今春、『誰かが私をきらいでも』(KKベストセラーズ)を上梓した及川眠子さんと、『違和感のススメ』(毎日新聞出版)を上梓した松尾貴史さん。両名の書籍発売を記念して、4月16日にロフトプラスワンウエストでスペシャルトークセッションが行われた。
その模様をお届けした第1回の記事では「仕事」をテーマに、「仕事は四重人格でこなす」(松尾さん)や「仕事ジャンルを括られることにウンザリする」(及川さん)など、忌憚ない仕事観を語ってくれた
第2回のテーマは「SNS」。「著書を執筆する上で、松尾さんのTwitterからもさまざまなヒントを得た」という及川さん。一方、松尾さんは「Twitter上で見掛ける汚いモンは、戦うフリを見せてから即ブロックする」と、自身の対策を講じる。
及川―――今回の対談は、私が松尾さんのTwitterにシンパシーを感じたことがきっかけで実現したのですが、実は『誰かが私をきらいでも』を出版するきっかけもTwitterだったんですよ。
松尾―――そうだったんですか?
及川―――担当編集が私のTwitterを読んでいてくれたみたいで、「何とかこれを形にできないか」と連絡を下さったんです。ただ、Twitterの内容をそのまま書いてもつまらないので、「人に嫌われること」というテーマに絞ることにしました。
タイトルでもある「誰かが私をきらいでも」は、Twitter上のやりとりで痛感したのがきっかけです。Twitterって、とにかく攻撃的な人が一定数いるじゃないですか。たとえば、吉田豪さん(プロインタビュアー&プロ書評家)に対して、ある中学生が「吉田豪、なんでお前は返事をしないんだ」から始まり、「返事がなければ、お前のことを嫌いになるぞ」とリプで脅すんですよ。でも、豪さんは「別に俺、中坊に嫌われても何のデメリットもないですけど」と意に介さなかった。そして、松尾さんにもTwitterで敵意を向ける人がいて、「俺は松尾貴史が嫌いだ。なぜなら間違っているからだ」と。
こうした光景を見掛けて、今回の著書では「嫌われること」について掘り下げようかなと。「嫌われるのは別に怖くないよ」といった内容を綴っています。
松尾―――「嫌われること」ねぇ。僕は歪な芸風で、歪な人格で、歪な動きをしているから、嫌われるのは仕方がないと思う部分もあります。ただ「嫌われている具体的な理由を知った上で嫌われたい」という気持ちは強いですね。
「人を嫌う」という宣言を脅しに使う人がいるんだなって
及川―――「人を嫌う」という宣言を脅しに使う人がいるんだなって、そのときに初めて知って不思議な気分になりました。だって、自分が誰かを嫌うということは、自分も誰かに嫌われる可能性も孕んでいるわけでしょ?“脅しの道具”が自分に向けられるかもしれない、という事実に気がついてないのかな?
松尾―――僕も子供のときの口ゲンカで、「嫌いで結構、好かれちゃ困るぅ~」みたいなこと言ってましたね(笑)。そう言えば先日、Twitterで安倍晋三の悪口を書いたんですよ。そしたら「仕事貰うためか」とか「食っていくためとは言え大変ですね」みたいなリプが来たから、言ってやったんですよ。「あほか。安部に群がる者たちの方が食っていくためやろ」って。まあ、僕はそう書いた直後にブロックするんですけどね(笑)。
及川―――そうなんだよね。
松尾―――匿名のヤツを、なんでこちらが門戸を開いて相手せなアカンのって思うんです。僕は下品な人は好きですが、品のない人は嫌いなんです。下品・上品という言葉あるけど、志の高い下品もあれば、志の低い上品もある。
及川―――松尾さんって、よく“糞リプ”に構ってる印象がある。
松尾―――いやいや(笑)。それは、戦うフリをしながら、すぐブロックして逃げてるだけですよ。まあ、それで溜飲を下げているところもありますけどね。
及川―――私、碇シンジ君(『新世紀エヴァンゲリオン』)の声優の緒方恵美さんに「糞リプに構い過ぎ」と言われたんですよ。「糞リプはナンボでも来るから無視した方がいいよ。真面目に構ってる有名人は、眠子さんとはるかぜ(春名風花)ちゃんくらいだよ」って。そう言われて、いやいや、私より松尾さんの方が糞リプに構ってるじゃんって思ったんだよね(笑)。
松尾―――ホント、僕は構ってるフリして、すぐブロックですから。
及川―――そこから私もミュートするようにしたんだけど、最近は私がミュートするよりも先にブロック逃亡される。
松尾―――相手が先にブロックしちゃうんだ(笑)。でも、汚いもん見なくて済むからいいんじゃないすか?
及川―――そうなんだよね。
松尾―――でも、そういう自分のカタルシスのために絡んでくる人は、まだマシですよ。厄介なのは、誰かが号令をかけたような場面。何故か同じような言い草で、ドッと来るときがありますよね。これは号令が出たなと思って調べると「ああ、この人かな?」という人が見つかる。でも、こういうときはブロックしてるとキリがないので、放置するに限ります。すると、また誰かが号令をかけたかのようにスッと突然止むんですよ。
及川―――1人の人が複数のアカウントを使ってるときもありますよね。数名が揃って同じ内容の糞リプを飛ばしてくる。百田尚樹さんと揉めた時もそうだった。
松尾―――あと、ロクに知らんと知ったようなことを書き込む浅い連中とかね。
及川―――全部を見ることもせずに、好き勝手に解釈して書き込みますよね。私が百田尚樹さんの騒動(※百田尚樹著『殉愛』に関する疑問点を及川さんがツイートしたところ、百田氏が及川さんを批判して炎上)に巻き込まれたときも、右翼っぽい人たちがガンガン文句を言ってきた。
松尾―――Twitterにいるのはガチ右翼じゃなくて、ネトウヨの毛が抜けたような奴らなんですよ。弱い立場の人を叩けばイイってことを「自分は右翼だ」と思って自己満足している人が多いんだと思う。
レビューと評論は違う
及川―――例の件も、なぜ百田さんから「この機に乗じて売名行為する作詞家というのも実に厄介や」と言われたのか、よくわからなかった。
松尾―――たかじんさんの一代記を執筆しておきながら、及川さんのことを知らんとかね。物凄く間抜けなことを百田さんはしてしまったんですよね。
及川―――それは(吉田)豪さんも言ってくれたんですよね。「やしきたかじんの本を書きながら、たかじん最大のヒット曲である『東京』をはじめ、彼の多くの作詞を手掛けている作詞家を知らないなんて、ちょっと迂闊ですね」的な内容を書いて、そしたら豪さんは一発で百田さんにブロックされてしまった(苦笑)。さらに、見かねた水道橋博士が「何の損得もないところで、逃げ場を用意してくれようとしている及川さんに対し、あまりに失礼じゃないか」と反論したら、今度は博士の方に矛先が向かってしまって……。
松尾―――そういうワケ分からんのも多いSNSですけど、ご自分の作品の感想とかは読んだりします?
及川―――Amazonのレビューはたまに見ますけどね。好き勝手書いてる人も多いけど、ちゃんとした名前表記の人は、わりと真面目に感想を書いてくれている印象です。
松尾―――レビューと評論は違いますもんね。その人の個人的な感想を匿名で書き散らす行為と、正体を明らかにして責任の下に批評する行為は全くの別作業。匿名で物陰から「バーカ」と言って、すっと隠れるような行為とは次元が違う。たとえ辛辣な意見だとしても、自分の責任の下で書いているならば、腹を括って悪口を書いているという点に対しては評価される行為です。痛いところを突かれたら、我々の成長にも繋がるでしょうしね。とは言え、誰しもが嫌われたくはないと思うけど……。
及川―――でも、嫌われることを気にしてたらやってられない。
松尾―――そうそう。嫌われたくなかったら表現活動はできないですよね。
次回に続く
※4月16日にロフトプラスワンウエストで行われた及川眠子『誰かが私をきらいでも』(KKベストセラーズ)×松尾貴史『違和感のススメ』(毎日新聞出版)発売記念特別対談をもとに構成
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