普段、何げなく使っている水道。実は携わる側は、人手不足に陥っている事実を知っていましたか。
『日本の「水」が危ない』六辻彰二 著より)■深刻な人手不足がもたらす非効率
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 資金だけでなく、人員の不足も水道事業の持続性を脅かしかねない。第1章で取り上げたように、水道職員は20年間で約2割減少しているが、人手不足は特に小規模な水道事業者で深刻な問題だ。

 確認しておくと、小規模な自治体は日本のほとんどを占める。簡易水道事業を除いた場合、2015年段階での水道事業者の数を規模別でみると、最も多いのは人口が1万人以上3万人未満の412市町村だった(日本水道協会『水道統計』)。これは全国の約30%にのぼる。人口5万人未満にまで枠を広げると、その合計は954市町村で、全体の約70%を占める。

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 人口規模が5万人未満の自治体では、平均で約11人の職員で水道事業が運営
されており、下水処理場の管理などを行う技能職がゼロであることも珍しくない。1万人未満の自治体に限ってみると、全ての職種を含めても平均で1~3人だ。

 人手が足りないことは、日常業務にも支障をきたすことになる。職員一人当たりにかかる負担が大きくなるため、本来は必要な作業さえ行えなくなることが珍しくないのだ。

 厚生労働省が2016年に実施した調査によると、全国の水道事業者のうち、漏水など水道管の定期点検を行っていなかった割合は74・4%にのぼった。同じ調査では、ポンプなど機械電気計装設備では28・1%で、配水池などコンクリート構造物に至っては91・5%で、それぞれ定期点検が行われていないことが明らかになった。

その多くは人手が少ない小規模事業者とみられるが、定期点検さえ満足に行えないとなると、安全な水道の根幹にかかわる。

 さらに、人員の不足は、水道事業の効率化も難しくする。業務を効率化する第一歩は現状を客観的に把握することにあるが、日常業務に追われていれば、改めて自らを振り返ることまで手が回らなくなりやすい。

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 厚生労働省は2009年、「水道事業におけるアセットマネジメント(資産管理)に関する手引き」を作成し、水道事業者に設備の更新需要と財政収支の見通しを試算するよう促した。ところが、このアセットマネジメントの実施率を自治体の規模別に比べると、2016年段階で50万人以上の都市では100%だったものの、人口規模が小さくなるにつれその割合は低下し、5万人未満の自治体では62・1%にとどまった。同じ年の調査で、台帳を整備して水道施設のデータを整理することさえできていない事業者が約39%にのぼることも判明したが、その多くはやはり小規模の自治体とみられる。

 このように人員が十分ではないことによって現状の把握さえできなければ、変化に順応するための対応も難しくなる。言い換えると、余裕がないために、これまでの業務を継続することで精いっぱいになりやすい。

 実際、2017年に厚生労働省が総務省とともに調査したところでは、料金改定の必要性を定期的に検証していない水道事業者は全体の64%を占めたが、これもやはり規模によって差があり、50万人以上100万人未満の都市では18・2%、100万人以上の都市では18・8%だったのに対して、1万人以上2万人未満の規模の自治体では69・4%、5000人以上1万人未満の自治体では66・4%にのぼった。社会環境が変化するなか、水道料金の見直しは避けられないが、小規模な自治体ではそのための検証すらできない状況がうかがえる。

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 また、同じ調査では水道事業にかかわる収支の見通しの作成状況も調べら
れたが、これを実施していない割合は、50万人以上100万人未満、100万人以上のそれぞれの都市で0%だったのに対して、1万人以上2万人未満の自治体では39・5%、5000人以上1万人未満の自治体では44・1%にのぼった。ここから、人手不足が深刻な小規模事業者は、現状の把握だけでなく、将来の見通しすら立てにくい状況にあるといえるだろう。

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