片づけても、なぜか息苦しい。モノを減らしても、自由になった気がしない。

もしそう感じているなら、捨てる順番を間違えているのかもしれない。本当に手放すべきなのは「不要なもの」ではなく、「必要だと思い込んでいるもの」だ。作家・適菜収氏が整理術の極意を語った。当サイト「BEST T!MES」の長期連載「だから何度も言ったのに」が大幅加筆修正され、単行本『日本崩壊  百の兆候』として書籍化された。連載「厭世的生き方のすすめ」では、狂気にまみれたこのご時世、ハッピーにネガティブな生活を送るためのヒントを紹介する。



「必要なもの」から捨てる技術【適菜収】 連載「厭世的生き方の...の画像はこちら >>



◾️まずは仕事をやめよう



 一昔前に断捨離が流行った。モノを捨てると心が軽くなる、人生が変わる、という類の話だ。たしかに理屈としてはわかる。不要なものを見極め、捨て、身軽になる。モノの呪縛から解放され、自由を手に入れる。モノを所有したくないという人は増えていると思う。私も、部屋にあったものはほとんど捨ててしまった。



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 ある作家が、モノを捨てる方法について書いていた。段ボール箱を2つ用意し、必要なものと不要なものを分ける。1年間、着なかった服、使う予定のないものは、もったいないと思うのはやめて不要の箱に入れる。そして何も考えずに捨てる。ここまではよくある話だ。



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 私が考えた整理術は、必要なものが入っている箱を先に捨てる。いらないモノを捨てても芸がない。「必要なもの」に囲まれて生きている限り、精神は拘束されたままだ。どうでもいいものに囲まれて生きるほうが楽しい。



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 スマホは今すぐにでも捨てたい。だが、なかなかそうはいかない。ごくたまに電話がかかってくるし、散歩の途中で気になったことをすぐ調べることができる。

便利なものこそ厄介だ。だから早く捨てたい。



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 自宅の固定電話はとっくの昔に捨てたが、そろそろパソコンも捨てたい。いわゆるミニマリストは「モノにこだわらない美意識」みたいなことを言うが、そういうウザいものも拒絶したい。昔「巨泉のこんなモノいらない!?」というテレビ番組があったが、大橋巨泉もケント・ギルバートもいらない。



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 某所でこういう話をしたら「なんでも捨ててしまうと後悔しますよ」と言われた。たしかにそうだ。大切な書類や印鑑は捨てなければよかった。しかし、後悔するのはタダである。これまでも年賀状や手紙、名刺はすべて捨ててきたし、2024年の引っ越しの際には蔵書を全部人にあげた。私のメルマガの読者には、箱に詰めて着払いでプレゼントした。



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 先日、原稿を書いていて、昔書いた自分の本を参照したくなったが、捨ててしまったので手元にない。

Amazonで買い直すのも馬鹿らしいので、参照するのをやめた。そういう感じで仕事も自然に縮小していき、今ではその成果も出てきた。要するにカネがない。



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 カネがまったくないのは困るが、たくさんはいらない。最高の贅沢には、ほとんどカネがかからない。世界最高峰の音楽はネットで無料で聴けるし、世界最高峰の文学は図書館で無料で読める。世界最高峰の絵はわずかな入場料を払えば美術館で見れる。一方、バカは大金を使って貧乏くさい生活をする。カネを払ってくだらない音楽を聴き、くだらない新刊本を買い、行列を作ってくそまずいものを食べる。そのカネを稼ぐために一生懸命働き、またカネを使う。こうした負のスパイラルから抜け出すためには、無職になるのが一番だと思う。



 



◾️太川陽介のサインはいらない



 世の中には、どう考えてもいらないものがある。

たとえば、修学旅行生が立ち寄る土産物屋で売っているペナント。「京都」「大阪城」などと書かれた二等辺三角形の布切れ。あれは本当にいらない。小学生の頃、あれを自分の部屋の壁一面に貼っている同級生がいた。子供心に「こいつとは仲良くなれないな」と思った。



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 ごくたまに「本にサインしてくれ」と頼まれることがある。あの感覚もわからない。マイケル・ジャクソンのサインならともかく、私のサインが入っていたらブックオフに売りにくくなるだけである。



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 これも小学生の時の話。実家近くにあるテレビ局に見学に行くと、太川陽介がゲストで来ていた。番組終了後に、若い男がサインをもらっていたが、私のサイン並みに、太川陽介のサインはいらない。



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 別の日にも友人と一緒に見学に行った。

4人組のロックバンドがゲストで来ていたので、番組終了後、そのお兄さんたちを取り囲み、スーパーマーケットのチラシの裏やノートを破いた紙にサインを書かせて、帰りにゴミ箱に捨ててきた。



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 中学生の時には、甲府に具志堅用高がオーナーのラーメン屋ができた。開店記念でラーメンが50円だったので、友人5人と一緒に行った。ラーメンを食べ終わると、厨房から具志堅が出てきて、「サインが欲しい子はいるかな?」と言った。ガキどもは我先にと手をあげ、具志堅を取り囲んだ。そして具志堅が「色紙代は50円だよ」と言った瞬間、蜘蛛の子を散らしたように、全員帰って行った。その時の具志堅の鋭い目は今でも覚えている。



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 捨てる技術が板についてきたら、今度は人間関係の整理をしたい。一番いいのは引っ越しだ。相手に住所を教えなければ、自然に疎遠になる。電話番号をこまめに変えるのもいい。我々はもっと人見知りになるべきだ。



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 友人も選ぶべきだ。論理的な人間は面倒だし、非論理的な人間も面倒。だったら誰ともつきあわないほうがいい。私にはたまに会食する友人が少数だけどいる。彼らは無駄なことは一切しゃべらない。某官僚は駄洒落しか言わない。



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 必要だと思い込んでいるものほど、いらないものだったりする。「失って困るのは最初の3日間だけ」と離婚した私の友人も言っていた。



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 昔、天地真理の『ひとりじゃないの』の替え歌を作ったことがある。





 〽ふたりじゃないって 素敵なことね





文:適菜収

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