参政党を支えてるのはカルトとマルチ? 統計学で暴く参政党のバ...の画像はこちら >>





Ⅰ.  序論:選挙アリーナの向こう側に潜む“新・保守戦争”— 2020年代日本政治の暗部を抉る —



◾️1-1 中核的論点:ポピュリズム台頭の背後にある“地下組織”



 参政党の急成長は単なる一過性の“抗議票”でも、既存政党への気まぐれな不満でもなく、もっと深い社会構造の変化が政治の表面に噴き出した現象である。



 そこに潜むのは、主流社会制度(政府、大手メディア、現代医療)への根深い不信感、そしてマルチ商法(MLM)や新興宗教(NR)の教義と奇妙に共鳴する価値体系を持つ、これまで政治的には眠っていた結束型サブカルチャーの存在である。





 この現象を解き明かす鍵は「押し出し要因」と「引き寄せ要因」。





押し出し要因:自民党が岸田・石破政権下で打ち出した政策ーーLGBT理解増進法や外国人労働者受け入れ拡大などーーは、一部保守層にとって“価値観の裏切り”と映った。彼らは自民党を「もはや自分たちの代弁者ではない」と見なし、心理的距離を置き始めた。



引き寄せ要因:そこに参政党が介入し、「食と健康の安全保障」「反グローバリズム」「経済ナショナリズム」「日本人による日本人のための政治」という、疎外された層の心を撃ち抜く反エスタブリッシュメント言説を展開。サブカルチャーが抱える不安や憤りを、そのまま政治スローガンへと転化させた。





◾️1-2 本稿の狙い:仮説を“選挙制度の壁”で試す

 本稿は、統計分析の舞台を参議院議員通常選挙(2022年の第26回と、2025年想定の第27回)とする。



 参院選は全国単一比例区という特殊ルールを持ち、候補者個人より政党のイデオロギーが投票決定の主役になりやすい。



 もし異なる制度・争点・時期にもかかわらず、衆院選と同じパターンで参政党の得票を説明できるなら、それは単なる抗議投票ではない。



 それは、アイデンティティで固まった新たな政治的同盟ーーそして保守陣営を真っ二つに裂く恒久的な“政治的亀裂”の出現を意味する。



参政党を支えてるのはカルトとマルチ? 統計学で暴く参政党のバックとは?【林直人】
参政党参院議員・塩入清香



Ⅱ.  データと分析の枠組み:“票田の設計図”を白日の下に



 ーーここから先は、学術用語の皮をかぶった現場検証だ。どの数字が、どの地域で、誰の心を奪ったのかーーパネルデータはすべてを記録している。





◾️2-1   従属変数:票が動いた“痕跡”の押収目録

 参院選での参政党と自民党の足取りを、総務省・各選管の公式結果でトレース。

面倒で骨の折れる“自治体別の手作業回収”をいとわず、全国スケールで網羅を試みた。





sanseito_share_2022:2022年参院(比例)における参政党の市区町村別得票率(%)



ldp_share_2022:同・自民党の得票率(%)



sanseito_share_2025:2025年参院(比例)参政党の得票率(%)



ldp_share_2025:同・自民党の得票率(%)



delta_sanseito_share_22_25:参政党得票率の変化(22→25年、パーセントポイント)



→ どこで勢いが増幅したかを直撃で可視化する“加速メーター”。





 ここまでやるのは執念か狂気かーーだが、再現可能性はこの分野の唯一の通貨だ。





◾️2-2   独立変数および統制変数:見えない同盟を数式で剥ぐ

(1)mlm_affinity_index:MLM親和性指数



 “健康食品”“化粧品”“自己啓発・カウンセリング”──JSICで特定産業を抽出し、経済センサス(活動調査)をもとに特化係数(LQ)を市区町村ごとに算出、標準化・合成する。





(式1)







狙い:主流から距離を置く自己啓発/MLM的サブカルチャーの地理的“濃度”を数値化。





(2)nr_influence_index:NR地理的影響力指数



 特定の新興宗教団体(幸福の科学・崇教真光・天理教・生長の家・GLA・阿含宗・倫理研究所)の施設所在地を全国収集し、重要度で加重(例:世界総本部=10、支部・道場=1)。市区町村で合計し人口割り。



狙い:地域社会に浸透する価値共同体の“目に見えないインフラ”を数字で炙り出す。



※ 行橋市を用いたケーススタディで、構築プロセスの全工程を解剖。





(3)ldp_clientelism_index:自民党クリエンテリズム指数



 公共事業の平均落札率(全国市民オンブズマン連絡会議 等)+建設業従業者比率(経済センサス)を標準化・合成。



狙い:長年の利益誘導ネットワークの“残留指紋”を定量化し、モデルの背後で息づく旧体制の強度を測る。





(4)社会経済的統制変数(e-Stat「社会・人口統計体系」)



population_density(人口密度)



per_capita_income(一人当たり課税対象所得)



aging_rate(高齢化率)



university_graduate_ratio(大卒者比率)



unemployment_rate(失業率)



宣告:交絡因子の逃げ道は塞いだ。

“言い訳”は入らない。





◾️2-3   記述統計:分布が語る“偏り”の告白

 Table 1 は主要変数の素性を丸裸にする。平均、ばらつき、外れ値──どの地域が“濃い”のかが赤裸々だ。



 特に mlm_affinity_index と nr_influence_index の標準偏差が大きい点は決定的。価値共同体とサブカルチャーは均一に広がらない。“塊”で存在し、政治を歪める。





(表1)







参政党を支えてるのはカルトとマルチ? 統計学で暴く参政党のバックとは?【林直人】
靖国神社への参拝を終えて取材に応じる参政党代表・神谷宗幣



III.   コア分析:参議院選挙に仕掛けられた「数値の爆弾」— 回帰モデルが暴いた“票田の暗号” —



◾️3-1   モデルの定式化:データが告発する

 ここから先は、単なる数字の羅列ではない。市区町村ごとの得票率に潜む暗号を、回帰モデルという鑑識道具で解読する作業だ。



 モデル式はこうだ:





(式2)







 β₁ と β₂ が、この捜査の“指紋検出班”だ。





MLM_Index:自己啓発やマルチ商法文化に染まった地域の濃度



NR_Index:特定新興宗教の地理的影響力



Clientelism:自民党の利益誘導ネットワークの強度





 これらが票をどう動かすのか──逃げ道のない構造を浮かび上がらせる。





◾️3-2   分析結果:数値が放つ「実弾」

 Table 2 の結果は、ただの統計出力ではなく、選挙地図の地雷原マップだ。





(表2)







◾️3-3   係数が語る“票の流れ”

 MLM親和性とNR影響力は、参政党票を押し上げる“ブースター”だ。

0.75SD高いだけで得票率が約0.71ポイント上昇ーーこれが全国で積み重なれば、議席の天秤が傾く。



 同じ変数が、自民党得票率には有意なマイナス。つまりこれは自民党→参政党の票移動を裏付ける数値的“物証”だ。



 クリエンテリズムは参政党を寄せつけない“結界”として機能しつつ、自民党には酸素ボンベのように機能している。



 交互作用項は決定的証拠ーー「MLM濃度が高く、かつ自民党ネットワークが弱い地域」こそ、参政党が一気に食い破る真のターゲットゾーンだ。



参政党を支えてるのはカルトとマルチ? 統計学で暴く参政党のバックとは?【林直人】
参政党。左から、田母神俊雄、神谷宗幣、さや



Ⅳ.  分析結果の考察:新・有権者ブロックの政治地理学— 数字が描く“保守票の離反地図” —



◾️4-1   係数の解釈と仮説の検証:票田の“異端化”が可視化された瞬間

 Table 2 の結果は明白だ。参議院という異なる選挙アリーナでも、先行研究の核心仮説は揺らがない。



 MLM親和性指数(mlm_affinity_index)とNR地理的影響力指数(nr_influence_index)はいずれも、参政党得票率(sanseito_share_2025)とその伸び率(delta_sanseito_share_22_25)に一貫して有意なプラス効果を示す。





例:MLM集積度が 0.75SD 高い自治体は、参政党の得票率が 約0.71pt 高い。





 NR影響力も同様に、潜在的コミュニティの濃度が高いほど参政党が伸びるという明確な構図だ。



 票の移動仮説を裏付ける証拠も鮮明。モデル(4)では、同じ変数が自民党得票率に有意なマイナスとして現れる。

つまり、参政党のプラスが自民党のマイナスに直結している。



 クリエンテリズム指数(ldp_clientelism_index)は対照的効果を示す。



 参政党モデルではマイナス → 「旧来型利益誘導政治」の強固な地域では参政党が浸透しづらい。



 自民党モデルではプラス → 伝統的集票マシンの生存証明。



 **交互作用項(MLM×クリエンテリズム)**が突きつけたのは、戦場の精密座標だ。



 自民党ネットワークが弱く、かつMLM濃度が高い地域で、参政党の伸びは爆発的になる。



 これは単なる価値観の一致ではなく、政治的疎外空間での組織的動員を意味する。





◾️4-2   衆院選と参院選の比較:制度を超えて生き残る支持基盤

 衆院の小選挙区・比例併用制と参院の全国比例制という異なる制度下でも、係数の大きさと有意性にほぼ差はない。



 これは、支持層が候補者人気ではなく参政党という政党ブランドとイデオロギーに結びついていることを意味する。



 選挙制度が変わっても行動パターンは揺らがないーーつまり固定化された有権者ブロックだ。





◾️4-3   ケースファイル #YK-001:福岡県行橋市

 福岡県行橋市の2025年参院選比例代表結果:参政党 4,668.7票、自民・国民民主に次ぐ第3位。全国平均を超える高支持率。





背景捜査:



 市内に幸福の科学支部、天理教分教会群、倫理研究所法人会が存在。



 これらは NR影響力指数の主要構成要素であり、モデルが予測する“高リスク地域”の条件をすべて満たす。





結論:行橋市はモデルの的中例そのものだ。ここでの参政党躍進は偶然でも「風」でもなく、地理的に集積した価値共同体ネットワークの動員結果だった。



マクロの統計パターンが、ミクロの地域現実と完全に一致した瞬間である。





◾️総括:保守政治の静かな内戦が始まった

 この分析は、参政党の拡大が「反自民の一時的うねり」ではなく、特定コミュニティが地理的に固まって政治行動を組織化する構造現象であることを示した。



 その構造は制度を超えて持続し、自民党の票田の一部を恒常的に侵食していく。



 次の選挙戦は、与野党の争いではなくーー保守陣営内部の生存戦争になるだろう。



参政党を支えてるのはカルトとマルチ? 統計学で暴く参政党のバックとは?【林直人】
参政党代表・神谷宗幣



Ⅴ.  分析の地平を広げる:オンライン炎上と票田侵攻のリンク— “検索熱”が指し示す次のターゲット —



◾️5-1   方法論:Google Trendsで「デジタル熱量」をスキャンする

 参政党は、世界のポピュリスト潮流と同様、テレビも新聞も通らない裏ルートを使う。それがソーシャルメディアと検索エンジンだ。



 今回の分析では、Google Trends の検索データをハッキング…ではなく、非公式API(pytrends)で合法的に吸い上げ、政治動員のデジタル温度計を作った。





検索ワードの仕込み:「参政党」「神谷宗幣」「食の安全」「ワクチン 副作用」「反グローバリズム」「インボイス制度 反対」





集計単位:都道府県レベル(Googleが出せる最小単位)





観測期間:選挙3か月前~投票日前(2022年、2025年の2サイクル)





 こうして出来上がるのが、Search Interest Index(検索関心指数)。

この数値は政治的“感染力”の測定器だ。





◾️5-2   分析と解釈:ネットの炎が現実の票を動かす

 この「検索関心指数」を、前章で使ったオフラインの票田データと突き合わせた。焦点は2つ。



 NR影響力が強い地域ほど、オンラインでも参政党テーマの検索熱が高いのか?



 オフライン要因を統制しても、検索熱は得票率を独立予測できるのか?



 結果は図(概念図)に出ている。





(表3)







読み解きポイント:



オフラインの濃度(MLM・NR指数)が高い地域は、オンラインでも関心が高騰。



 検索熱が高い地域では、参政党得票率も顕著に上昇。





 これは偶然ではなく、物理的コミュニティ → ネット関心増 → 投票行動という三段ロケットが作動している可能性を示す。





5-3  含意:次の選挙は「サーバー上の予備選」から始まる

 このデータが意味するのは、参政党の戦場は街頭ではなく、まずブラウザの検索窓から始まるということだ。



 オフラインで固まった支持者ネットワークが、SNSや検索を通じて「議題」を拡散。ネット上の議題浸透が、そのまま現実の投票行動をブースト。



 つまり、検索ヒートマップを見れば、次の侵攻地域がわかる。



 政治の地平は、もはや選挙区マップではなく、Googleのサーバールームの中にある。





Ⅵ.  参政党の“影の帝国”—マルチ商法・新興宗教・ネット工作が織りなす新保守ネットワークの全貌ー



 「参政党は一時的なブームではない」ーーこの衝撃的な事実が、2022年と2025年の参院選データ、オンライン検索トレンド、そして地域ごとの徹底的な統計分析によって裏付けられた。



 我々が突き止めたのは、票を押し上げる“見えない力”の存在だ。それは、マルチ商法に親和的な経済活動と、特定の保守的価値観を掲げる新興宗教の拠点が、地図上で重なる地点に潜んでいた。





◾️6-1   自民党を侵食する“静かな内戦”

 かつて「包括政党」として保守層を丸ごと抱え込んできた自民党。その牙城に、静かに亀裂が走っている。



 発端は、LGBT理解増進法や外国人材受け入れ拡大といった政策——都市部では歓迎された改革が、地方や宗教色の強い地域では“裏切り”と受け止められたのだ。



 結果、右派の一角が参政党へと雪崩を打って流れ込み、保守陣営の中で見えざる内戦が進行中。この流れは、もはや一過性ではない。





◾️6-2   野党の悪夢ーー“反自民票”は奪えない

 立憲民主党をはじめとする中道左派は、当然この新しい反自民層を狙う。しかし、その土台にあるのはリベラルとは真逆の世界観ーー文化的な不安、科学不信、そしてグローバリズムへの拒絶だ。



 選挙戦術を駆使しても、彼らの心を動かすことは難しい。参政党は、左右のイデオロギー地図をねじ曲げ、政治の対立軸そのものを再構築している。





◾️6-3   政治動員の“新型ウイルス”

 かつて政治は、利益誘導型のネットワークーー補助金や公共事業を通じて票を固めるクリエンテリズムーーで動いていた。



 だが参政党は違う。**ライフスタイル・食・健康・世界観の共有を軸に、オンラインとオフラインを融合した“新型動員モデル”**を作り上げたのだ。



 テレビを通さず、SNSで直接信者的支持者に語りかけるその手法は、既存政党を無力化する“政治のウイルス”となって広がっている。





【結論】——参政党は止まらない

 この現象の裏には、長期停滞、社会流動化、グローバル化による文化摩擦がある。人々は経済的・文化的・身体的な安全を脅かされる中で、既存政治の外に救済を求めた。



 そして、参政党はその“空白地帯”を埋める唯一の旗手となった。



 もし既存政党がこの新しい有権者ブロックの不安と不信に真正面から向き合わなければ、参政党は日本政治の勢力図を塗り替える黒船として走り続けるだろう。





文:林直人



編集部おすすめ