ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなどの肩書きを持つ筆者・小林久乃。本人が「幼少期からドラマオタクだ」と豪語するほど愛するテレビドラマの見どころについて語る連載、今回は特別企画。
2019年で彼女が「面白かった」と推す、ベスト5作品。第5~3位はこちら。さて、第1位の座に輝くのは?
※筆者個人の主観による選出ですので、各テレビ局等は関係ありません。 2位 フルーツ宅配便

主演・濱田岳 2019年1~3月放送 テレビ東京

<あらすじ>

“東京の仕事を辞めて、地元に戻った咲田真一(濱田)。知人のミスジ(松尾スズキ)に誘われてデリバリーヘルス『フルーツ宅配便』の店長見習いとして勤務することになる。ヘルス嬢たち、そして客も含めた全員がワケありというハードな環境で咲田は何を掴むのか。”
「2019年、一番心をさらわれたドラマには“ワケあり”が表現...の画像はこちら >>

 テレ東が制作する深夜ドラマのファンである。オーソドックスな作品もあるけれど、こんな表現規制が厳しくなってきた時代に、ぶっ込んだテーマを取り扱うことが多い。『フルーツ宅配便』もそのひとつだ。舞台は、まさかのデリヘル。もうその勇気だけでも称えたくなる。

 毎回ゲスト役の抱えたものが多すぎて、まるで『ノンフィクション』(フジテレビ系)を見ているかのような錯覚に陥った。

客にはクレーマー、真面目さゆえにデリヘル嬢に恋してしまう老人。覚醒剤をやめて、息子のために働いていたのに交通事故を起こして借金苦、またクスリに手を出してしまうデリヘル嬢。私たちの日常にはない世界だからこそ、物悲しさも教えてくれた。

「私がさ、なんかどっかで努力していたら、人生変わっていたのかな。人生って努力でどうにかなるものなのかな」

 そんな内容に一滴のオアシスになっていたのが主演の濱田岳さん。彼という中和剤がなかったら、このドラマは重すぎて観ることができなかったかもしれない。松尾スズキさんの風俗業なのに、軽さを見せつけてくる存在もお見事。さすがのキャスティング力も合わせて、やっぱりテレ東の深夜ドラマは最高だ。これからも日本の倫理ギリギリのところに向かって行ってほしい。

1位 『腐女子、うっかりゲイに告る。』

主演・ 金子大地 2019年4~6月放送 NHK総合

<あらすじ>

“母子家庭で暮らす安藤純(金子大地)、高校3年生、実はゲイ。年上の恋人はいるけれど、不安定な状況にいつも心は揺らいでいた。
そんな気持ちを癒すかのように、SNSで会った『ファーレンハイト』と心を通わせていた。同時に、普通の男子高校生として生きたい気持ちから、同級生の三浦紗枝(藤野涼子)とも交際を始めるようになる。”
「2019年、一番心をさらわれたドラマには“ワケあり”が表現されていました」

 今年の春に4年に1回くらいのペースでしかひかない、風邪を患った。それも高熱が続くという最悪のパターンで、とても苦しかったことを覚えている。もう仕事を諦めて、溜まったドラマ録画を見始めた。そこでハマったのが『腐女子、うっかりゲイに告る。』だ。存在は知っていたけれど、NHKとは思えないほどの思い切ったタイトルだと思った程度で、あとからまとめて見ようとしていた。それが見始めた瞬間、その世界観に引き込まれていく。

 主人公がゲイであることはそんなに珍しくもないけれど、高校生という多感な時期が設定というのはあまり聞いたことがない。自分の本当の姿を隠さなくてはいけないと必死になる純。でも抑えきれなくなる衝動。

描かれていく葛藤は、すべてが切なかった。彼が校舎から飛び降りたときは、泣いた。

 一瞬だったけど、純の彼女になった三浦さんの存在も大きかった。純のすべてが校内に知られても、変わらずに側に寄り添い、

「彼はいつも(周囲に)透明な壁を作っています。でも、それは自分を守っているんではなく、私たちを守っているんです。(中略)僕をなかったことにしないと、世界を簡単にして解いている問題が解けなくなってしまう。彼は自分が嫌いで、私たちが好きなんです!」

 泣いて、全校生徒に訴える姿はカッコ良かった。それから主演の金子大地さん。絶妙な長さの前髪ラインから覗く瞳、こぼれる涙。熱くさせてくれるものが大きかった。彼は絶対これから大きな俳優になることをドラマオタクが太鼓判を押します。

 こうして夢中になって一気に5話分を見ていたら、いつの間にか高熱が下がっていた。

私の解熱剤になってくれたことも、いい思い出の作品。久々にレコーダーから消すことができないので、この年末年始にまた見たいと思う。

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