この春新入社員になるあなたへ。第一印象を決めるのは、まず「言葉遣い」。
そして、その言葉遣いの基本となるのが「敬語」だ。大ベストセラー「頭がいい人の 敬語の使い方」シリーズの著者・本郷陽二氏のシリーズ最新刊、『一言で印象が変わる さすがと思われる話し方』(ベスト新書)から、押さえておきたい敬語の実例を紹介する。◆「ご持参ください」では敬意を表していません

「講習会当日は、筆記用具をご持参ください」
 カルチャーセンターの掲示版に書き出された案内書。つい見過ごしてしまいそうですが、正確にいうと正しくありません。
「ご持参」の中には、「(参)る」という言葉が含まれ、「持参する」の元の意味は、「持って参る」です。

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イラスト/ホセ・フランキー

「参る」は、ある目的のためにそこへ行くことで、帰参や持参、日参や墓参などの言葉には、謙譲して自分を低めるニュアンスがありますから、本来は自分の行為についてだけ使われるものです。
 そのため、言葉自体に謙譲の意味が含まれている「持参」を、相手に対して使うのはおかしいわけです。ですから、この案内状も、「講習会当日は、筆記用具をお持ちください」「講習会当日は、筆記用具をご用意ください」といったほうがいいでしょう。
 ただし、「持参」に「ご」をつけた「ご持参ください」という語も、最近では丁寧語として定着してきたようで、「履歴書をご持参ください」や「雨具をご持参ください」などという言い方に違和感を覚える人もだんだん減ってきたようです。

 中には、「身分証明用の保険証や運転免許書などをご持参ください」「住民課まで印鑑をご持参ください」などという説明書きを、受付に備えている市役所や役場もあるほどですから、「ご持参ください」という言葉も、今ではもうすっかり市民権を得ているのかもしれません。
 それでも、言葉にうるさい人の中には、「お客に対して、御持参くださいとは失礼な」という声もあります。無駄な反発を避けるためには、「お持ちください」「おっしゃってください」などと言い換えるほうが無難かもしれません。

「申す」が謙遜語であることから「お申し込みください」や「お申しつけください」も謙遜表現と考える場合もあるようですが、「申し付ける」や「申し込む」には、へりくだった意味はなく、改まった気持を表現する丁重語になっていますから、問題ないでしょう。

◆何かを持ってきてほしいときは
△ ご持参ください
〇 お持ちください
〇 ご用意ください
◎    お手数ですが、〇〇は各自お持ちくださいますようお願い申し上げます。

【ポイント】
「ご持参」は、気にする人もいる
 

『一言で印象が変わる さすがと思われる話し方』より構成】

 

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