●有力講師を多数揃える「学研プライムゼミ」が本気

 今年3月から、学研が「学研プライムゼミ」の配信を、個人向けにも開始した。「学研プライムゼミ」とは出版社・学研が行う動画配信の映像授業であり、前年から学習塾などに向けて配信していた。

 この「学研プライムゼミ」の講師の名前を見ると、おやっと思う。化学の鎌田真彰、日本史の野島博之、世界史の斎藤整。いずれも東進ハイスクールで活躍していた講師達で、引き抜きがあったのだろうと普通は見る。しかしさらにさかのぼると、彼らはもともとは駿台予備学校で人気が高かった講師であり、それゆえに多くのコマ数を持ち、ハードに働いていた人たちでもある。

 そんな人たちが、映像授業の東進に引き抜かれ、さらには学研に引き抜かれた。「学研プライムゼミ」は、映像授業時代の予備校の中で、確固たる「講師力」で地位を築こうとしている。

●家庭でも受講できる「スマホ予備校」とは?
東進vsスマホ予備校。新潮流・「映像授業」の勝者は?の画像はこちら >>

 現在、多くの家庭にインターネットの常時接続回線が導入され、かつ多くの高校生が、パソコンやスマートフォン、タブレット端末を使用することができる。そんな時代に家庭でも受講できることを売りにしているのは映像配信の予備校であり、俗に「スマホ予備校」といわれる。

 そんな「スマホ予備校」には、既存の予備校よりむしろ、Z会などの通信添削事業者や、学研などの出版社などが参入し、新しい受験指導のあり方を作り上げている。

 その究極の形が、リクルートが提供する「スタディサプリ」だ。月額980円(税抜)という低価格でありながら、講義見放題、講義の内容も充実というものである。科目別の講座だけではなく、志望校対策講座や、AO・推薦入試対策講座というものがある。

 他の映像配信の予備校に比べて低価格なだけではなく、講義も充実していることがこの「スタディサプリ」の売りである。もちろん、このサービスには受験生のサポートシステムも付属している。

 価格の安さと、配信講義数の多さが、多くの受験生の支持を集めている。この「スタディサプリ」を使って、難関大学に合格する地方の受験生が生まれてくる可能性も高い。こういった「スマホ予備校」は、自己管理ができる生徒たちには適切であろう。

●講師だけが売りではない東進

 一方映像配信の先駆け、東進ハイスクールも在宅受講コースを運営している。だが東進の場合、このコースはメインではない。関東圏を中心とした直営の「東進ハイスクール」と、フランチャイズシステムの「東進衛星予備校」への、現役生の通学生をメインとしているものである。浪人生のコースもあるが、主たるターゲットは現役生だ。

 東進の場合、「今でしょ!」の名ゼリフで知られる国語科の林修など、有名な先生の講義を映像で見ることができるというのが、一般的なイメージだろう。だが東進は、それだけではない。通学して映像を見せることにより集中力を高めさせ、かつ学習履歴や学力を管理する「学力POS」というシステムも用意されている。

 毎年、東進の公式ホームページでは、新しい講師にどんな人が採用されたかを大々的に掲げる。その中には、大手予備校のトップ講師だった人も多い。一時期は、駿台予備学校の講師から転身してくる人も多かった。しかも、東大クラスなどを担当している人も多い。そんな講師を東進はスカウトしてきた。だが、その講師の流出も起こっている。

 講義の映像を配信し、ガチガチに生徒を管理している東進ハイスクールがいままで支持を集めてきた。だが東進の場合、金銭的負担も高い。そんな中、自宅で講義をインターネット配信で見ることのできる予備校が増えており、中には格安のものもある。

 東進は、「スマホ予備校」にその地位を脅かされつつある。見る場所が違うだけであり、スタイルとしてはそれほど変わらない両者は、互いに受験生を奪い合うだろう。もし、「スマホ予備校」が受験生の状況を管理できるシステムを充実させたら、東進の地位は脅かされる。

 現役の受験生は、学校との両立で時間がない。そんな生徒たちの需要を、「スマホ予備校」は満たそうとしている。東進の場合、講義の映像配信というスタイルは同じゆえに、新たな流れと競合していくことになるだろう。

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