2025年夏──近鉄GHDの株主たちは、静かに、しかし確実に怒りを募らせている。
きっかけは、沖縄北部に突如として現れたジャングル型テーマパーク「ジャングリア」──そしてその背後にある、推定約20億円という巨額投資。
しかし、株主にとっての答えは明白だ。
◆株主利益を損なう「沖縄ドリーム」
財務データがすべてを物語る。ジャングリア(推定20億円出資:5%)・オリオンビールへの出資総額(推定100億円出資:10%強)は、近鉄GHDの年間純利益の25.8%に相当。たった一つの非コア事業が、株主資本にダイレクトな傷をつけている。
さらに悪いことに、この投資は鉄道・不動産という近鉄本来の収益源とほぼ無関係。シナジー効果は見込めず、むしろ“迷走”の象徴として市場から冷ややかな視線を浴びている。
「鉄道会社がバギーを走らせてどうする? これはまさに“株主不在の投資”だ」(個人投資家)
◆PERを押し下げる「沖縄リスク」
現在の近鉄GHDのPER(株価収益率)はわずか約10倍。業界平均の12~18倍を大きく下回る。
しかし、レポートでは明確に示されている。沖縄事業からの撤退と、鉄道・不動産のコア事業集中によって、PERは15倍以上に跳ね上がる可能性が高い。
つまり、撤退すれば株価はこうなる──
現在:2,800円(EPS 280円 × PER 10)
目標:5,600円(EPS 280円 × PER 20)
株価は理論上、2倍に化ける。
◆「撤退の決断」なき経営陣への失望
現場の声は、すでに悲鳴に近い。ジャングリアでは外国人観光客が英語案内のなさに混乱し、プレミアムパス購入者が2時間超の待機に不満を爆発させている。
SNSでは“テーマパークというより修行場”“国際観光地とは思えない”との批判も多く、もはや近鉄GHDのレピュテーションリスク(評判リスク)にも発展している。
◆「株主提案」こそ最後の希望
すでに複数の個人投資家が、次回の株主総会で以下の提言を準備しているという。
・ 沖縄事業からの即時撤退
・ ジャングリア・オリオンビール投資の損失計上と回収計画
・ 非コア事業への資本配分全面凍結
・ 増配・自社株買いなど株主還元の明文化
彼らが目指すのは、JR東海モデル──「鉄道と不動産」という高ROE(自己資本利益率)ビジネスへの回帰である。
◆結論:撤退の決断こそ、株価を救う唯一の道
ジャングリアに未来はあるのか。誰も確証を持たない。
だが、ジャングリアから撤退すれば株価が跳ね上がることだけは、確かな数字が証明している。
沖縄事業を切る。それは敗北ではない。成長戦略の再起動だ。
そしてこの決断を下すのは、経営陣ではないかもしれない。
株主になることができる、あなた自身だ。
文:林直人