大阪のワインショップ「mista」で店長をしている、ソムリエの竹内香奈子と申します。
みなさん、ワイン栓がスクリューキャップのものは安いワインだとまだ思っていませんか?
そんなことないんですよ!
5,000円や10,000円以上するワインだってスクリューキャップのものはありますし、ニュージーランドでは90%以上のワインがスクリューキャップを使っています。
ここ数年、各国でもワインの栓がコルクではなくスクリューキャップにするワイナリーが増えてきました。
それは、スクリューキャップにはさまざまな利点があるからです。
では、どんな利点があるのでしょうか?
そこで今回は、コルクとスクリューキャップのメリットとデメリットをお伝えします。◆コルクとスクリューキャップのイメージ
コルク栓は、抜栓を楽しめるしカッコよく開けられますが、一方で開けるのがめんどうという声も聞きます。
その点、スクリューキャップはソムリエナイフのような道具も要らず、手で簡単に開けることができますよね。
アウトドアやお家飲みにはスクリューキャップの方が便利だといえます。開けてから全部飲みきれなくても、簡単に蓋をすることもできますから。
ただ、レストランではコルク栓のワインがまだまだ人気です。
それは、やはりイメージの問題。スクリューキャップは安物ワインというイメージがあるのでなかなかレストランでは使いにくいのです。
また、コルクを抜いてサービスしたい、抜いてもらいたいという方が多いのも事実です。
さて、あなたならどちらがいいでしょうか?◆コルク栓には3種類ある左から天然コルク、圧縮コルク、合成樹脂コルク。
もともとワインの栓には、伝統的にコルクが使用されてきました。
コルクは、弾力性があり水をほとんど通さず、わずかな通気性があり液体を密封するのに優れています。
では、コルクにはどのような種類があるのでしょうか?
天然コルク
コルクガシの樹皮を円筒状に型抜きしたものです。長期熟成の高級ワインになるとコルクの長さが長くなっています。
天然素材であるため品質のばらつきが多く、ブショネ(不良コルクによるワインの劣化でコルク臭やカビ臭がワインにつくもの)がたまに発生することがあります。
圧縮コルク
コルクの屑を集めて圧縮し、円筒状に固めたものです。
最近はあまり使われていませんが、合成樹脂コルクができる前は低価格帯のワインに使われていました。
合成樹脂コルク
コルクに似せて作られた合成素材。ニューワールドのワインから広まり、コルク栓の代用として使われています。天然コルクは価格が高く、またブショネを防ぐために合成樹脂コルクが使われるようになりましたが、コルクに比べると抜きにくく長期保存にはあまり適していません。
天然コルクは高価なのでワインを造る際にコストがかかりますが、スクリューキャップは低価格でコストが削減できるのです。
ですが、スクリューキャップが使われるのには、経済的な理由だけでなく他にもわけがあります。

まずは、コルクとスクリューキャップの性能について考えてみましょう。昔からずっとコルクがワイン栓として使われてきたのに、なぜスクリューキャップも使われるようになってきたのでしょうか?
その理由としては、天然コルクはその性質によってワインを劣化させてしまう可能性があるということです。
天然コルクはコルクガシの樹皮をくり抜いているので品質にばらつきがあり、穴が開いているのもがあれば虫食いのものも。そうすると液漏れなどによってワインを酸化させてしまうことがあるのです。
また、天然コルクが原因でコルク臭やカビ臭がワインについてしまう可能性があるということ。それは、一般的にワイン全体の5%ぐらいの確率で発生するといわれています。
せっかく造ったワインがダメになってしまうのは造り手にとってリスクがありますし、消費者にとってもせっかく購入したワインが劣化していたら残念ですよね。
この問題を解決するために、コルクに似せて作られた合成樹脂コルクが使われるようになりました。
ですからスクリューキャップは、気密性や安全性としての性能はコルクより優れているのです。◆スクリューキャップは横に寝かせておかなくても大丈夫!
通常、ワインを熟成させるときにはボトルを横に寝かせておいてくださいね、と言われますよね。それには、理由があるのです。
横にすると、ワインの液体がコルクの方に流れて湿った状態になります。そうすることでコルクの乾燥を防いでくれるのです。
一方、ボトルを立てておいておくとコルクが乾いてしまいますよね。コルクが乾燥することによってコルクが縮んでしまいボトルとコルクの間に隙間ができてしまいます。隙間ができるとワインが酸化してしまい劣化してしまいます。
また、コルクが乾いていると抜栓するときにコルクが抜きにくくなったり、割れてボロボロになってしまうことがあるからです。
では、コルクじゃなくてスクリューキャップの場合はどうなのでしょうか?
スクリューは乾燥しないのでわざわざ横にする必要がなく、横にしても立てておいてもどちらでも保管ができます。抜栓は、手で回して簡単に開けることもできますよね。
長期熟成に向いているといわれてきたコルクですが、いまや長期熟成されているスクリューキャップのワインは世界中に存在しています。
30~35年ぐらいの熟成の実験では、全く同じワインをコルクに詰めたものとスクリューキャップに詰めたものと比べ試飲をしたところ、スクリューキャップのワインの品質は保たれていると発表されています。
それならスクリューキャップでの長期熟成も期待できますよね。
やっぱりワインはコルク栓をソムリエナイフで「シュポッ」と開けるのがカッコいいですよね。でも、スクリューキャップでもカッコよく開けることができるんですよ。
開け方
1. 一方の手でキャップのミシン目より下の部分を持ちます。
2. もう一方の手でエチケットが見えるようにボトルの底を持ちます。

3. キャップを持った手を固定し、底を持った手でボトルを時計回りにまわします。

4. カチッと音がしてミシン目が切れたらキャップを回してはずします。

いかがでしたでしょうか。
今回頭に入れていただきたいのは、以下の3つです。
①安物のワインにスクリューキャップが使われているわけではない。
②スクリューキャップはコルクより気密性や安全性としての性能は優れている。
③スクリューキャップでも長期熟成は期待できる。
これで、スーパーやワインショップでワインを購入するときに読めないエチケットとにらめっこせず、簡単に決めることができますね。
ボトルから選ぶのもひとつの方法! 上手く活用してくださいね。
これから、このような具体的なシーンを通して、ワインの楽しみ方、そして何よりワインの美味しさをお伝えしていきたいと思います。
次回をお楽しみに!
*この連載は隔週水曜日更新予定です。