かつて、だれもが夢見たであろうマイホーム。その夢は、バブルの崩壊によって庶民の手から遠のくことになるが、その時代に、大阪の郊外を中心に建設されたニュータウンが多数存在する。

有名どころを挙げるとすれば、千里や箕面、兵庫の神戸市北区、三田、川西、宝塚、そして奈良の生駒や学園前だ。一方で、電車も高規格道路も通らぬ大阪の山中に、こんな名前のニュータウンがある。その名は「希望ヶ丘」だ。場所は箕面市と能勢町の境域にあり、最寄りの千里中央駅や池田駅までバスで約1時間。仮に大阪市内まで行こうものなら2時間は要することになる。当時は、「将来、北大阪急行や国文都市モノレール(現大阪モノレール彩都線)が開通するから、利便性がよくなる」という口八丁で販売されていたが、夢のまた夢。希望ヶ丘という一見ロマンのある名を名乗っておきながら、周囲を閉ざされた陸の孤島「絶望ヶ丘」と揶揄される。このニュータウンをみなさんはご存知でしょうか?

 我がBT編集部が、ことを知ったのは、このツイートがきっかけだった。

希望ヶ丘なのに絶望ヶ丘と揶揄されるスゴいニュータウンとは? ...の画像はこちら >>
 

 これは、不動産業界最大のツイッター集団、業界の裏事情から社会風刺まで、歯に衣着せぬ発言で話題となっている全宅ツイ。彼らが運営するクソ物件オブザイヤーでのつぶやきだ。

 この案件は、少子・高齢化の波にさらされている日本の地方の今後の世界を象徴している事案なのかもしれない。

 一体どのようなニュータウンなのだろう。

この目で確かめるべく、大阪市内から電車2本、さらにバスを乗り継ぎ、はるばる現地を訪れた。

■バスに揺られて市内から約1時間の別世界へ 
希望ヶ丘なのに絶望ヶ丘と揶揄されるスゴいニュータウンとは? 北大阪ネオポリス
バスは発車すると、すぐに峠道に差し掛かる

 千里中央駅からバスに乗車するとすぐに、あたり一面何もない坂道に出迎えられる。よく言えば“のどか”、悪く言えば“殺風景”と言ったところだろうか。問題のニュータウンは、ここからまだ峠道をかけ上がった奥地。

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「揺れますのでお気を付けください」という放送が何度も流れるほど。バス酔いしないためには眠るが吉

 時間の経過とともにさらに勾配とカーブがきつくなり、ふと視線を車内に向けると乗車客はみな眠りの世界へ誘われていることに気づく。「寝た方がいいですよ、酔いますから」と乗車客。彼女は大学生で、毎日往復4時間、年間数十万円の定期代をかけて市内まで通学しているそう。その先、車のすれ違いが難しいほど狭い山道を進んでいくと、希望ヶ丘が現れた。

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峠道を走行すること約1時間。お目当てのニュータウンに到着した  人もいない、お店もない。漂白された生活空間

 山の中腹に広がるニュータウン。

果たして、どういう場所なんだろうか。終点の希望ヶ丘二丁目で下車し、冒険の旅へと繰り出した。辺り一面を見渡すと、美しい街並のニュータウン。バス通りは市道ながら、並木や植栽はよく手入れされていて、きれいな景観が維持されているし、子供たちが遊べる公園がたくさん存在し、ある意味ものすごく贅沢な土地の使い方がされている。しかし散策を続けていると、あることに気づく。ゴーストタウンと錯覚するほど、地元民の姿を一切見かけない。スーパーもなければ、コンビニも、病院も見当たらない。唯一見つけた飲食店、理髪店も、定休日のようで開いていなかった。というか営業しているのかすら疑問だが…。

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きれいに整備されているが、人はおらず、店は休業状態で、活気のある感じはしない

 さらに歩くと、希望ヶ丘四丁目のバス停でようやく地元民に出会うことができた。話を聞くと「昔はお店もあったけど、ここまで物資を運ぶのが大変だからか、どんどん閉店していって。そのせいか、周辺に空き家も目立ってきた」という。

なるほど、ちょっとスーパーに夕食のおかずを買いに行ってくる…となると、バスに1時間揺られて、最寄り駅まで繰り出さないとならないわけか。おちおち買い忘れもできない。

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地元の高校生の主張

 住宅街の中だけ見れば何の変哲もないが、周辺施設・交通環境を踏まえれば、絶望ヶ丘と揶揄されてもおかしくない厳しい状況。そんな場所に作られたニュータウンだから、この時代、好き好んで新規で住民になる者はいないのかも。しかし吉報もある。近年この界隈は、新名神の開通や北大阪急行の延伸に向けて、開発が著しいエリアなのだ。近い将来、北大阪急行が新箕面駅までつながり、駅へと向かうバスの本数が改善されれば、“絶望ヶ丘”から“希望ヶ丘”に生まれ変わるかもしれない。

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山奥にぽつんと取り残された街ということは、学生の主張からもうかがわれる

 

 ところで、この話には、まだ続きがある。こんな数奇な不動産物件にまつわる、話が大好きな諸君!  

 2014年から2019年まで世間を騒がせた不動産取引の問題点を、物件ファンという一般の方でも理解できるように丁寧に解説し、さらに現場の今を追跡取材し、6年分の、喜劇、悲劇と化した不動産取引の真のストーリーを凝縮! あの『クソ物件オブザイヤー』が初めて1冊の本となって発売中!! 

 さらに、この忖度しない姿勢で臨む、お騒がせツイッター集団「全宅ツイ」著による作品が『クソ物件オブザイヤー』も含めた6冊同時で発刊という怒濤のラインナップとなっているので要チェック!!

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