皆さんこんにちは。
私の拙い文章を通して少しでも“狩猟”に興味のある方、すでに“狩猟”に携わっている方、そして何より“いのち”と向き合っているすべての方のお役に立てれば幸いです。
さて皆さん『単独猟』・『巻き狩り』はご存知でしょうか。狩猟に興味がある皆さんなら一度は聞いたことのあるワードだと思います。そう、狩猟と言ってもそのスタイルは様々です。ひとりで狩猟をするのか、複数名で狩猟を行うのか……もちろんそれぞれメリット・デメリットがあります。今日はこのスタイルについて細かく解説していきますね♪
【巻き狩りについて】
複数人数による共同作業で狩猟を行うのが巻狩りです。
獲物を大勢で取り囲んで徐々に追い詰めて行く様子から、「巻狩り」と呼ばれています。獲物を追い立てるのに狩猟犬を使う事もあります。
単なる狩猟の方法としてだけでなく、神事や軍事訓練としても大昔から行われていた猟法で、日本の歴史とは非常に密接な関係にあります。例えば1192年に鎌倉幕府を開いた源頼朝は、翌年に那須塩原市で『那須巻狩』、富士の裾野で『富士の巻狩り』と呼ばれる非常に大規模な巻狩りを行っており、征夷大将軍としての力を誇示したといいます。
那須塩原市では『那須野巻狩まつり』として伝わっており、巨大な鍋で獲物を調理する巻狩り鍋の振る舞いや、大規模な巻狩りを連想させる巻狩太鼓、巻狩踊り等、様々なイベントが行われています。
また、三重県の四日市市では、神前に奉納される祭礼行事として『富士の巻狩り』を再現した仮装行列が行われています。「銅鑼や太鼓を打ち鳴らし、逃げる猪や鹿などの獲物(ハリボテ)を子どもたちが扮する武者が追い詰め弓で退治する」という一風変わった行事として現代に残っています。
こういった催事やイベントなどを見ていくと、どれだけ“狩猟”が 人々の文化に密着していたかが伺えますね(´▽`*)
●巻き狩りは何人くらいでやるものなのか?
獲物を追い立てる役と、それを待ち受ける役に分かれて行動するので、最低でも数人から十数人程度で行われます。ちなみに、前述の那須巻狩・富士の巻狩りでは、10万人(!)という大人数が参加したと言われていますよ。
●巻き狩りのフォーメーションについて……セコ? マチ? タツマ?
獲物を追い立てて射手のいる方向に追い出す役をセコ(勢子)、追い立てられた獲物を仕留める射手をマチ(待ち子)と呼びます。マチが追い出される獲物を待つ場所をタツマ(立間)といいますが、マチのことをタツマと呼ぶ地域もあります。また、地域によってそれ以外の役を立てる場所もあります。セコとマチの中間で獲物を待ち、仕留めを狙いつつダメならそのまま獲物をタツマへ追い立てる「中撃ち」という役割もあるそうです。 複雑なフォーメーションとそれぞれの役割……巻き狩りを成功させるには抜群の連携プレーが必要という事です(; ・`д・´)
●巻狩り猟の流れは?
まずは獲物がどこにいるのかを調べます。足跡や獣道、糞などから寝屋や通り道を確認し、ミーティングを行います。地図を広げて、セコとマチの割り振りや立間の場所決め、予想される獲物の移動ルートなど、参加者全員が持っている情報を出し合って決めていきます。
全員が配置についたところでいよいよ猟の始まりです。セコが山に入り、獲物を追い立てます。この時、多くの巻狩りグループでは猟犬を使うそうですが、猟犬無しで巻狩りを行うグループもあります。爆竹等の大きな音が出る道具を使うなど、グループによって色々工夫されている様です。セコが獲物を追い出したら、逃げた方角で待つマチへ連絡を入れ、連絡を受けたマチが獲物を仕留めます。

●心得などは?
まず大前提として、銃を持った人間が複数人、それもお互いが確認できない程度の距離で山に入るので、誤射・暴発には十二分に注意しなければなりません。セコ・マチ共にお互いの立ち位置をよく確認し、人のいる方向には銃を向けず、不要な際は必ず銃から弾を抜いて置くようにしましょう。もちろん安全ベスト&帽子の着用も必須です。
獲物はセコに追い立てられて必死に逃げますが、逃げた先にマチがいる事に気づけば当然別の方向に逃げてしまいます。マチの時は予想される獲物の逃走ルートから見つかりにくい場所を探し、自然と一体になって静かに待ちましょう。この時にガチャガチャと音を出していたり、タバコやコーヒーの様な強い臭いがするものを出してしまうと、獲物に気づかれ待ちぼうけになってしまう事があるそうですよ。また、私の住んでいる地域の巻き狩りグループの隊長さん曰く、新人で石鹸や柔軟剤の匂いをぷんぷんさせて参加してしまう人はお話にならないそうです! なるべく前日にシャンプーなどはしないで欲しいと言っていました。
●メリット、デメリット
デメリットを挙げるとすれば、巻狩りはグループ猟になるので「巻狩りグループ」に参加しないと行うことが出来ません。残念ながら狩猟者の減少・高齢化で巻狩りを行う人自体が減ってきています。おそらく新人さんが巻狩りを行う上での一番のハードルが、巻狩りグループに所属する事になるでしょう。
また、巻狩りを行う上で無線機(トランシーバー)は必須になります。しかし、無線機にも種類があり、免許の取得が必要な「アマチュア無線」、無線局の登録が必要な「デジタル簡易無線」、免許も手続きも不要な代わりに出力の小さな「特定小電力無線」と、どれが使われているかはグループによりマチマチです。さらには同じ種類の無線機でも、使える周波数が異なる場合があるので、そのグループで使えるものか良く確認が必要ですね。
逆に、巻狩り猟のデメリットが多人数であることなら、メリットも多人数であることです! 自分が撃ち損じても、獲物の逃げた方角によっては別のマチが仕留めてくれる事もあります。さらには一度の猟で複数の獲物を捕らえることもあります。獲物の引き出しや解体は分担・共同して出来ますし、「マタギ勘定」と言って自分が仕留めなくても獲物は参加者全員で山分けされます(猟犬がいる場合、猟犬も一人分としてカウントする場合もあります)。
また、グループによりますが、銃を持たないセコや引き出し・解体の手伝いなら狩猟免許が無くても参加することが出来るグループもあるそうです。これから狩猟を始めようと思っている方、特に巻狩りに興味がある方でしたら、まずは実際に巻狩り猟の見学をしてみてはいかがでしょうか?(=゚ω゚)ノ
■単独猟・忍び猟について巻狩りなどのグループ猟と違い、一人もしくは数人でする猟もあり、単独猟や忍び猟と呼ばれます。
●犬ありスタイル、犬なしスタイル
単独猟でも巻狩りと同じ様に猟犬を用いる場合があります。ただし巻狩りと違ってマチはいませんので、延々と遠くまで獲物を追い立ててしまっては人間が追いつくことは出来ません。猟犬を獲物の捜索のみに使う方法や、複数の猟犬で獲物を取り囲み動きを止めてその間に仕留める方法等、さまざまなスタイルがあります。また、鳥猟や小型獣の狩猟では、仕留めた獲物を猟犬に回収させる場合もあります。

●獲った獲物はどうするの? その場で捌く? 持って帰る?
鳥獣保護法では、仕留めた獲物を放置することを原則禁止しています。となると大変なのは獲物の引き出しですね……。引き出しは本当に大変で、私の体力不足は否めないのですが、以前100キロほどのイノシシを3人で引き出した時は、自分の手足がもげて、腰が砕けて、内臓が口から出ちゃうかと思いました……。人手があるグループ猟なら協力して引き出せますが、単独猟なら頼れるのは自分だけ。鴨やうさぎならまだしも、80kg~の鹿や猪なんて獲れてしまったら大変です。でも、そこはみなさん工夫されているようで、現場である程度解体して持って帰ったり、滑車やロープを使って引き出したり、なんと車に電動のウインチを取り付けている人までいます。
●単独猟・忍び猟必須アイテム等
持っていきたい物は山程あるけれど、それを担いで山を歩く以上、どうしても取捨選択を迫られるのが単独猟です。現地で解体される方でしたら、解体用のナイフや吊るす用のロープ、フック、持ち帰り用のビニール袋や解体残滓(ざんし)を埋設するためのスコップも必要になります。1日かけて山の奥まで入っていくなら地図やハンディGPSが必要になりますし、緊急時の非常食や救急セットもあると安心出来ます。積雪の多い地域では靴に取り付けるアイゼンやチェーンスパイクなどの雪山用装備も必要になります。自分のスタイルや猟場の特性、そして何より体力と相談してアイテムを選択しましょう。
逆に鳥猟等で「待ち伏せ猟」をする場合は、長時間同じ場所で待つ上に獲物が来なければやることが無いので、カモフラージュ用のテントやタープを貼り、イスやテーブルに携帯型のコンロまで持ち込んで、お茶を飲みつつ優雅に狩猟をされる方もいるようです!
●メリット、デメリット
単独猟で特に気をつけなければいけないのが、遭難や怪我等の「事故のリスク」ですよね……。だってひとりですもんね。緊急時に携帯電話で助けを呼ぼうにも、電波の通じない谷間に滑落するかもしれません。山岳での遭難者は年間3千人ほどおり、その1割以上が死亡・行方不明となっています。ほとんどが比較的救助の準備のある登山やスキー等での遭難ですが、この死亡率です。登山道も無い様な山の奥での遭難なら、その確率は推して知るべし、と言ったところでしょうか。単独猟を行う場合は「ここで怪我をしたらどうなるか」を常に頭の片隅に置いておく必要があるでしょう。
■終わりに。狩猟スタイルは貴方次第。事故やけがに気を付けて素敵な狩猟ライフを
いかがでしたでしょうか。今回は狩猟のスタイル、特に巻き狩りや単独猟について綴らせて頂きました。まだ銃を持っていない私にとって未知の世界であり、憧れの世界です! 次回は、今話題のワークマンのオススメ商品について綴らせて頂こうと思います。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。