【同じ銃でも構造が違うって!?】
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 皆さんこんにちは! 茨城県でヨガのインストラクターの傍ら、新米猟師をしているNozomiです! 前回は“銃”についてその取得フローや金額などについて綴らせて頂きましたね。今回は銃の選び方やその構造上の分類、よく聞く用語の解説などをさせて頂きます。

当たり前ですが、構造が違うという事は、それぞれの特性も違ってきます。たくさんの銃の中から貴方に最適な相棒を選ぶのは、とても至難の技だと思います。銃のメーカーさんのご紹介もさせて頂くので、これから銃を選ぶ人は是非参考にしてみてくださいね! 私の拙い文章を通して、少しでも“狩猟”に興味のある方、すでに“狩猟”に携わっている方、そして何より“いのち”と向き合っているすべての方のお役に立てれば幸いです。 

 さて、狩猟で使用する銃には「装薬銃」と「空気銃」がありますが、多くの方がイメージするのが「装薬銃」だと思います。装薬銃とは、火薬を燃焼させる時に発生するガスの圧力で弾丸を飛ばす銃です。銃の歴史はとても古く、西暦800年頃の中国ではすでに、竹筒に火薬と金属片を詰めた「火槍」という散弾銃のようなものがあったそうです。その後1000年以上に渡る歴史の中で、銃はいろいろな形を生み出して来ました。代表的なものをいくつか紹介します!

初心者のための銃選び ~あなたにピッタリの銃がきっと見つかる
狩チャンネルメンバーと銃砲店へ

 

■装薬銃の種類いろいろ■

1.水平二連銃
  銃を構えた時に、銃身が2本左右に並べてついている銃です。それぞれに1発ずつ装填出来るので、2連発で撃つことが出来ます。「両引き」と言って、左右の銃身を自由に撃ち分けられる様に引き金が2本ついているものが多いです。構造が単純なため軽量で、野外での狩猟に向いています。ただし、耐久性が比較的低く、銃自体の軽さから射撃時の跳ね上がりも大きいので、近年は数が少なくなっているようです。

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水平二連銃

 

2.上下二連銃
  水平2連が左右なら、これは文字通り上下に銃身を重ねた銃です。こちらももちろん2連発。水平2連と違い、引き金が1本のものが多いです。これは「単引き」といい、引き金を引くたびに1発ずつ発射されます。上下どちらの銃身から先に撃つかは、固定のものとセレクターで変更できるものがあります。クレー射撃などの競技では最も一般的な銃ですが、狩猟に使われている方もたくさんいます。

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上下二連銃

 

3.自動(装填式)銃
 銃身が1本しかありませんが、射撃時のガスを利用した自動装填機構と弾倉がついていて、引き金を引くだけで連続して射撃出来る銃です。薬室に1発+弾倉分(散弾銃は2発、ライフル銃は5発)だけ撃てますので、狩猟にとても向いています。ただし、銃に適した強さの装弾を使わないと装填や排莢(はいきょう)に不具合が生じる可能性があることや、射撃ごとに空になった薬莢が自動排莢で隣の射手の方へ飛んでいってしまう事などから、射撃競技では敬遠される方もいます。

※排莢(はいきょう)とは?発射を行った後に薬室に残る使用後の薬莢を銃の外に排出すること。

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自動(装填式)銃

 

4.スライド式銃(スライドアクション式銃、ポンプ式銃、レピーター)
 自動銃の装填機構を手動で行う銃です。左手で銃を支える部分(右手で引き金を引く場合)が前後にスライドする様になっており、射撃ごとにこの部分を前後にガッシャンと操作し、排莢と装填を行います。


 その動作の様子から、「スライドアクション」「ポンプ」、日本語では「しゃくり」と呼んだりもします。自動銃の大元がこの形式の銃なので、連発銃という意味で「レピーター」とも言います。自動銃と構造的に近いですが、装弾の種類に関わらず手動で確実な排莢・装填が出来る事が利点です。逆に、スライドを行わない限り次の射撃が出来ない為、クレー射撃等の競技射撃ではあまり使われていないようですね。毎回スライドするの大変ですもんね……。

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ポンプ式銃

 

5.ボルト式銃(ボルトアクション銃)
 いわゆる「スナイパーライフル」のような銃です。銃身の後ろについたボルトを前後に動かして排莢・装填を行います。ただスライド式とは違い、銃から片手を離さなければボルトの動作が出来ないので、連続した射撃には適しません。構造上どうしても1発勝負になってしまう銃ですが、非常にシンプルな構造なので、精度や耐久性が高く、遠距離の射撃を行う狩猟やライフルでの射撃競技に向いています。

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ボルト式銃

 

6.アンダーレバー銃(レバーアクション銃)
 引き金のすぐ下にレバーが付いていて、手動で上下に動かすことで排莢と装填が行える銃。19世紀後半にアメリカで開発された形式で、西部劇などの映画にもよく登場します。スライド式とボルト式の中間の様な性能なので実用性は低く、競技用としても狩猟用としてもほとんど使われていない。

ただし、独特の操作感や派手な見た目から、少なくない数のファンがおり、未だに生産はされています。

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レバーアクション銃

 

7.元折式単発銃
 1本の銃身に1発だけ装填が出来る銃。2連銃の大元となった形。散弾銃が主ですが、まれにライフル銃もあります。「元折式」とはレバーの操作などで銃が途中で折れて、露出した薬室に直接装弾を込める方式です。上下2連や水平2連もこの方式です。

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元折式単発銃

 

8.複合銃
 散弾用の銃身とライフル用の銃身が組み合わされた銃。水平・上下2連散弾銃の片方がライフルになっているものや、水平2連散弾銃にライフルが組み合わされたものなど、複数の形がある。日本ではライフル銃として扱われますが……非常に高価なためほとんど普及していません。

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複合銃

 続いて「空気銃」についての説明をしたいと思います。

「空気銃」は火薬を使用せず、空気や不燃性のガスを用いて弾丸を発射する銃です。空気・ガスは銃本体に充填されるため、薬莢などは無く、弾丸を銃や弾倉に直接入れます。

ライフル銃のように1発ずつ発射するものなので、銃身にライフリング(旋条)が切ってありますが、銃刀法上ではライフル銃とは別として扱います。玩具のエアーソフトガンに近い構造のものもありますが、もちろん銃なので猟銃等所持許可証がなければ所持することは出来ません。

 装薬銃と比べて比較的新しい形式の銃ですが、実は15世紀には吹き矢を原型とした空気銃が発明されていて、18世紀のオーストリア帝国では今とあまり変わらない形の空気銃を使った狙撃兵部隊もあった様です。

 

●空気銃の種類いろいろ●

1.スプリング式空気銃
 圧縮されたスプリングの力で銃に内蔵されたピストンを押し、圧縮された空気で弾丸を押し出す形式です。銃身を折ってスプリングを圧縮する中折式と、レバーを引いてスプリングを圧縮するレバー式に分かれます。構造が単純で安価な事から広く普及した形式ですが、射撃の瞬間にスプリングやピストンの反動が大きく影響し、射撃精度を高めづらい事から今はあまり使われていません。

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中折スプリング式

 

2.ポンプ式空気銃
 銃に空気を圧縮するためのポンプが付いており、貯めた圧縮空気を一気に開放する事で弾丸を飛ばす形式。競技用では基本的に1回のポンピングで射撃し、空気圧も固定される装置がついていますが、狩猟用ではポンピング回数を増減することで距離や獲物に応じた威力を選択できる様になっています。射撃時の反動は少ないですが、射撃ごとにポンピングをする必要があるため、他の形式と比べると速射性が低くなります。しかし構造的に頑丈で故障も少なく、銃と弾丸だけ射撃が行える容易性から、今でも多くのポンプ式銃が使われています。

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シングルポンプ式

 

3.圧縮ガス式空気銃
  空気以外の圧縮されたガス(主に液化炭酸ガス)を使い、弾丸を発射する形式の銃です。使い捨ての小型ボンベを銃に入れて気化したガスを小出しに使うので、引き金を引くだけで射撃が出来ます。

スプリング式やポンプ式と比べて速射性が高く、弾倉を備えた連発式(5発まで)もありますが、外気温によってガスの圧力が左右される事や、二酸化炭素を放出するため環境への影響等もあり、現在ではあまり普及していません。

 

4.プリチャージ式空気銃
 圧縮ガス式に似ていますが、脱着式のボンベに高圧な空気を充填し、それを使用して弾丸を発射する形式です。反動も少なく連発も可能で、今は射撃競技・狩猟ともに主流の形式となっています。空気の充填には自転車の空気入れに似たハンドポンプや、潜水用ボンベに使用する呼吸用圧縮空気を使います。200気圧と非常に高圧な空気を使うため、銃自体の構造がデリケートで維持管理に手間が掛かるうえ、ボンベや充填用の補機類が必要で、金銭的な負担も大きくなります。銃自体も高価なものが多いですが、最近では鹿や猪の狩猟でも使えるほど威力の高いものも出てきています。私も高校生の時(ライフル射撃部所属)はプリチャージ式を使っていましたよ(*‘∀‘)♪ すごく使いやすかったですが、ハンドポンプはつらかったなぁ……。

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プリチャージ式競技用エアピストル

 

【今更聞けない!? よく聞く用語の解説!】

さてさて、銃の構造などを説明したところで、よく聞く用語の解説などをしていきたいと思います。銃砲店に行ったときに当たり前に専門用語が飛び交いますが、なかなか基本的な事を聞きたくても恥ずかしくて聞けないですよね……!

 安心してください! 私も分からなかったのでまとめておきました!

 

Q. 絞り(チョーク)って何?
 散弾銃は一度にたくさんの弾丸を発射し、標的への命中精度を高めるものですが、銃身の長さと装弾の組み合わせで散弾がどのくらい広がるのかはある程度決まってしまいます。それを調整するのが絞り(チョーク)です。銃口先端部の内側(散弾の通り道)が狭く絞られているものがあり、これにより散弾の広がる範囲を変えています。全絞り(フルチョーク)、半絞り(ハーフチョーク)、平筒(シリンダー)と絞る径により主に6種類あり、中にはスキート競技用に銃身よりも銃口の方が広がっているものも存在します。

遠距離の目標には、散弾が広がりすぎて散弾の隙間を抜けてしまわぬように絞ったチョーク、近距離の目標には、広い範囲を狙える絞りの緩いチョークを使用します。2連式の銃では1発目と2発目で違うチョークを使うというような使い方も出来ます。
 銃身そのものの先端を絞って作られた固定式もありますが、今は交換できるものが一般的で、銃を買うと複数のチョークが付属してくる場合もあります。ただし、チョークの選択を間違えて使用不可能な装弾(鉛以外の鉄系装弾等)を使ったりすると、チョークや銃身にダメージを与えてしまう場合もあるので、メーカーの指定に沿った装弾を使うように心がけましょう。

 

Q. 口径って何?
 銃身の内径、つまり使用する装弾の太さを表すものです。散弾とライフル銃で表記の仕方が違い、またメートル法とヤードポンド法も入り混じっている為、非常に分かりにくいですが、自分が使うものだけ覚えれば大丈夫です。
 散弾銃の口径は「12番」「20番」などと番手で表記します。「12ゲージ」と言ったりもします。
 この呼び方は使用する弾丸の大きさから来ています。1ポンドの鉛玉(約450g)が入る銃身の直径を「1番」とし、2番なら半分重さの鉛玉が、3番なら1/3の重さの鉛玉が入る直径というふうに決まっており、番手の数字が上がるほど銃身の内径は細くなっていきます。日本で主に使われる散弾銃は「12番」「20番」「410番」の3つが主ですが、410番だけは例外で「0.410インチ」を意味しています。
 ライフル銃の口径は、一般的にライフリング(弾丸を回転させるために銃身の内側に掘られてある溝)を切る前の銃身の内径(山径)を表示しています。例えば「30口径」と呼ぶ場合、銃身の内径が「30/100」インチである事を表し、7.62mmであることを示します。この場合0.30インチと言う意味で、「.30口径」と表記してあることも多いです。ただし、「.308」などの様にライフリングを切って広がったあとの直径(谷径)を表記してある場合もあるので、注意が必要ですね。

【あなたは知ってる? 世界の主要猟銃メーカー!!!!!】

 自動車や家電の様に、銃にももちろん製造しているメーカーが存在します! 日本では銃砲店に立ち寄る機会があまりないので、メーカーの名前もそれほど知れ渡ってはいませんが、カタログを開けば数え切れないほどの会社が銃を作っていることがわかります。その中からいくつか有名なものを挙げてみましょう(´∀`*)

 

[レミントン(アメリカ)]
 後述のウェンチェスター社と並びアメリカの狩猟用銃の大手です。実は銃だけで無く、かつてはタイプライターなどの事務機器やシェーバーなども製造していました。

[ウィンチェスター(アメリカ)]
 銃の種類で解説したアンダーレバー銃の中でも特に有名なのが「ウィンチェスターライフル」です。 もちろんアンダーレバー銃だけでなく、現代的な自動銃なども製造しています。

[ブローニング(アメリカ)]
 天才銃器設計者と言われるジョン・ブローニングが創業した会社です。ウィンチェスター社に新型ライフルの設計を売り込み大ヒット商品を作ったり、スライド式銃を発明したりしました。現在はベルギーにあるFN社の傘下となっていますが、そもそもFN社とブローニング自身が親密な関係だったようです。

[ベレッタ(イタリア)]

 世界で最も古い銃器製造メーカーです。会社としての創業は1680年(驚!)ですが、創業者の事業としては1526年までさかのぼります。さすがはファッションの国イタリア、銃もどことなくおしゃれで気品のあるデザインをしています。日本語の公式サイトもありますので気になる方はぜひ覗いてみてくださいね。

[ベネリ(イタリア)]
 こちらもイタリアにある銃器メーカーで、もともとはオートバイのメーカーです。日本では射撃競技のイメージが強いですが、海外では公的機関で多く採用されています。近未来的なフォルムや、樹脂素材を多用した独特の質感は、猟銃のカタログの中でも一際異彩を放っています。

[ミロク(日本)]
 実は日本でも銃は作られています。え、日本じゃ銃なんて売れないのにどうして? と思いますよね。その通りで、ミロクで製造された銃の99%は海外へ輸出されています。しかし、ミロクの銃の精度・耐久性は海外でも非常に評価が高く、自社製品以外にもブローニング社やウィンチェスター社の銃のライセンス生産まで行っています。バラク・オバマ前米大統領がミロクで製造されている散弾銃でスキート競技に興じる姿などが報道された事もあるんですよ。 私が作ったわけではないですが、誇らしくなっちゃいますね……!
 日本の銃はすごいんだぞ! エッヘン!

 

【終わりに。結局、素人にはどの銃がいいの!?】

 いかがでしたでしょうか。今回は銃の選び方やその構造上の分類、よく聞く用語の解説などをさせて頂きました! ここまで読んで頂いた方、自分はどんな銃が持ちたいか決まりましたか? おそらく多くの方が「余計に分からなくなった!」などと思っているでしょう(笑) 「何にでも使える銃はないの?」なんて思っているかもしれません。ですが、銃も道具ですので用途にあったものが必ず存在します。というか、熟練のハンターさんの多くが沼にハマり複数の銃を所持しています。競技用の精度が高い銃、大型獣用の威力の高い銃、鳥猟用の軽い銃、などなど目的に合った銃が必ずあるはずです。「それでもあえて」最初の銃は何が良いかと問われれば、うーーん……そうですねぇ。私は上下2連の散弾銃が良いと思います。リサーチした結果、メンテナンスが簡単で、市場に数が多いので中古価格が比較的安いものが見つかりやすいのかなぁと思います(笑)

 次回は猟期2年目も終了している頃ですので、その振り返り、成果、去年からの工夫や失敗談などについて綴らせて頂きます。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。

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