辞世の句は、死を悟った者だけが紡ぐことができる至言に満ちている。幕末の英傑たちの最期の言葉を知れば、その存在がより身近に感じられるのではないだろうか。

今回は前回に引き続き雑誌『一個人』2017年12月号の特集「幕末・維新を巡る旅」より、乱世を生きた人物たちが紡いだ珠玉の言葉を5個ピックアップ。それぞれ誰の辞世の句か予想してみてほしい。英傑たちが遺した「辞世の句」クイズ2
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 Q1「快く受けん 電光三尺の剣 只まさに 一死をもって君恩に報いん」

 

ヒント……新選組の局長。愛刀は長曽祢虎徹で、講談や時代劇などでも、「今
宵の虎徹は血に餓えている」の決め台詞が有名だ。

  Q1正解 → 近藤勇
幕末偉人、衝撃の辞世の句「はい、これでおしまい」

 旧幕府軍側についた新選組は戊辰戦争に敗れ、近藤は斬首刑に処せられました。「電光三尺の剣」は斬首用の長刀、「君」は徳川家を指し、死して幕府に忠誠を誓う心情を詠んだ句。漢詩で作られており、句碑が東京・三鷹の龍源寺境内の墓所にあります。

 

Q2「身はたとひ 武蔵の野べに 朽ちぬとも 留め置かまし 大和魂」

 

ヒント……幕末の思想家で、松下村塾を開くなど、後の明治維新で活躍す
る多くの若者に影響を与えた。安政の大獄に連座し処刑される。

 Q2正解 → 吉田松陰
幕末偉人、衝撃の辞世の句「はい、これでおしまい」

 処刑されて死んでも大和魂は滅びないという内容。霊魂になっても外国に負けまい、という攘夷派らしい松陰の気持ちが込められています。この句に接した門人の桂小五郎が松陰の思想を受け継ごうと決意するなど、メッセージ性の強い辞世の句と言えますね。

 Q3「この世をば しばしの夢と 聞きたれど おもへば長き 月日なりけり」

 

ヒント……江戸幕府の15代にして、最後の将軍。当時は激変期だっただけ
に多くが早世する中、77歳と異例の長寿で大正時代まで生きた。

 Q3正解 → 徳川慶喜
幕末偉人、衝撃の辞世の句「はい、これでおしまい」
 

 大政奉還は慶喜の人生にとってクライマックスでしたが、77歳まで生きただけに、その後の人生のほうが長い。いろいろあった人生を振り返るこの句は、趣味に生きた余生を考えると呑気なものだなと感じさせる一方で、1人だけ長く生きてしまった孤独感も窺えます。

 

Q4「はい、これでおしまい」

 

ヒント……「幕府使節とともに、咸臨丸を指揮して日本人として初渡米。幕府側代表として西郷隆盛と交渉し、江戸無血開城を実現した。

 Q4正解 →勝海舟
幕末偉人、衝撃の辞世の句「はい、これでおしまい」

 危篤状態だった勝は臨終の間際、こう言って亡くなったそうです。死ぬことは夢から覚めたときのようなものと語っていた、勝らしい言葉です。日本の近代化に多大なる貢献を果たした人生をあっさり締め括ろうとする姿勢に、江戸っ子らしい潔さと粋を感じます。

 Q5「よそほはん 心も今は 朝かがみ むしふかひなし 誰がためにかは」

 

ヒント……孝明天皇の異母妹。公武合体の名目で、14代将軍・徳川家茂と政略結婚させられる。幕末史における悲劇のヒロイン。

 Q5正解 → 皇女和宮
幕末偉人、衝撃の辞世の句「はい、これでおしまい」
 

 政略結婚だった家茂と和宮ですが、次第に本気で愛し合うようになります。しかし、長州征討のため江戸を発った家茂は大阪で発病し、翌年に死去します。いくら着飾って鏡の前に立っても、愛する人がいなければ無意味という、夫を失った和宮の悲しみを詠んだ句です。

〈雑誌『一個人』12月号より構成〉

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