退職後の年金不足が予想される中、工夫次第で老後は十分楽しめると主張する森永卓郎さん。定年後だからこそ自由になる時間を活用し、楽しく生きるためのコツを伝授してもらおう!(『一個人 2020年2月号』より抜粋)■家賃と食費を抑え、体力は増強しよう
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撮影⦿増本雅人

 少子高齢化が容赦なく続く日本では、年金制度維持の改革が否応なく進む。

現在の年金制度だと、厚生年金加入者の平均受給額は約15万円。国民年金は約6万5000円程度だ。しかし支え手の不足もあり、将来的な給付水準は相当額ダウンすると予想される。

「最終的には厚生年金で約4割、国民年金で3割程度減るだろうと考えられています。厚生年金なら夫婦で13万円くらいになるし、国民年金は1人4万2000円、夫婦で8万4000円。確かに減額にはなりますが、この金額の中で生活できれば、老後はなんの問題もないんです」

 と、経済アナリストの森永卓郎さんは語る。そんな金額では暮らしていけないのではないかという不安に対して、「10万円もあれば十分」というのが、モリタク式の老後生活術だ。

65歳以上は働くほど損する!? 年金制度改革とは

 今後、現役世代が減り、高齢者が増えれば年金給付額も減る。そこで「マクロ経済スライド」を発動し、毎年少しずつ年金給付額を減らす改革が進んでいる。
「在職老齢年金制度」も当面継続される見込みで、例えば65歳以上で月50万円(月収40万+年金月額10万)の収入があった場合、減額基準の47万円から3万円超過となり、年金額から超過分の半額1.5万円が引かれて年金月額が8.5万と損になる。


【在職老齢年金制度とは】
60歳以降厚生年金に加入しながら受け取る老齢厚生年金のこと●60~65歳未満
賃金と年金の合計額が28万円超の部分が一部、または全額カット(総収入で変化)

●65歳以上
賃金と年金の合計額が47万円超の部分が一部、または全額カット(同上)

※2020年からの減額基準の見直しが行われているが、60~65歳未満は47万円、65歳以上は据え置きの見込みも。■時間を有効活用して自分らしい生き方を発見しよう

 森永さんが薦める「お金を使わず定年後を楽しむコツ」その1は、なんといっても「住む場所」の選択。

東京、大阪などの大都市中心部から数十~百キロ程度離れた郊外なら、生活費はぐっと安くなる。一方で交通の便はいいから、いつでも中心市街地に出かけられるし、田舎特有の人間関係の煩わしさも少ない。まさにいいとこ取りだ。

 特に今、都市部の賃貸住宅に暮らし、家賃を支払っているという人なら、老後を迎える前に家を買っておいたほうがいいと森永さんは言う。家賃負担が年金生活を圧迫するからだ。そこで暗澹たる気持ちになった賃貸住宅派の人にも朗報がある。

「これからは家が余る時代。10年、20年先は住宅価格が暴落します。郊外に行けば、おそらく軽自動車を購入する感覚で、家が買えるようになるので、心配する必要はないですよ。定年後の一番いいところは、会社にしばられる必要がないこと。通勤しなくていいのだから、最寄り駅からバス便を使う場所でもOK。僕も平日は都心の事務所に寝泊まりしますが、週末は埼玉県所沢市の自宅に帰ります。

もう四半世紀以上住んでいますが、自然が豊かで空気もきれい。気分爽快ですよ」

 日々の生活費で住宅の次に主要項目といえば食費だ。「お金を使わず定年後を楽しむコツ」その2は「自分で食べ物を作る」ことだと森永さんは言う。

「僕は2年前から畑を、今年から田んぼを始めました。野菜は20種類近く作ったので、自分たちで食べる分くらいはほぼ自給できます。郊外に住めば、十分な庭が確保できるので、自宅の庭先で畑をやってもいいですね。今、うちの庭には大根が大量に植わっていて、奥さんが切り干し大根をせっせと作って干していますよ」

 まさに郊外暮らしはいいことずくめだが、唯一心配なのが健康だ。「お金を使わず定年後を楽しむコツ」その3は「体づくり」だと森永さんは言う。

「老化は足から来るので、絶対に足は鍛えた方がいい。ジムで筋トレもいいですが、畑や田んぼで働くと、もう十分なくらい体を鍛えられます。僕は毎週、中腰で田畑の草むしりして、ものすごく足腰を鍛えることができました」

 郊外暮らしで出費を抑えて、体力もアップ。これらのコツを実践すれば定年後の不安はかなり解消できるはずだ。

[お金を使わず定年後を楽しむコツ]

● 物価の安い郊外で暮らす
● 畑仕事(家庭菜園)を楽しむ
● 運動はとても大事、体を動かす
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