矢内東紀(以下:矢内) 「和田秀樹先生の発達障害って、二次障害とかは、何かあるんですか?」
和田秀樹(以下:和田) 「二次障害は意外になくて。ほら、元マイクロソフトの成毛眞さんが“自分は発達障害者だ”って名乗ってて。以前、成毛さんと(書籍の企画で)対談をした時に、“和田さんは、発達障害なのに、よく勉強ができたねえ”って言われて、僕は“勉強が好きだったんじゃなくて、点取るのが好きだったから、ゲームのつもりでやってました”って言った記憶があるんだけど。基本的に、いまだに僕は、発達障害的人生っていうか、世間様は、僕が医者もやったり、映画監督もやったり、大学の先生もやったり、商売もやったりしてると、“すごいですね”って言うんだけど、僕は1か所にとどまっていられないから、毎日、同じことをすることが耐矢内れないわけですよ。
矢内 「イスラム法学者の中田考先生が、イスラム国渡航事件の時に、“真っ向からかばってくれたのは、和田秀樹先生と、池内恵先生だけだった”って言ってたんです。要するに、ほかは、みんな、様子を見ながら、発言したりしていたと。それで、正義を貫くというか、ちゃんと言うことを言うというのは、空気を読めない障碍者にしかできないんだ、ということを言っていましたね。」
和田 「結局、いまの時代は、空気を読むのが当たり前すぎちゃってさ。たとえば、老人から免許を取り上げるとかさ。飲酒運転ひとつとってみても、警察って、どさくさに紛れて、ひどいことするなあと思うのは、東名でトラックが車にぶつかって、2人を焼き殺した事件(1998年発生の『東名高速飲酒運転事故』。飲酒運転のトラックに追突された乗用車が炎上し、幼児2名が焼死)でも、福岡の3人突き落とした事件(2006年発生の『福岡海の中道大橋飲酒運転事故』。飲酒運転の車に追突された乗用車が博多湾に転落し、幼児3名が溺死)でも、ウイスキー1本くらい飲んでいる泥酔運転なわけですよ。泥酔運転を厳罰にするのは当たり前だけど、いまビール1杯飲んだって、交通違反の点数は13点でしょ。それによって、田舎の飲食店をバカバカつぶしてさ。ビール1杯で大事故が起こった報道は全然ないのに、酒気帯びを厳罰化して、地方の飲食店をつぶすわけですよ。そうやって田舎いじめをしているわけだよ、東京は。それなのに、田舎の人間まで空気を読んじゃって、飲酒運転を悪いことだと言っているわけじゃないですか。
矢内 「言えないですね、やっぱり。」
和田 「だからさ、悪いことって、程度があるのに、もう、オール・オア・ナッシングじゃん。僕は、ふだんは老年精神医学をやっていてさ。たとえば、70歳以上で認知機能テストを受けて、点数が悪かったら医者のところに連れていかれて、医者が『認知症』って診断を書いたら、免許が取り上げられるわけです。ところが、認知症って、軽い人も、重い人もいるわけ。で、軽い人だったら運転できるんだよ。つまり、認知症の診断がついたら免許を取り上げるんじゃなくて、軽い間はいいけど、“ここよりも悪くなったら取り上げるよ”って話はわかるんだけど、認知症だったらみんな取り上げるっていうのはね。だって、認知症ってさ、アメリカ元大統領のレーガンだって、英国のサッチャー元首相だって、だいたい、辞めてから6年目くらいに告白しててさ。サッチャーに至っては、人の顔が区別つかなくなくなって、妄想も出まくっていたしさ。レーガンは、辞めた後も自分が大統領だと思ってたわけよ。それって、もう、普通に考えたら、ふたりが最高権力者だった時期に、記憶障害ぐらいはあったはずなのね。要するに軽度の認知症を発症していたわけです。
矢内 「自分は、臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心・やり方・ペースの維持を最優先しがちな発達障害の一種で、波があるわけです。僕も、いろいろ薬を飲んでるわけですね。それで、たとえば、ダイビングしようにも、必ず「薬、飲んでますか?」って聞かれて、『飲んでいる』に印をつけちゃうと、絶対にできない。0か100なんですよね。」
和田 「結局、スペクトラムを認めないから、いわゆるウソをつかせるわけじゃない? 面接入試だって、僕は何が気に入らないって、ウソなわけでさ。僕らが慶応の医学部を受けた時はさ、二次試験で面接入試があって、東大と慶応を受けて、両方とも受かったら、“どちらに行かれますか?”って聞かれるんだ。それなのに、みんな、“慶応に行きます”ってウソつかないと合格できないと言われていた。僕はけたくそ悪いから慶応の二次は受けなかったけど。だから、いまはどうか、わからないけど、ある時期の慶応の医学部って、ウソつきばかりが入るわけ。」
矢内 「問題発言だなあ(笑)。」