皆さんこんにちは! 茨城県でヨガのインストラクターの傍ら、新米猟師をしているNozomiです! さて、前回は罠師の山の歩き方、装備品、必需品アイテム、服装などについてお伝えさせて頂きましたね! 今回は、イノシシの栄養や食べ方など『ジビエ食』についてお伝えさせて頂きたいと思います。巷では『ジビエブーム』なんて言われていますが……そもそも“ジビエ”って何って思いませんか? 私も自分が狩猟を始めるまでは全く“ジビエ”について知らず「羊のことかなぁ……?」くらいにしか思っていませんでした。
さて、皆さん。そもそも“ジビエ”って何語でどんな意味なのでしょう? 日本ではあんまり馴染みがない気がしますね。それも当然、ジビエはもともとフランス語のgibierという単語で、食材として捕獲された野生の鳥獣の事を指し示しています。ちなみに英語圏ではゲーム(game)と呼ばれているそうです! 英語圏では狩猟のことをゲーム(game)と呼んでいるので、狩猟肉の事をそのままゲーム(game)と呼んだり、“wild game meat”と呼ぶのですって! へぇぇ!
ジビエ肉は生産管理が難しく、フランスでは“超”高級食材として扱われることもしばしばだそうです。日本ではなんとなく、もっと野性的なイメージがありますが……そういえばもともと“狩猟”は海外の貴族のたしなみだったので、狩猟で捕れたお肉も高級食材になるわけですね。
イメージと言えば! 先日、ザリガニを食べた話を女性の友人にした時に『ザリガニ!? おえぇぇぇーっ!』と言われてしまいました……(;´・ω・)
ザリガニも日本ではドブ川などにいるイメージが強く不衛生で汚いイメージがありますが、一匹の可食部位がとても少なく、風味豊かな味わいで、フランスではかのオマールエビに匹敵する高級食材なんです。逆に以前、アメリカに少しだけ住んでいた時に、寿司が食いたくてしょうがない病にかかり、現地の友人に『タコが食べたい!』と言ったら、『オーマイガー信じられない!』と言われてしまいました……。実は世界ではタコを食べる国は極少数で“汚らしいもの”というイメージがついているようです。
それでは話を戻してジビエの種類を見ていきましょう。
【主なジビエとその味わい】
《鳥類》
♦マガモ(colvert、コルヴェール、真鴨)
家畜ガモに比べて、身が引き締まって赤みが強く風味が強い。鴨鍋や鴨しゃぶがおすすめ。海外ではオリーブオイルでじっくり煮込むのが定番料理だそうです。
♦アヒル(canard、カナール)
脂身が多く、身が柔らかい。癖は弱く万人受けする味わい。北京ダックが有名ですね!
♦ヤマウズラ(perdreau、ペルドロー)
鳥のジビエとしては代表的。肉質は淡白な灰色のもの、野性味の強い赤色のものとがある。
♦キジ(faisan、フザン)
雄より雌の方が肉質が柔らかく、珍重される。うまみが強いが非常に淡泊。ローストやキジ鍋がおすすめ。鶏肉に比べ、低脂肪、高タンパクでカロリーも低い。
♦ライチョウ(grouse、グルーズ)
※日本では特別天然記念物の為狩猟できません。
フランスでは定番のジビエ料理。気候の変化で年々減少傾向にあります。若干の苦味とコクがあり、強い存在感のある味わい。欧米では少し前までは、ライチョウのローストが最高の贅沢として、クリスマスなどの特別な日にふるまわれていました。
♦ヤマシギ(bécasse、ベカス/ベキャス)
フランスでは非常に希少価値が高く、狩猟禁止になっている。超高級食材。肉質は柔らかく、繊細。味わい豊かで、うまみとコクがあり、非常に美味。内臓に高い価値が置かれ、ジビエの王様と言われています!日本では狩猟可能なので是非、食べてみたいジビエです……(ごくり)
《獣類》
♦野ウサギ(lièvre、リエーヴル)
ビエの中ではクセが強く、また肉質も硬くパサつきやすいが煮込むことによって緩和される。鍋にしたりや丸ごと煮込むことが多い。赤身が多いので、鉄分やミネラルが豊富で女性にオススメ。一昔前まで、ウサギ鍋はマタギにとって“冬のごちそう”と言われ親しまれていた。
♦シカ(chevreuil、シュヴルイユ)
クセの少ない淡白な赤身肉。しかし、急所を狙い、一発で仕留めないと、肉に血が回ってしまい臭くなってしまうため、ハンターの腕前が問われる。ローストやステーキにすると絶品。
♦イノシシ(sanglier、サングリエ)・仔イノシシ(marcassin、マルカッサン)
味、料理法等は豚肉に準じる。
♦クマ(ours、ウルス)
肉の大半は脂身で、口どけが良い。一般的に匂いが強いと言われているので佃煮やビール煮、大和煮など、においを消すような調理法が多い。コラーゲンが豊富で美容効果が高いので女性におすすめ。
♦アライグマ(ratons laveurs、ラトン・ラヴール)
赤身の部分はあっさりとした味わい。癖もなく肉質も柔らかい。クマと同じく、コラーゲンが豊富で美容効果が高い。ソテーや丸焼きがおすすめ。
さて! ジビエ肉について軽くお勉強したところで、私が狩猟しているイノシシ肉についてフォーカスを当てていきましょう。イノシシ肉についてですが、現代の日本ではイノシシ肉が日常でスーパーに並んだり、お肉屋さんで簡単に買えるわけではありませんよね。
それではイノシシ肉は、最近のジビエブームによって食べられ始めたのでしょうか?
いいえ!! そんなことありません。なんとイノシシ肉は遥か昔の縄文時代から、表向きでは生食が禁忌とされて禁じられていた平安時代~江戸時代でも広く食されていました。獣肉禁止だった当時、栄養価が高く貴重なタンパク源であるイノシシ肉を食べる為に人々はさまざまな隠語をつかいました。獣食がタブーだったので「牡丹肉」、「山くじら」などと獣以外の呼び名で呼んで食していたんですね。ダメって言われていてもどうしても食べたかったのでしょう……! ほほえましい努力です。
イノシシ肉の栄養素についてですが、イノシシ肉は低カロリーで脂質が低い上に、高タンパク、さらにビタミンB郡が豊富に含まれているというスーパーミートです(≧◇≦)そしてなんといっても、美味しい!
図1にイノシシ肉、豚肉、牛肉の100グラムあたりの栄養成分をまとめてみました!イノシシ肉のスペックの高さが浮き彫りになりますね!
ハイスペックなイノシシ肉ですが、気を付けて頂きたい点もあります。日本においては、野生のイノシシは屠畜場法(獣畜からの感染症の蔓延を防止するための規制に関する法律)の対象外になる為、十分な安全管理がされていません。野生に育った個体を狩猟するので、解体までに病原微生物や寄生虫の検査が行われておらず、寄生虫症やE型肝炎ウイルス、病原性大腸菌などの食中毒原因病原体に汚染されている可能性も大いにあります。実際に汚染された肉を食べていなかったとしても、汚染された肉を食べた人からの輸血などでも感染症を発症してしまった事例があります。近年のジビエブームの影響で国内のE型肝炎ウイルス感染者は毎年増加しているんです(; ・`д・´)
E型肝炎ウイルスは、70℃以上で10分間、 95℃以上であれば1分間の加熱により感染力を失います。
生食はホント駄目、ゼッタイ駄目です! 特に妊婦や高齢者の方がE型肝炎ウィルスに感染すると、劇症化になりやすく最悪の場合死に至ります。イノシシ肉のみならず、ジビエ肉を食べる時はしっかりと火を通して食べましょうね。
【終わりに】
今回は、イノシシの栄養や食べ方など『ジビエ食』についてお伝えさせて頂きました。今、大注目のジビエ肉ですが、リスク管理はご自身でしっかり行いましょう。しっかりと過熱して食べることが大切です。次回はジビエ肉についてもっと掘り下げて、皆さんが口にしているジビエ肉の可食部位や不可食部位、精肉過程などをお伝えしていこうと思います。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。