【猟銃について考える。散弾銃? ライフル銃? 空気銃?】
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 皆さんこんにちは! 茨城県でヨガのインストラクターの傍ら、新米猟師をしているNozomiです! 前回は鳥獣被害やその対策について私の考えを綴らせて頂きましたね。

今回はハンターを目指す皆さんなら1度は考える“猟銃”について綴らせて頂きます。

 

 銃を持とうと思っているそこの貴方! 最初の相棒(銃)はもう決まりましたでしょうか? 実は私は今、猟銃の所持許可の申請中ですが、たくさんのカタログを見たり、銃砲店に遊びに行かせていただいたりしているうちに種類の多さにびっくりしているところです(値段にも……)。

 何か物事を選択するときに、しっかりとデメリットを把握しておくことはとても大切な事だと私は思います。特に猟銃に関してはデメリットをしっかり把握することがリスク管理に繋がり、重大な事故を防ぐ事にも役立ちます。私の拙い文章を通して、少しでも“狩猟”に興味のある方、すでに“狩猟”に携わっている方、そして何より“いのち”と向き合っている方のお役に立てれば幸いです。 

 

 さて、ひと口に銃と言ってもハンドガン、ショットガン、マシンガン、スナイパーライフル等いろいろありますが、日本で一般人の皆さんが持てる銃というのは厳しく規制がされています。銃が持てるようになる為の条件やフローは次回に細かくお伝えしていきますが、基本的に私達一般人が銃を持ちたいと思っても好きな銃をホイホイポーン! と簡単に持てないようになっているのです。銃というものは本来遠く離れた動物や、人を殺傷する為の道具として開発・発展してきました。しかし、日本ではたとえ“護身用”であっても、“人”を撃つ為に銃を所持することができません。正当な理由で銃を持ちたい貴方にとっては、息が詰まるような法の厳しさや、手続きの多さがありますが、その厳しさが今日の世界に誇れる治安の良さを作ってきたというわけですね。

※日本では『狩猟』『有害鳥獣の駆除』、スポーツとして確立されている『標的射撃』『年少射撃資格者の指導』に使用する場合のみ、一定の条件下のもと銃の所持許可認定を受けることができます (もちろんコレクションや、遺品として銃を持つこともできません)。
※警察官や自衛官の方がお仕事で使う拳銃などについては、また話がややこしくなってきますのでここでは、一般人の皆さんが銃を持つ場合について綴らせて頂きます。

《日本で持てる銃の種類》

 さぁ一般人の皆さんが日本で一定の条件下のもと持てる銃の種類ですが、大きくざっくり分けて⑴散弾銃、⑵ライフル銃、⑶空気銃の三つに分類していきます。今回は簡単にですが、その説明をしていきますね。

狩猟といえば銃だけど、でも銃って一体どんなもの?

 

(1)散弾銃(ショットガン)

 多数の小さい弾丸(散弾)や一粒の弾丸(スラッグ弾)を発射する銃のこと。散弾の大きさを変えることにより、鳥類から小型獣類の捕獲に幅広く用いられ、スラッグ弾を用いて大型の獣類にも対応できる。散弾銃の中でも銃腔内のらせん状の溝(ライフリング)が無い、主として粒上の散弾やスラッグ弾を発射する【スムーズボア銃】と、銃腔内の1/2以下にライフリングがある主としてサボットスラッグ弾(命中や精度がより高い)を発射する【ハーフライフル銃】があります。

スラッグ弾の有効射程距離……約50メートル~約100メートル(参照元:狩猟読本)

サボットスラッグ弾の有効射程距離……約100メートル~約150メートル(参照元:狩猟読本)

 

★散弾銃ポイント★

①散弾銃という名前でも散弾だけでなく、一粒の弾丸(スラッグ弾)を発射できるよ!

②初心者が最初に手にすることが多い銃。

③散弾銃は【スムーズボア銃】と【ハーフライフル銃】があって、その違いはライフリング。

④【ライフリング】とは銃腔内のらせん状の溝の事で、銃身内で加速される弾丸に旋回運動を与え、弾軸の安定を図り直進性を高めるという役割があるよ。

狩猟といえば銃だけど、でも銃って一体どんなもの?

⑤スムーズボア銃よりもハーフライフル銃のほうが、命中や精度、有効射程距離が高い!

 

(2)ライフル銃

 銃腔内に1/2を超える長さのライフリングがある単一の弾丸を発射する銃。所持のためには原則として散弾銃を10年以上所持している必要がある。威力や精度、有効射程距離が散弾銃より高く、凄まじい威力を持ちクマ、シカ、イノシシ等、大型獣をターゲットとしている時に使われる。

ライフル弾の有効射程距離……約300メートル(参照元:狩猟読本)

 

★ライフル銃ポイント★

①いわゆるスナイパーが使っている銃!

②日本では基本的に散弾銃で【10年】実績を積まないと持てない……。

③もちろん威力や精度、有効射程距離は絶大。

④新人ハンターは全員憧れる(独断と偏見)。

 

(3)空気銃

 火薬を使わず、空気やガスの圧力を利用して弾丸を発射する銃。「エアライフル」とも呼ぶ。狩猟や射撃場での標的射撃に使われます。従来、狩猟で空気銃を使うとなると、鳥やせいぜい小型獣までのターゲットでしたが、最近は威力が強いものも開発・発売されており、イノシシやシカなどの大型獣にも使えるようになってきているため、狩猟でも近年人気が高くなってきているようです。また火薬を使用していないため非常に静かなのも人気の理由だそうです。ただ私の周りでは大物猟でエアライフルを使っている方がいないので実際はどんな感じなのか是非聞いてみたいですね!

 ちなみに連載17回で触れた麻酔銃などもこのタイプ。なかには火薬を使う麻酔銃もありますが、日本ではガス式のものが多いようです。

 空気銃には空気や炭酸ガスなどを圧縮・噴出させる構造の違いにより、スプリング式、ポンプ式、圧縮ガス式、プリチャージ式などがあります。そうそう……実は私はライフル射撃部で青春を過ごしました。ファインベルクバウというドイツのメーカーの空気銃を使っていましたが、スタイリッシュでとてもカッコよい銃でしたねぇ♪(^ω^) 標的射撃はとても楽しいですよ。

当時は忍耐力(暑さ)、精神力との戦いでしたね。今時代は設備も整えられてそんなことは無いそうですが。

エアライフル弾の有効射程距離……約30~70メートル

狩猟といえば銃だけど、でも銃って一体どんなもの?

 

★空気銃ポイント★

①「エアガン」という呼び名は日本ではサバゲーなどで使用する「エアソフトガン(遊戯銃)」を指すことが多いそうです。BB弾の! 狩猟用の空気銃の威力はエアソフトガンの15倍~50倍のものが多いようです。

②散弾銃やライフル銃に比べると弾が安いためお財布に優しい。

③メインターゲットは鳥類。

【猟銃を扱うという事。事故例から考える】

 さて、皆さん。私はこういった記事を書かせて頂いている上で、銃の素晴らしさや便利さをお伝えしていく中で必ず一緒にお伝えしなければならないと思っていることがあります。それは“猟銃による事故”についてです。序盤でお伝えさせて頂いたように、銃というものは本来遠く離れた動物や人を殺傷する為の道具として開発・発展してきました。つまり、銃を扱うという事は獲物の命だけでなく、人の命を奪ってしまう可能性が大いにありうるという事です。

 環境省のホームページに平成25年から27年までの「狩猟により発生した事故件数」というデータが上がっています。そのデータによると、平成25年度の全国での狩猟事故発生件数は87件(うち8名死亡)、平成26年度は73件(うち5名死亡)、平成27年度は74件(うち7名死亡)との事でした。あってはならない話ですが、それでも毎年一定の割合で事故が起こり、それによって亡くなってしまう方がいるのです……。当たり前の話ですがこの数字の中に、故意に事故を起こしたいと思って事故を起こした人はいません。いったいどのような状況で事故を起こしてしまうのでしょうか。まだ銃を持っていない貴方には想像もつかないはずです。

 

《近年起こった猟銃による事故例(Nozomi調べ)》

2012年/山梨県大月市 登山中の女性の太ももにイノシシ猟をしていた男が撃った弾が当たり大けが。

2014年/福岡県みやこ町 山林にぎんなん採りに来ていた男性が、イノシシ猟をしていた男の猟銃で胸を打たれて死亡。

2016年/兵庫県佐用町 イノシシと間違え猟銃発砲。狩猟仲間の男性死亡。 

2017年/岩手県花巻市 有害鳥獣駆除中に猟銃が暴発し男性が死亡。

2018年/北海道恵庭市 猟師が森林管理局の職員をエゾシカと間違え誤射。
撃たれた職員死亡。業務作業中の職員はオレンジ色のヘルメットと赤い上着を着用していた。

2018年/千葉県鴨川市 サルの駆除をしていた同市の男性が散弾銃を発射したところ、近くに住む男性の頭部にあたり死亡。

2019年/岐阜県下呂市 空き地で有害駆除を終えた男性が散弾銃から弾を抜いたところ銃が暴発、近くにいた別の男性に当たり死亡。

 

 とても痛ましい事故ですね……。上に挙げた事故例ですが、ほんの一部にすぎず、けが人はもちろんの事、死亡事故は毎年と言ってもいいほどに起こっています。亡くなられてしまった方の無念、ご遺族の悲しみ、怒りはきっと計り知れない事でしょう……。このような事故を取り上げさせて頂くにあたって、事故に遭われてしまった方に深く哀悼の意を表すと共に、いち狩猟に携わる者として、このような悲しい事故の再発防止に全力で努めていきたいと思います。

 事故原因を調べてみたところ、狩猟中の「自損事故」のほとんどが【暴発】でした。暴発事故は1年目の新米ハンターが最も合いやすい死亡事故だそうです。銃の取扱いに慣れていないという事ですね。皆さんどうか気を付けてくださいね……。

ちなみに、猟銃とは関係ありませんが、狩猟中の死亡事故例として、獲物(イノシシ、クマ、シカ)からの逆襲による死亡事故や、マダニ感染症での死亡事故、滑落死、転倒による死亡事故などもありました。

 一方、本当にあってはならない「他損事故」の原因ですが、そのほとんどが「獲物と見間違えた」「獲物だと思った」という【思い込み誤射】が原因です。暴発や流れ弾、跳弾などもありましたが、ほとんどの事故がしっかりと獲物を確認してから引き金を引いていれば防げたであろう事故です。銃の威力は凄まじいです。獲物を打ったつもりが貫通、その先にいた人に当たり死亡という事故もありました。

 

 私は、ハンターが増えてほしいと願う一方で、狩猟を気軽に始めてもらいたいとは全く考えていません。

 興味を持ってくれた方には是非、猟銃を持つという事とは、狩猟をするという事とはどういう事なのかを真剣に考えてもらいたいと思っています。

 

 山でイノシシと対峙している時、いつ何かの拍子でイノシシがこちらへ突っ込んでくるかもしれないといつも思っています。この間は山で100キロ級の子連れイノシシと至近距離で(10メートルくらい)遭遇しました。向こうが運よく反対方向の山の方へ逃げてくれたので事なきを得ましたが、こちらに向かってきていたら私は今この記事を書けていないでしょう。私を含めて、ハンターを志した者ならば誤射や暴発事故、獲物の逆襲によるケガや死亡事故の覚悟はある程度はできているのだと思います。もちろん絶対に避けたいですが! だけど、例えば登山している方や、山菜を取りに来ている方、一般の方は違います。いくら駆除活動とはいえ、新米だったからとはいえ、見間違えたからとはいえ、撃ってしまえば私たちは“犯罪者”になってしまうのです……。銃を持つという事は、そういう事なのです。

 

【光と闇。終わりに】

 いかがでしたでしょうか。今回は“猟銃”についてまとめていきました。

 すべての事象には“光”と“闇”の部分があります。

 私たちは猟銃が自分たちにもたらしてくれる恩恵や利益といった“光”の部分を享受している以上、しっかりと猟銃が引き起こす事故や事件といった“闇”の部分を理解し、心に留め置かなくてはなりません。

「自分ならば大丈夫だろう」
「経験上これなら大丈夫だろう」

 ……そういった油断や思い込みが、あなたやあなたのご家族、そして何も関係のない人たちを“闇”に飲み込んでしまうのです。

 この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。

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