌と言いますが、芸術的なセンスは抜群な人で。絵もすんごい上手だし何をさせても器用だし、まあ、たまに変な壺作ってたりしてましたけど」
神野「方向性が真逆ですね」
紗倉「才能あふれる人だったんですけど、働くとか、金銭を稼いで家族を養うみたいな考えがまるでない人で。働いてないのに働いたふりして借金して、それを口座に毎月振り込んで働いたことにしてて。
(BT編集部「お母様、ギャルすぎる……」)
紗倉「『また変なこと言ってるぅ! 絶対精神科行ったほうがいいっ!』って、中学生の頃に精神科に連れて行かれて。私は絶対、思い込みが激しくて娘に超絶過干渉で常にラップバトルみたいに話し続けている母のほうがカウンセリングを受けたほうがいいって思って…(笑)。診察室に入った瞬間に『先生! 問題があるのはこっちです!』って母を指さして逃げたんですよ」
神野「また逃げてる(笑)」
紗倉「母は病院の予約をしてるもんだから、私の名前は呼んでも追いかけてはこれなくて。
親との折り合い方はさまざま。『犬と厄年』『私をほどく』で、それぞれの家族への思いをさらに読むことができる。最終回となる次回は、2人にとっての「書くこと」について語ってもらった。
構成・文:BEST T!MES編集部