皆さんこんにちは。
まずは結論からお伝えさせて頂くと、今期のイノシシ捕獲数ですが今時点(2020年3月中旬)で去年より十頭以上も多く捕獲することができました!(去年の成果は数頭でした……。)
とても嬉しいです! 茨城県はイノシシ猟に限り3月31日まで行う事ができますので、今からがラストスパートです。ケガの無いように丁寧に努めていきたいと思います。捕獲数の話をすると必ず『捕獲数は大切ではない、それが全てではないので囚われないほうが良い』とのアドバイスを受けるのですが、今回は【新米猟師の見切りや見立て、罠の改善点による捕獲数の向上】について焦点を当てさせて頂きますので、捕獲数を一種の秤として重きを置いてお話させて頂きたいと思います。
※獲物の動きや特性は地域によって様々です。やり方も猟師さんによって千差万別ですので一つの意見として参考までにお考え下さいね。
【撃沈の1年目からどこを改善した!? 1年目と2年目の違いについて】
それではさっそく狩猟に関係する様々なことについて、ひとつひとつ区切って1年目と2年目を比較していきたいと思います!
■見立て・見切りについて(※事前に山に入り、罠をかける場所を決める事)
<1年目はどうだった?>
ほかの罠師さんに遠慮をしていたのと、見回りのしやすい場所ばかりにこだわっていたので、山すそばかりに罠をかけていました。
教科書や動画で勉強したイノシシの足跡や〈けもの道〉っぽいところを見つけるも、それが今使われている物か、昔の物か、たくさんけものが通っているところか、たまにしか通らないものなのかは分からない。教科書で〈けもの道〉についてしっかりと勉強できますが、その〈けもの道〉の使用頻度などについては、本や動画ではなかなか学べませんからね……。何となくそれっぽいところに仕掛けるしかありません。足跡やフンの新鮮さもよくわかりません。当てずっぽうに仕掛けます。なので、もちろん罠にはかかりません……。
罠をかけても数週間たっても掛からなかったら不安になって、移設したりもしてました。
<2年目の改善点>
なるべく時間を見つけては、どんどん山の中に入る、観察する。とにかくたくさんの動物の痕跡を見つける事が大切だと師匠に教えてもらいました。
師匠みたいになるのにはまだまだかかりそうですね……! そして、自分がここだと決めたら罠の移設はなるべくはしないほうが良いそうです(この辺は人によって考え方が違うみたいです)。先日イノシシを捕獲した罠は猟期が始まってすぐに仕掛けたもので、かけてから3か月後に見事大きめのメスイノシシがかかりました。じっと自分を信じて待つのです。
★見立て・見切りポイント★
●どんどん山に入ろう。山を観察しよう! 極めると何日前に何キロぐらいの獲物がどこ を通ったのか、次はいつ通るのかわかるようになるらしいよ!(驚)
●獲物が通った後の落ち葉は不自然な立ち方をするので、よく観察してみてね。
●自分を信じて、罠の移設はせずに待つ!(Nozomi師匠流、諸説あり)
■罠作りについて(※くくり罠)
<1年目はどうだった?>
インターネットを駆使して、見よう見まねで作ってみました。作った当時はわかりませんでしたが、結論から言うとバネが短くワイヤーが閉まる速度が遅くなってしまったことと、踏み抜き筒が小さかったことから、見立てや見切りが未熟な私には獲物を効率よく捕らえることができませんでした。特にバネが短かったのが致命的で、「空はじき」(罠が作動していても、獲物に逃げられてしまった状態)ばかりでした。そして猟期が始まるぎりぎりに罠が完成した為、罠を作っても特に匂い消しなどができなかったです。

<2年目の改善点>
師匠の使っている罠や既製品の罠を分解して、考察。良いところを真似たりしながら改良を加えました。具体的にはバネを長く、踏み抜き筒を大きいものに変更。なるべく猟期が始まる1ヵ月前には完成させるようにして、猟期が始まるまでは雨ざらしにしてしっかり匂い抜きをしました。「空はじき」は圧倒的に減り、捕獲率は格段に上がったように感じます!
※詳しい作り方はYouTubeチャンネル【Nozomi’s狩チャンネル】の動画をご覧ください。
リンク:https://www.youtube.com/watch?v=-hq6Jpidu6I&t=459s

★罠作りポイント★
●他の人の罠のいいところをどんどん真似よう! 周りに罠をやる人が居なければ、既製品を買って研究するのもあり。今どきはインターネットでたくさんの種類があります。
くくり罠の研究は誤作動を起こして怪我したりするので気を付けてくださいね(特に引きバネ式は……本当に……気を付けてね……(経験あり))。
●罠を作ったり、買ったりしたら、2週間から4週間は雨ざらしにして臭いを消そう。煮込む人もいます(匂い消しをしない人も、しても変わらないよっていう人も、もちろん居ます。
■解体について
<1年目はどうだった?>
まだ罠猟を始めて間もないころは師匠にも出会っていなかったので、茨城県の主催するスキルアップセミナーに積極的に参加したり、YouTubeや本で勉強していました。解体だけは、実際にやってみるしか上達の術はないと思います。私の場合、事前に動画や本で得た知識ははじめての実践では何一つ役に立ちませんでしたね……。
はじめて私が解体した獲物は、すでに絶命していたので血抜きができていなかった上に、10時間以上かけての解体、精肉でした。吊るし台も無かったので、軽トラの上にブルーシートを敷いて、その上での解体です。血は緑色に変色し、すごいにおいを発していて倒れそうになりながら解体しました。(※連載第8回『はじめての解体。私が解体をする理由』参照)。関節を外すのにも小一時間かかり、ナイフで外すのを諦めて斧やナタ、のこぎりを使って無理やり関節を外し、最後はどこの部位かもわからないほどにぐちゃぐちゃになってしまいました。それでも自分が初めて捕った獲物はしっかり解体して食べました。お肉としての品質は置いといて、忘れられない味になりましたね。
ちなみに、皆さん、経験上、血抜きができなかった個体や、すでに絶命してしまった個体は食べるのはお勧めしません。血抜きによる臭いや肉としての品質の違いを学ぶには良いかもしれませんが……。

<2年目の改善点>
積極的に上手な人の解体を見させてもらったり、師匠を見つけて教えてもらったりしました。また、解体方法に捕らわれず、丸一日かけて観察・勉強しながら解体してみたりもしました。解体のやり方も人それぞれです。師匠と私とでも微妙にやり方が違います。私は力があまりないので吊るし台を作り「吊るし」で解体しています。(※解体の種類に関しては第9回『解体について。その種類やリスク管理』参照)。結論、まだまだ未熟ですが、今は2時間あれば解体はしっかり一人できるようになりました! 今では関節も(筋の構造を理解すれば)2分くらいで外せるようになりました。個人的な感想ですが、動画や本などの勉強ツールは、数頭じっくり自分で捌いてから活きてくるのではないでしょうか。目下の課題は《無駄なく、丁寧に、そして早く、しっかり脂肪を残しつつ》できるようになる事……です! はやく私の師匠みたいにできるようになりたいです! しかし、解体の練習をするのにもまずは獲らなければ始まりません。

★解体ポイント★
●獲物が取れたら、じっくり獲物と向き合ってみよう。骨格、筋肉、筋、関節の仕組み、臓器……ひとつ、ひとつ確認しながらやっていくのが一番の近道かも!?
●実践あるのみ! オス、メス、成獣、こども、脂肪がのっているか、のっていないかでも全く変わってくるのでたくさん捕れることを祈ります!
●やり方は人それぞれ千差万別です。正解、不正解は他人が決める事でなく“貴方”のやりやすい形が正解!
■装備・設備について
<1年目はどうだった?>
→ナイフや衣服などの装備品は、とにかく安いものを購入。全くの初めての事だったので1年目はなるべく安く済ませて、実際にそれぞれの道具を使ってみてからしっかりとしたものに買い替えようと思っていました。道具選びは沼です……。人によって道具を「良し」とする基準は違います。自分が使いやすい、「良し」とするものに出会えたら良いですね! 設備については、解体ですが、軽トラの上にブルーシートを引いて獲物を寝かしてやっていました。大物がかかった時は脚を持ち上げるだけでもゼェハァしてましたね……(;・∀・)

【1年目の装備・設備】
♦️ナイフ 1000円~2000円の物をネットで数本購入。
♦️ポーチ 1000円。ネットで購入。
♦️衣服 上下で4000円。ワークマンで購入。
♦️スパイク付き足袋 4000円。ネットで購入。
♦️解体 軽トラの上にブルーシート
<2年目の改善点>
→1年目の経験を活かして道具を買いそろえ始めました! 1年目のナイフは大きすぎたので小ぶりのものをナイフ工房さんに作って頂きました。切れ味は1年目の物と比べ物にならず、作業効率は格段に上がりました。ポーチも腰巻の物を使っていましたが、より丈夫で大容量、防水性の高い肩かけのものへ変更。狩猟用の衣服ですが耐久撥水のジャケットに変更。今年は暖冬だったのでジャケットで十分でしたね……! また解体も吊るし台を作り効率よく解体ができるように動線を工夫しました。

【ヒヤッとしたこと、失敗談、来年に向けての改善点】
今期でヒヤッとしたことですが、山での見回り中にうっかり油断していたら100キロ級のイノシシ+20キロ~30キロのイノシシ数匹の群れと鉢合わせしてしまったことでしょうか……! 運よく向こうが反対方向に逃げてくれたので事なきを得ました。もし、こちらへ向かってきていたら……(ゾッ)これからは普段の何気ない見回り中でも、山は向こうの領域という事を忘れずに、気を引き締めて行動したいと思います。
あとは……捕獲した獲物の運搬ですね。山から獲物を引き出す際に、今期は特にソリを用意しなかったので獲物が取れたら小さめならかかえて運搬するか、木の棒に足を括り付けて山から運びだしていましたが、だいぶ体力が削られてしまった上に、運搬中に木の棒が折れたりもしました(;・∀・)
来年はしっかりソリを用意しようと思います!
【終わりに。トライ&エラー!失敗は成功の近道】
いかがでしたでしょうか。今回は猟期2年目が終了した私の成果や1年目からの改善点などの振り返りをさせて頂きました。次回は猟法について綴らせて頂こうと思います。
安全性には最大限の配慮が必要ですが、どんどん失敗を重ねていきましょう! うまくいかなくたって、間違ったっていいんです。大切な事は、なぜうまくいかなかったのかを考えて、また挑戦する事です。それでも失敗してしまったらまた、考えればいいんです。私はこれからもたくさんの失敗を繰り返していくでしょう。それが自分なりの答えを見つける最短で最善の道だと確信しているから。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。