キスの絵文字といえばこの4つ☟
①キスの顔Unicode U+1F617



〈①~④出典:Twitter [CC BY 4.0]〉
この中で圧倒的に人気なのは④「投げキスの顔」のようです。昨年のBrandwatch “The Emoji Report”によると、キスの絵文字のうちこの④「投げキスの顔」が唯一、ツイッターで人気のある絵文字トップ20に入っています。
人気の理由は、デザインの可愛らしさ。そして実際のキスではなく投げキスで、気軽に幅広く使えるからでしょう。もちろん相手によりますが、友達とのやり取りや挨拶としても使えちゃいそうですね。ポルトガル、スペイン、フランス、中南米の一部など、挨拶としてのキスの習慣がある国では、この顔文字が恋愛に限らずよく使われています。
ベーシックなのは①「キスの顔」ですが、どうでしょうか。なんだか無表情というか、あまり真剣に見えませんね (笑)。Emojipediaによれば、この絵文字はキスではなくて、こんな感じで♬ 口笛と解釈されることもあるそうです。(https://emojipedia.org/kissing-face/)
次は②「にこやかなキスの顔」ですが、これはもう少し愛情深い印象を与えます。
そして、目を閉じて、さらに頬を赤く染めたこの③「目を閉じたキスの顔」は、本格的なラブラブキスに見えますね。
■ポルトガルで「キス」が多用される理由キスが日常の挨拶になっている国では、これらの絵文字の外にもキスにまつわる独特な表現がいくつかあります。筆者にとって身近なポルトガルを例にとって、紹介しましょう。
ポルトガルでは会った時・別れる時・お祝いの時など、本当に一日に何回も挨拶のキスが繰り返されます。もちろん、実際に唇にキスをすることはなく、頬を合わせて、キスの仕草を軽くするだけですが、家族や友だちに対して親しみを表すとても大切な行為です。
このようなキスの習慣は、Face-to-faceコミュニケーションではない時には、「Beijinhos(=英語のkisses)」という言葉で代用されます。電話で話を終えた時・メール/メッセージの最後、「Beijinhos(=kisses)」と一言を添えます。親しみをこめた「じゃ、またね!」「バイバイ」のような感覚です。筆者の夫がポルトガル人なのですが、家族との電話やメッセージのやり取りは、必ずこの「Beijinhos」で終わります。
本当によく使う文末表現なので、様々な略記が生まれています。例えば、BeijinhosをBjsのように略したり、SNSでは絵文字で代用したりします。
ほかには、このような星印***を使ったりもします。
当時、欧米のICQやAIMといったインスタントメッセンジャーでこんな顔文字が使われていました。
:-*
これは、: は目、- は鼻、そして * は突き出した唇を表していますが、ポルトガルの * は、この顔文字が略され唇の部分だけが残ったものと考えられます。ちなみに星印の数はキスの数を表していて、****こんな具合に*の数が増えていくにつれて、キスの数も増えます。
■英語圏のxxやxoxoの意味は?英語圏にもキスにまつわる独特な文字表現があります。
メールやメッセージの最後にxやxxxxといった謎の文字列を見かけます。これらのxも「キス」を表しているのです。ポルトガルの * と同じように、一個ですと一つのキスx=kiss、複数ではxxxx=kissesになるという具合です。
このxxxxはいかにも現代的なスラングに見えますが、実はxで「キス」を表す習慣は、少なくとも18世紀まで遡ることができます。オックスフォード英語辞典でxを引くと、一つの意味として「特に手紙の結びにおいて、キスを表すのに用いられる」とあり、1763年から20世紀後半にかけていくつかの例があげられています。中には、1894年にウインストン・チャーチルが母親宛てに書いた手紙もありました。
Please excuse bad writing as I am in an awful hurry. (Many kisses.) xxx WSC.(出典:R. S. Churchill“Winston S. Churchill” 1967)
これが意味するのは、19世紀には、有名な政治家までxxxを使いこなしていたという事実。
このxの由来については、形がキスに似ている、x[eks]と [kiss]は発音が近い、など様々な説があります。一番強力な説によれば、xで「キス」を表す習慣が、文字が書けない人が手紙や契約書の最後に署名代わりに十字の形を書いて、その十字に誠意の証としてキスをしたという因襲に由来するものだそうです。手紙の最後にxを書いて、その箇所にキスする。この二つの行動が一体化して、x=キスとなったという流れです。(出典: “A whole lot of history behind ‘x’ and ‘o,’ kiss and hug” The Washington Press, 2014年2月14日)
では、xoxoはどうでしょうか?
xはキスということを先ほど分かりましたが、oはいったい何者なんでしょう。
xoxoはhugs & kisses (ハグとキス)と読まれますが、oは腕を丸くしてハグする姿を表しているそうです。これは言われなければ、なかなか思いつかない発想ですね。ちなみに、英語ネイティブの間でも、xとoどれがキスでどれがハグか、迷う人も少なくないようです。xは腕を交差させてハグしているように見えて、oは唇を丸めてキスしているように見える、という意見もネット上で見かけます。
最後に日本での「キス」はどうでしょうか?
日本の顔文字では、キスのために突き出した唇を表すパーツとして、ギリシア語のアルファベット「 ε 」エプシロンが代表的です。
向きによっては数字の3も使われたりします。
ヽ(○´3`)ノ チュゥゥゥ
☆・゚:*チュ━(*´з)(ε`*)━━*:゚・☆
(´・з・) (=ε=)
ただ、受け取り方は様々です。例えば(^ε^)という顔文字について、「キスの顔文字だと思ったことがありません」「喜んでいる、笑っている意味だと思っていた」のような意見もみかけます。(https://oshiete.goo.ne.jp/qa/1656850.html)
日本の漫画ではこのような尖らせた口が、キスと無関係で使われていることも影響しているでしょう。

日本のキスの顔文字のもう一つの特徴は、どれもとにかく長いことです。
Chu! や チュッチュ といった擬音語つきだったり、❤がついたりして、イギリスのxやポルトガルの * のようにコンパクトな表現がないようです。(^ε^)から口だけをとって、εで「キス」を表現できそうですが、どうでしょうか?
よく使われる表現は略される傾向があります。結局、挨拶としてのキスが馴染まなかった日本では、「キス」がそれほど頻繁に使われる表現ではなかったということでしょう。