世の中には多くの商品券が存在しています。JCBギフトカード・全国百貨店共通商品券・ビール券といった贈り物として店舗などで使われやすい商品券のほかに、Amazonギフトカード・Google Playギフトカード・Apple ギフトカードといったアカウントにチャージするとネットで買い物ができるものまで、商品券は私たちの生活に浸透しており、意識するとこういった商品券をいろんな場所で見つけることが出来ると思います。
コンビニなどでGoogle PlayギフトカードやApple ギフトカードを大量に買い込み、ソシャゲに何十万も課金するといったお話がたまに聞かれますが、こういった人たち以外にも、ソシャゲに少しだけ課金しようと数千円から数万円単位でギフトカードを購入するというのはよくあるお話で、みなさんのなかにも経験のある人がいるのではないでしょうか。
いっぽうで、使う機会がない人にとっての商品券は見聞きしたことはあるが、お金と何が違うのかわからないかもしれません。
基本的にお金と商品券の役割は同じです。商品券は「金券」と略称されるなどしており、お金とほぼ同じ物だという認識で問題ないかと思います。
ただし、大きな違いとして商品券は使用先が限定されているのが特徴で、商品券を発行している企業と提携している店舗やサイト、指定された物品など以外では使うことができません。
わかりやすい例えとしては、ビール共通券はビールしか買えませんし、AmazonギフトカードはAmazonでしか使えません。
わざわざ商品券を作らなくても、現金で買う人は買うのだから商品券を用意する必要はあるのかと疑問に感じる人がいるかもしれませんが、商品券が贈り物などで使われれば使い先を限定できるため、企業側としては価値ある金券なのです。
高市内閣発足後、鈴木憲和(すずきのりかず)農林水産大臣から、今までの備蓄米放出によるお米価格の抑制から一転して、「お米券」を配布することで値上がりしたお米を買いやすくする方針が広く国民へ発表されました。
このお米券の配布という新しい方針は、お米の価格はあくまで市場で決まるものとの考えから来ており、行政がお米の価格などへ関与すべきではないという立場であることが鈴木大臣から説明がされています。
簡単にまとめると、「政府が安い備蓄米を消費者向けに大放出してお米の価格を下げるような政策は行政が関与しすぎなので、お米券という名の商品券を国民の皆さんへ配布することにより、お米の価格は高くなるかもしれませんがお米券で安く買えるようにします」といったシンプルな内容のはずなのですが、ここでお米券に対して反発する声が多方面からあがり、いくつかの地方自治体からお米券の配布を見送る声明がだされる事態にまで発展しているんですよね。
そもそも、お米券という名の商品券ですが、国から直接国民へ配布されるわけではありませんし、地方自治体を通して国から配布されるものでもないことを理解しておくと、何故こんなに揉めているのかがわかりやすいかもしれません。
国が地方公共団体へ向けた物価高対策の一環として「重点支援地方交付金」という政策をとっており、今回この政策には追加予算で2兆円が決定しています。
このあたりの予算に関して、お米券1枚の価格と国がしている海外投資などの政策予算を比較してお米券を揶揄するような書き込みがSNS上で見られますが、物価高対策の予算規模は2兆円と大きな金額が投入されているので、ネットのデマ情報を信じないように注意しましょう。
地方自治体はこの交付金から「プレミアム商品券、電子クーポン、地域ポイント、いわゆるお米券、食料品の現物給付」などの幅広い選択肢から地域に沿ったものを選ぶことになっており、鈴木大臣としてはお米の価格が高騰していることを踏まえて、お米券を選んでほしいという強い思いがあるように感じます。
とはいえ、このような選択肢が用意されているのを見てしまうと、地方自治体が選択肢のなかから、あえてお米券を選ぶのか疑問符が残ります。使い道がお米に限定されている印象が強いお米券を、価格の高騰だけを理由に選ぶのは動機として弱いんじゃないでしょうか。
印象だけでいえば、お米券というフレーズの商品券よりも、プレミアム商品券を配ったほうが「プレミアムだからなんにでも使えそう」といった具合に、市民のみなさんが受け入れやすい気がしてしまいます。
ややこしいですが、お米券で購入できるものはお米に限定されておらず、お米券が使える店舗によって違いがあるものの、基本的にはお米以外のものも購入できるようなので、名前で損をしていると言わざるを得ません。
ここまでの話だけであれば、商品券の印象だけでお米が高騰しているにもかかわらず、国から推奨されているお米券をわざわざ配布しないと声明を出す必要があるのかと感じますが、お米券の価格について大きな物議をかもす情報がニュースやネットなどで取り上げられてしまったことが主な原因になっています。
「お米券は1枚500円のものが配布されるが、実際に使えるのは440円で、残りの60円は中抜きされている!」といった言説が広まってしまったのが発端のようで、「中抜き」という無条件で殴ってもええやろ精神が出てしまう強いワードが飛び交った結果、お米券の配布をしないという声明を出す地方自治体が出てしまうまでになってしまいました。
ただ、地方自治体は普段から商品券を扱っているのだから「お米券がどういったものか分かって言っていますよね」案件にしか見えず、交付金をお米券以外で使うことを市民のみなさんに納得してもらうために、お米券を配布しない地方自治体が炎上騒ぎに便乗しているだけのような気がして仕方ありません。
そもそも、お米券が1枚500円のうち440円しか使えないというのは、普段から贈与用で販売されている「全国共通おこめ券」のことで、「差額の60円は流通経費の一部として購入された方にご負担いただいている」との説明書きを今回のお米券配布と繋ぎ合わせることで、悪意をもって拡散している人たちが問題だと思うんですよね。(注2)
「重点支援地方交付金」でのお米券に関しては、全国米穀販売事業共済協同組合が2025年12月12日に1枚あたり500円の販売価格を一律477円にする方針を明らかにしており、地方自治体向けに期限付きおこめ券を販売することとなりました。
注1)物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金
https://www.chisou.go.jp/tiiki/rinjikoufukin/juutenshien.html
注2)おこめ券について
https://www.zenbeihan.com/about_ticket/
お米券は元々ほかの選択肢にある「ギフトカード・現金給付・プレミアム付き商品券」などと比べて経費率が高かったわけではなかったところに、更に負担軽減策が打ち出されたことでお得感が出たのではないでしょうか。(注3)
何をするにも経費はかかるもので、必要経費を中抜きだと言い始めれば、どんな政策も中抜きのオンパレードで何も出来なくなってしまいます。
例えばプレミアム商品券は、多くの市区町村で申請受付の窓口、商品券の販売及び換金などの各種業務を各業務に精通している「商工会議所・商工会、郵便局、地域金融機関、その他民間事業者」などに業務委託して実施しており、委託先が変わるだけで経費が必要になることに違いはありません。(注4)
お米券を選ぶかは地方自治体に委ねられているわけで、市民の声に耳をかたむけながら、地方自治体ごとに適切な選択肢を交付金で活用すればいいんじゃないかなと考えています。
どのような形であれ公平に市民の負担が軽減されれば、結果的に高騰したお米を買うときの負担が軽減されることに繋がっていくはずです。
ただし、市民のなかにはお米農家のみなさんも含まれていることを忘れてはいけません。お米券を配布するということはお米を積極的に買ってもらえるようするための政策であり、高騰したお米を買い支えることはお米農家のみなさんを支えることに繋がります。
SNSなどでお米券を過剰に叩いている人たちに影響されることのないよう冷静に世の中を見守りつつ、こたつにでも入りながら様々な形で物価高対策が進められているんだなと理解しながら、お米を美味しく食べるのが一番ですよ。
注3)[農家の特報班]なぜお米券?採用自治体に聞いてみた
https://www.agrinews.co.jp/news/index/352096
注4)プレミアム付商品券
https://www5.cao.go.jp/keizai1/premium/index.html
文:谷龍哉
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