「伊藤」も佐藤同様、姓は藤原。藤原秀郷の子孫、尾藤基景(もとかげ)が平安時代に伊勢守となり伊勢に移ったのが発端だ。
『保元物語』には平清盛に従う軍勢の中に、伊勢国の古市伊藤武者・景綱(かげつな)、同伊藤五忠清(ただきよ)、伊藤六忠直(ただなお)の名が見える。
「伊勢に住み伊藤を名乗った伊藤一族はその後武士となって全国に広がりました。藤原氏の慣習で彼らは移動しても名字を変えず、東海地方や東北などを中心に勢力を伸ばしました。ですが、やはり伊藤の名字は現在も三重県が断トツで1位です」と、姓氏研究家の森岡浩さんは『一個人』4月号の中で話す。
一方、藤原南家為憲(ためのり)の子孫である工藤維職(これもと)は、「伊豆国の工藤」を略して伊藤と称した。維職は伊藤七郷を開発し、荘園に発展させ、祐親(すけちか)の代に河津荘から伊藤荘に移って伊東氏を称した。
また、家紋については、「伊勢に住んだ伊藤の家紋は藤原氏の象徴、下がり藤が多い。一方伊豆で名乗りを上げた伊藤もあり、こちらは庵に木瓜が中心です」と、家紋研究会会長の高澤等さんは解説する。
