とかくキャストである女性ばかりが注目されがちな風俗の世界。ピンクといわれるこの業界だが、そこで働く人たちはどのような思いで働いているのか。
その実情に迫った。
32歳元一流企業社員が風俗店を経営する理由の画像はこちら >>
取材を受けてくれた西山さん(仮名)

 ソフト風俗をコンセプトに、オナクラ専門店などを運営する企業でCEOなどを務める西山さん(仮名)にお話しを伺った。

 西山さんはバイタリティがあり、社交的でありながら、稚拙な質問にも丁寧に答えてくれる優しく、そして知性あふれる方だった。大学を卒業した後、優秀な経営者を輩出することで有名な人材系大手企業に入社され、その後起業も経験されたということで、若くして経営経験は非常に豊富である。

 今後、風俗業界のみならず、業界の枠を超えるような活躍も思案されており、業界の先例を作っていく経営者となっていくのではないか。

■「なにものか」を目指した少年期

 西山さんは福島県出身の32歳。のどかな農村地帯で、地元の建築関連企業で役員を務める母親と、祖父と祖母、叔父夫婦と一緒に育った。

 小学生のころから、地元では有名な「神童」だったという。地元の中学校、高校と進み、そこでも生徒会長を務めるなど「スーパー優等生」だった。漫画やアニメのヒーローに憧れ、「なにものか」になることを目指す、そんな少年だったようだ。

 西山さんは、当時を「一人親で育ててくれる母親に心配や迷惑をかけたくなかった」という思いもあったと振り返っている。その言動やまなざしから、幼いころから自分の状況を客観視し、正義感をもって今日まで生きてこられてきたことがうかがえる。

 西山さんはその後、千葉県内の大学に進学。経営工学を専攻し、「経営者」を目指すようになる。ヒーローに憧れ「なにものか」になることを目指していた少年が、大人になり見つけた目標、それが「経営者」だった。

 

 大学時代には学業に加え、個人事業主として企業にデザインを売り込んだり、求人広告の営業のアルバイト、イベントサークルの代表など学外でも積極的に活動していく。そして大学卒業後、優秀な経営者を輩出することで有名な人材系大手企業に新卒として入社する。

■人材系大手企業から起業を経て風俗業界へ

 人材系大手企業に入社した西山さんは、大学生向けインターン情報の編集や営業などに従事。業務を通じて、様々な経営者と出会い、話をする中で「経営者になりたい」という目標がより強いものになった。そして23歳にして、出版業界のプロモーションをSNSで行う企業を興した。

 しかし、部下2名とともに、3年間事業を行うが、東日本大震災を契機に売り上げが低迷。26歳の時に事業をたたむことになる。

 福島県の実家に一度帰省した西山さんだったが、「やはり東京で勝負したい」という思いが強く、住む場所も確保しないまま3万円を握りしめ東京に戻る。

 そして、ちょうどそのタイミングで連絡をくれたのが、事業をしていた時の社長仲間でIT企業を経営するAさんだった。

AさんはIT企業を経営する傍ら、風俗店の経営もしており、西山さんはAさんの勧めでAさんの店で働くことになる。

 その後、自分のキャリアを活かせる環境、活躍できる環境を求め、業界内で2回の転職を経験し、4年前今の会社のオーナーであるBさんと今の会社の起業に関わり現在に至る。

■「どうやったらみんなが幸せな体系がつくれるのか」に向き合う日々

 現在西山さんは、風俗店経営に加え、風俗以外の事業の経営にも乗り出している。23歳で起業し、一度事業をたたんだ若者は、周りに助けられながら力をつけ、経営者として一回りも二回りも大きく成長した。そんな西山さんが最近考えているのは「どうやったらみんな(スタッフや女性キャスト)が幸せな体系がつくれるのか」ということ。

 そして、この問いに対して、西山さんはまだ確たる答えを出せていない。なぜなら、このような体系をつくるということは、制度や仕組みをつくることだけで解決することではないと考えているからだ。週休2日や働き方改革など、より良い制度や仕組みを作ることには既に取り組んでいる。しかし、「みんなの幸せ」を考えることは、一人一人と向き合っていくことであり、決して「きれいごと」では解決しないと考えているという。「(矛盾するようだけど、みんなにとって)ベストな答えというのはないと思う。日々の業務に向き合う中で、より良くしていくことを心がけ、答えを探す毎日」を過ごしている。

 西山さんが最後におっしゃった「風俗店が社会にとって、どのような存在であるべきなのか。

このこともベストな答えはないと考えていいます。だからこそ、どのような存在が良いのか、日々考え、向き合っています」という言葉が印象に残っている。

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